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異世界で柔の道を行く  作者: パド
1章 
12/16

12話「奇物屋」

「着きました。ここが、榊原奇物店です!」


 そう言われた店を見てみると、たしかに「榊原奇物店」という立て看板が店先に出ていた。だが、その立て看板があるおかげでやっと店だと認識出来るような、見窄らしい外観だった。


「ここ本当にお店なの?」


と聞かずにはいられなかった。


「はい!外見はあれですが、中はきちんと整ってますよ?」


「そうなの?」


と、まだ疑いの目で店を見ている哲也を横目に毬は扉を開け、「こんにちわ~」と店の中に入っていく。

 哲也も、一瞬躊躇したが、後に続いて店の中に入った。

 

 中に入ってみると、外観とは反対に、立派な作りになっていた。所狭しと棚が並んでいて、その中には陶器や、なんだかよくわからない金物、人形…のような何か、何に使うのかわからないが歯車の着いた機械が置かれていた。他にも、もっと色々なものがあったが、なんとも名状しがたい物ばかりだった。ただこれだけは言える、『怪しい』。

 棚の奥は、カウンターになっていて、女の子が一人座っていた。年齢は、哲也や毬と同じ位だろうか、いかにもやる気がなさそうに頬杖をついて呆けていたが、二人に気付くと、ハッと姿勢を直した。


「いらっしゃい!」


「あれ?唯ちゃん?今日店番なの?」


「なんだ毬か、久しぶりだな、今日はどうしたんだ?」


「今日は、お客さんを連れてきたんだけど…」


と、哲也の方を振り返る。哲也はペコリと頭を下げた。


「紹介しますね。この子が、この榊原奇物店の看板娘の 『榊原さかきばら ゆい』ちゃんです。私とは幼馴染なんです。一見やる気はなさそうですが、意外としっかりした子なんですよ。」


「おい毬!最後のは余計だよ!意外とってなんだよ、普通にしっかりてるだろ!」


「やる気がなさそうなのは否定しないのかよ!」


 哲也がツッコミを入れると、二人は「プッ!」と吹き出して、笑いあった。哲也もつられて一緒に笑う。


「で、そっちの人は誰なの?」


 一頻り笑った後、唯がたずねた。


「この人は志田哲也さんと言って、私の命の恩人なの。昨日、変な二人組に襲われそうになっているところを助けてくれたんだ。」


「へぇ」


まるで品定めをするように、じっくりと哲也を見る。そして、判定が出たのか、唯はニカッと笑って


「よろしくな哲也!そして、毬を助けてくれてありがとう。私からも礼を言っておくよ」


と、頭を下げた。この言葉が、心から出ている言葉だということを哲也は感じた。


「良い友達を持っているんだな」


「全くです。私には勿体無いくらいの娘です」


「やめろよ恥ずかしい…」


「そんなに顔を赤くするほど恥ずかしいことじゃないだろ」


「うるせぇ!」


 そうして、再び三人で笑いあった。


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