10話「一円玉の価値」
例えば、自分にはそれほど価値が無いと思っているのもでも、別の人から見ると、全く違う評価にになることがある。
自分にとっては1000分の1という、あってもなくても差異がないないような価値のものでも、違う視点、否、文字通り違う世界の人から見るとその価値は計り知れないものとなる。
というようなことを、目の前にいる女の子を見ながら、哲也は思っていた。
彼女― 毬は、一円玉を手にとって、穴が空くのではないかと思うくらい、凝視していた。
「あの…毬ちゃ――」
「な、なんですかこれ!!!」
そう言って振り向いたその目は、まるで宝石でも見つけたかのように、キラキラと輝いていた。
「何って… 一円玉だけど…?」
「一円玉というのですか!?私にはこれにどれほどの価値があるのかは分からないですが、この綺麗な丸の形、繊細な文字や模様、こんなに小さい中にこれほどの技術が詰められているのですから、とてもすごい価値があるのですよね!?」
「え… 一円玉って、一番安いやつ何だけど……」
「一番安い!?これがですか!?これよりも高いものがあるのですか?」
「あ、ああ」
といって哲也は財布の中から、使ってしまった消耗品を買おうと思って入れておいた一万円札を出した。
「一応これが一番高いやつだよ」
すると、毬の目から、輝きが消え去って行くのがわかった。
「紙、ですか?これがそんなに高いのですか?確かに、綺麗に絵がかかれてますけど…
これよりも、さっきの一円玉のほうが、良い物だと思うのですが?これに、どのくらいの
価値があるのですか?」
「一円玉が一万個分の価値だけど…」
「一万個分!?こんなのにそんなに価値があるのですか!?ちょっと信じられないです…
他にはないんですか?」
―――
そうして、財布の中に入っっていた全種類の小銭やお札を見せる。
五千円札は持っていなかったが、お札への興味はあまりなさそうだったので、問題なかった。
一番、興味を示していたのは、以外にも五十円玉だった。理由は、小さい硬貨なのに真ん中に綺麗な穴が空いているのと、比較的最近作られたものが多かったので、綺麗に磨かれて、輝いていたからだそうだ。
しかしそれでも、毬はすべての硬貨に対して物凄いリアクションを取るので、哲也も硬貨を出すたびにどんな反応をするのか楽しんでいたのだった。
全て見せ終わり一息ついたところで、毬がある提案をしてきた。
「そうだ!このお金を売れば結構いい値段になるんじゃないですか?」
「これを売るの?でも、こっちの価値だとどのくらいか分からないしなぁ」
「私、こういう怪しげなものを買い取ってくれるお店を知っているんです。お父様がそういう物を集買ったり売ったりしていたので。一応信頼できる店なので安心してください!」
「怪しげなものって……
分かった、じゃあその店に行ってみるか!」
「はい!じゃあ、急いで片付けしますね!」
といって、毬は空の食器を持って台所の方へ小走りで駆けて行った。
しばらくの間、慌ただしい音ががして、まだ小走りで戻ってきた。
「では行きましょうか!案内します!」
そうして、哲也たちは屋敷を出て、大通りの方へ向かった。




