手切れ金
掲載日:2017/01/31
「これで、勘弁してもらえないか……?」
私の前におかれたのは、三宝におかれた封筒だった。
「なんのつもり」
目の前には婚約者。
いや、元婚約者だ。
「これで、別れてくれないか」
目的ははっきりしている。
要は手切れ金てことだろう。
封筒からのぞいている色からして、おそらく万札だ。
その上で何十万、もしかしたら百万円以上ある。
それほど分厚くなっている札束封筒だった。
「なんで」
「どうしても、だ」
彼は理由を話そうとはしない。
ただ、金を置いて土下座をして謝り倒しているだけだ。
「……分かった」
とにかく分かった、別れたいということははっきりと分かった。
「そうか、分かってくれるか」
「ええ、はっきりとね」
札束を私は彼に投げつける。
「いらねぇよ、金なんて。私はあんたと付き合った。この数年間を決して忘れないさ」
言い捨てて、私は後悔しながら走って部屋から出ていく。
せいせいした、そんな気持ちよりも、さっきの金が惜しかった。
そんな気持ちの方が先に出てきていた。
どうやら私も彼にうんざりしていたということだろう。
それからしばらくして、彼が死んだという新聞記事を見た。
なんでも元カノに刺されたらしい。
ザマァみさらせと思いつつ、私はその新聞を古新聞として紐で縛った。




