12話「奇物屋」
「着きました。ここが、榊原奇物店です!」
そう言われた店を見てみると、たしかに「榊原奇物店」という立て看板が店先に出ていた。だが、その立て看板があるおかげでやっと店だと認識出来るような、見窄らしい外観だった。
「ここ本当にお店なの?」
と聞かずにはいられなかった。
「はい!外見はあれですが、中はきちんと整ってますよ?」
「そうなの?」
と、まだ疑いの目で店を見ている哲也を横目に毬は扉を開け、「こんにちわ~」と店の中に入っていく。
哲也も、一瞬躊躇したが、後に続いて店の中に入った。
中に入ってみると、外観とは反対に、立派な作りになっていた。所狭しと棚が並んでいて、その中には陶器や、なんだかよくわからない金物、人形…のような何か、何に使うのかわからないが歯車の着いた機械が置かれていた。他にも、もっと色々なものがあったが、なんとも名状しがたい物ばかりだった。ただこれだけは言える、『怪しい』。
棚の奥は、カウンターになっていて、女の子が一人座っていた。年齢は、哲也や毬と同じ位だろうか、いかにもやる気がなさそうに頬杖をついて呆けていたが、二人に気付くと、ハッと姿勢を直した。
「いらっしゃい!」
「あれ?唯ちゃん?今日店番なの?」
「なんだ毬か、久しぶりだな、今日はどうしたんだ?」
「今日は、お客さんを連れてきたんだけど…」
と、哲也の方を振り返る。哲也はペコリと頭を下げた。
「紹介しますね。この子が、この榊原奇物店の看板娘の 『榊原 唯』ちゃんです。私とは幼馴染なんです。一見やる気はなさそうですが、意外としっかりした子なんですよ。」
「おい毬!最後のは余計だよ!意外とってなんだよ、普通にしっかりてるだろ!」
「やる気がなさそうなのは否定しないのかよ!」
哲也がツッコミを入れると、二人は「プッ!」と吹き出して、笑いあった。哲也もつられて一緒に笑う。
「で、そっちの人は誰なの?」
一頻り笑った後、唯がたずねた。
「この人は志田哲也さんと言って、私の命の恩人なの。昨日、変な二人組に襲われそうになっているところを助けてくれたんだ。」
「へぇ」
まるで品定めをするように、じっくりと哲也を見る。そして、判定が出たのか、唯はニカッと笑って
「よろしくな哲也!そして、毬を助けてくれてありがとう。私からも礼を言っておくよ」
と、頭を下げた。この言葉が、心から出ている言葉だということを哲也は感じた。
「良い友達を持っているんだな」
「全くです。私には勿体無いくらいの娘です」
「やめろよ恥ずかしい…」
「そんなに顔を赤くするほど恥ずかしいことじゃないだろ」
「うるせぇ!」
そうして、再び三人で笑いあった。




