お店の開店!
店舗の開店日は近い、建物が完成した事で調理台や、陳列棚などが、行商会から次々届く。
ガウが率先して指示を出している。
「ちゃんと設置図を見て配置してください!っあ調理台はそこじゃなくて、厨房のそこです!」
ガウは店の効率の良い調理器具の配置や陳列棚の配置を間取り図に書いて、的確に設置していく。
俺はそのあいだに行商会に金貨を渡したり、王国に店を出す日程などを決め税金を払う準備や、俺の家になる予定でもあるので、2階に持っていく家具や、必要なもののリストを絞って買い物。
テトラとアステアは食器と必要な小道具を買いに行く。
リリアとロウウェンは小売で使う、みかん洗剤の生産と、醤油と味噌の売り出し準備。
俺は自宅に置くテーブルや棚などを買い揃えて自分で2階に運ぶ、その間にもガウは一人で店の開店準備を着々と進める、やはり事前研修で即戦力となった。
俺は2階の自室をある程度住めるよう家具を、揃え終わったらリリア達の作業場をのぞき込むと、みかん洗剤と、みかん洗剤プラス、石鹸の泡立ちもプラスした、泡立つ洗剤、お値段も少々高めだが、その分効果も充分高い、それとロウウェンは味噌や醤油を瓶詰めして、ラベルを貼って売り出し準備をする。
俺は2人が集中して作業している所を見届けると、ガウの手伝いに入った、ガウはあらかた行商会からの物品の引き取りを終了していて、大きな設置物は全て置き終わっていた。
「やるなガウ、来月の給料にはボーナスつけないとな」
ガウは驚いて「マジっすか!?やった!それじゃ、俺は何すればいいですか?社長」
俺は首を振り笑ってガウの肩に手を置き
「今日はもう休め、体をみろ、もうフラフラだぞ。大丈夫そんなに焦らなくとも、お前は今日は充分過ぎる仕事をしたよ、後は俺に任せとけ」
ガウは頷いて「それじゃお言葉に甘えて俺は上がりますね!お疲れ様です!」
俺も手を振り送り出して「ああ、お疲れ様〜」
ガウが運び込んでくれた、調理器具を使い使えるか再確認して、棚の配置や、陳列棚の配置に狂いがないかしっかりと調べる。
念には念を入れるのが俺の主義だからな、実際昼飯は皆の分を料理する事で、作れるか味に支障は無いか
確認用の天ぷらと、うどんと、味噌汁と、醤油の焼肉定食を用意した。
「リリナ〜!ロウウェン飯だぞ!」
俺が呼ぶと2人は降りてきて
「っえ!?タクト私達のためにご飯作ってたの!?」
「ありがとうございます師匠!!」
俺は苦笑いして「勘違いするな、お前達は実験台だよ、この店の調理器具で味に支障がでないかとね」
リリナはエェーという顔して「実験台ですか〜……」
俺はリリナを見て「文句言うなタダなんだから」
リリナは天ぷらを食べると「あれっ、美味しい!!」
ちゃんと釜で揚げたからな、研修の時は家庭用鍋しか使えなかったが、今度は大釜が使えるから大量の油が使える、その文全体が揚げやすくなっている」
ロウウェンもうどんを美味そうにすすっている
この様子なら、作っても問題ないな。
テトラとアステアが戻り棚に食器をどかどか入れていく、カウンタテーブルには、和食ならではの箸や、使えない人のためのフォークやスプーンもある、いちを従業員全員が箸をマスターしていて、箸の方が使いやすいと、笑って言えるぐらいになっていた。
そして、ガウを呼び出して開店前日祝杯を挙げる
「えっと、この度は開店までこぎつけた事に感謝の意を込めて!乾杯!」
「「「「乾杯〜!!」」」
売り出す予定のみかんジュースにみかんジャムとパンや、天ぷらに、まだ材料不足でメニューに載せられなかったすき焼きで乾杯する。
金銭もあまり余裕があるわけではないので、高級な肉ではないが庶民にとって肉はプチ贅沢
リリアが肉を取り卵に浸けて食べる
「うぅん、やっぱりタクトの作るご飯はどれも美味しい……」
ロウウェンもすき焼きの野菜に手を出して白菜に似た野菜を食べる「うわっ!白菜なのにこんなに味が染み込んでる!!美味い!料理も武術もやっぱりししょうはすごいなぁ……」
ガウはなんか申し訳なさそうに「なんか俺だけ半日上がりなのに、こんなパーティーにまで誘っていただいてすみません」
俺が肩を叩いて「気にするなって、明日から激務になるんだから、今日ぐらい騒いで飲んで、楽しもう!」
ガウは嬉しそうに頷いて、すき焼きにありつく。
テトラもしんみりしてオレンジジュースを飲みながら「なんか、タクトさんに会ってから私の生活がガラリと変わったなぁ、私なんか、奴隷だったのに、お母さんとも再開できて、家族の稼ぎ頭がしらが今は私なんだもの、家族皆がタクトさんのお給料で幸せになっていって、私もどんどん強くなっていって……なんかタクトさんからは、人としての大事な何かをもらった気がします!」
そこまで言われると俺も照れるな。
アステアも半分愚痴に近い言い方だったが「私も頑張って経理を覚えたのに、経理なんか経営者のたしなみだ!とか言って、金銭独り占めするし、皆経営者ってこんな糞溜めなの?とか思ってたけど、タクトと会った事で私の苦手な体力面の気遣いもしてくれて、本当に感謝してるわ」
俺もペコペコ頭をを恥ずかしそうに下げているとガウも乗って「俺も、なんか今までやりがい的な物がなかったんですよ。どこに行ってもそつなくこなせるけど、楽しくないんですよ。なんか、こうインパクトが無くてさ、でもタクトさんに雇ってもらって「ここなら全力を出せるっ!」って張り切れるようになって、なんか仕事したっ!って気分にさせてくれるんですよね」
