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「すると、君たちはその、超能力を目覚めさせるだとかいうバカげた人体実験を、いままでずっとされてきたのかい?」


 白い部屋だ、窓はないし扉もない。あるのは無機質な鉄格子と、今俺たちが座っている椅子とテーブルだけだ。取調室のようなものだろうか、それにしてはあまり穏やかな部屋じゃない。俺のほかに3人、つまり俺を含めた4人は、一列に座って反対側に腰を下ろす黒服の男に目を向けていた。


「・・・」


「おいおいひどいなぁ、せっかく人が優しく聞いてるんだから、なんとかいったらどうなんだい?それで君たちは使えるの?超能力」


 国家機密機関員と名乗った胡散臭すぎるこの男は田川というらしい。それすらも本名なのか疑わしいが、どうやらこちらの事情を知ってはいるようだ。


「僕たちを、どうするつもりなんですか」


 真っ先に沈黙を破ったのは、俺たちの中でも一番のしっかり者であるトモキだった。


「どうするつもりだ、なんて人聞きが悪い。君たちは被害者だ、勿論これからは自由の身だし、身元保証人についても全力で捜査しているとも」


「ほ、ほんとうですか!」


 全員の顔から緊張が消えて安堵が浮かぶ。が、


「ただし、もし実験とやらが成功し本当に超能力を手に入れたものがいたとしたら、話は大きく変わるがね」


 それを聞いた瞬間みんなの表情が凍り付き、俺に視線が集まる。


「君、名前はなんていうのかな?」


「ユウガだ。・・・先に言っておくが俺が唯一の成功例だ。だからみんなには」


「勿論わかっているとも、他の者たちの生活は保障しよう。ただ君の身柄はこちらで預からせてもらうよ」


「わかった、それでいい」


 目的は達成したとばかりに席を立つ田川にトモキが叫ぶ。


「待ってくれ!ユウガはどうなるんだ!」


 拳を握り締め、かつての仲間を心配する友に精いっぱいの強がりを見せて笑った。


「安心しろって、なんもされやしねぇよ。きっと俺の力が心配なだけだって、すぐに解放されてお前らに会いに行くから、しっかり幸せになってろよな!」


 鉄格子を開けながら田川も心配させまいと声をかける。


「こちらからもユウガくんには絶対に危害を加えないことを約束しよう。ただこちらとしても異例の事件だからね、詳しく調べたいんだ」


 当人であるユウガの言葉に少し安心したのか、トモキは頷きまっすぐに田川を見据えると


「ユウガのこと、よろしくお願いします。乱暴だけど、僕たちの大切な家族なんです」


 そう言ったのだった。










 田川に連れられタクシーに乗った俺は行き先も知らないままいろいろなことを聞かれた。施設での生活や管理者たちにされたおぞましい人体実験の数々。そこからの脱出劇や仲間のこと。田川は黙って俺の話を聞いていたが、途中何度か痛々しい表情になった。胡散臭い人間ではあるが人並みの良心はあるようだ。しかし何よりも彼が熱心に聞いてきたのは俺が手に入れた超常的な力についてだった。


「だから、なんつーのかな。俺もよくはわからないんだけど、多分サイコキネシス?ってやつだよ」


「それは所謂PKというやつかい!?おったまげたなぁ、君は意思の力だけで物体を動かせたりするわけだ!すごいじゃないか!」


「あんまし実感はないんだけどな、めっちゃ疲れるしさ」


「いやいやすごいことだよ!いいなぁ超能力!」


 超能力をうらやましがるのは俺に対してかなり不謹慎だと思うが本人はそれに気付かないほど興奮しているようだった。やっぱり胡散臭いかもしれない。




 そんなこんなで1時間ほど話を続けた俺たちはタクシーが停止したことで会話を切り上げ、車外へと体を滑らせた。

 暗い、地下だろうか?大きな洞窟のような開けた空間に足をつける。周りは薄暗い暗闇に満ちており生き物の気配はしない。ここになにがあるというのだろう、田川の姿を探すがまだ暗闇に目が慣れていないからかどこにいるのかわからない。呼ぼうとした矢先に、


「ユウガくん、こっちだ」


 と、田川の声に振り返るが何も見えない。


 じっと目を凝らして暗闇を見つめているとやっと目が慣れてきたのかここ数時間ですっかり見慣れた田川の顔が見えた。それからその奥のものも。


「なんじゃこりゃ・・・」


「ようこそ、国家機密秘組織ターミナル・ケアへ」


 田川が指をさす暗闇の彼方に、巨大な病院がそびえたっていた。

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