リリナもすき焼きの食べる手が止まり「私も……タクトさんにあの監獄から助け出してもらって、犯罪者の私でも、タクトさん通してからは、皆が笑顔で居られるようになって……今の生活なんて夢のまた夢の話をだったからね……改めて本当に感謝してます、タクトさん!」
俺もそんなにやりがいをもっていてくれるなんてな、感動して泣き出しそうになると、
ロウウェンが「俺は!--」
従業員一斉に「「「お前は何も言わなくてもわかります!!」」」
ロウウェンがビクッと涙目になり「そんなぁ……」
涙ぐすんで、皆が笑う
俺も一瞬迷ってしまった、なぜ俺がドラゴンになるのか。カッコイイからなんて、そんな安っぽい理由じゃない、本当は逃げ出したかったのかもしれん人生から。失敗すれば何もかも失う、崖っぷちの人生から姿を変え、ドラゴンになることで人生から逃げようとしたんだ、でも……
俺は皆が楽しそうにすき焼きや、天ぷらをほおばる姿を見て「これが人生なら悪くねぇかもな、少し、目的を忘れて、人生を楽しんでみるとするか」そう心の中でつぶやいて、すき焼きを食べようとすると
「っあ!?肉がねぇ!?」
皆が「ごめーん食べちゃった!」
リリナが「自分で作って食べられるでしょ?」
酷いっ!皆で食う飯はまた違った味があるというのに!!
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そして開店当日、当初、どれだけ売れるか分からなかったので、営業時間は商品完売で閉じる予定だった
まだ7時で営業開始まで3時間もあるというのに、もう人が待っている。
そんなに期待されていてもな。
俺はそう思いつつ。皆に「さぁ、この日をどれだけ待ったか、皆!頑張るぞ!」
社員一同頷いて、料理で使う食材の搬入と、陳列棚の最終チェックを終え
開店10時を迎える
客がどんどん押し寄せてきて料理の座席は開店同時に満席、俺が出す和食に興味があるようだ。
まず皆が目にしたのは、天ぷらだ。
「すみません!天ぷらの盛り合わせを1つ」
俺もこの日のために、作業速度を、向上させまくっておいたため、5分で5食分作れる。
横でリリアが衣をつけた野菜や肉を渡し、俺が揚げる
俺が客へと差し出すと、俺は「そこの天ぷら用って書いてある、調味料を使って食べてくれ!」
客は天ぷらに麺つゆをかけて食べると
「っななんだこれ!?味わったことの無い、風味にサクサクフワフワのこの肉!!美味すぎる!!」
客が驚いていると天ぷらが飛ぶように売れていく。
だが天ぷら以外にもうどんにも興味を持った人がいて
「このうどん、という物を1つ」
俺が返事をしてうどんを煮て水で冷やし、
「はいどうぞ!そこの横にある器に入った汁につけて食べてくださいね」
客は恐る恐る口にすると「こ、これは!!パスタとは違い喉越しが良くつるんと食べれる!それにもちもちのこの食感に加え、この汁がまた味を引き立てる!美味すぎる!」
やっぱり日本食は外国人にも受けがいいからな、異国の地で開けばこんなもんよ
小売の方も、醤油と味噌を味見して即買いする人達で溢れている。
オレンジ洗剤の売れ行きも上々、いい感じのスタートだ。
2時間が経つと、ようやく、客の勢いが減ってくるが、まだ順番待ちの列が8組ぐらい居る
アステアが大声で俺に知らせる「オレンジ洗剤とプラス共に完売でーす!!」
お1人様1個と制限をかけていたにも関わらず完売してしまった。
だがアステアは長い研修期間で客を逃がさなかった、残念そうに背を向けるおばさんにアステアが
「はい、これどうぞ!」
整理券だ、買えなかった分、翌日来てくれれば、順番待ちをしなくても買えると言う、順番待ちで買えなかった人達を満足させるシステムだ。
「っえ?明日にこれ持ってくれば、買わせてくれるの!?順番を待たずに?まぁ!!並んだかいがあったわぁ!!」
うむうむ、いい感じだ、俺は醤油も味噌も完売した時点で、小売は欲しいものの整理券を配り、クローズに。後はアステアに今日の成果を計算してもらう時間だ
料理の方は、かなり多く余裕を見ていたが、結局、うどんも天ぷらもピークの夜までに完売してしまった。
俺は20時には閉店して、成果を再確認する
アステアが既にペンを回してノートを差し出してきた
金額は、3500枚金貨、1日の売上は平均多くて1000枚金貨程度、素晴らしい売上だった、不足していた、商品や食材もアステアはしっかりリストアップしていて、次の明後日の発注分は確実に営業開始から終了までカバーできる数が割り出されていた。
「アステア、よくやった、時給アップだな。テトラも、ガウもよくやってくれた、今日は皆揃って時給を上げても問題なさそうだ!」
雇用料やその他もろもろ、費用を合わせても儲けは1000枚金貨近く、上々の滑り出しだ。
社員達は一同喜び、お互いを評価し合う
そしてロウウェンが「それじゃ、俺には!!」
俺は手をふり呆れた声で「はいはい、教えますよ。それじゃ、今夜、お前と始めてバトッたあの場所へ来い」
ロウウェンはガッツポーズして喜んでいる
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予定とおりにロウウェンがやってきた、今回教えるのは、受け流しだ
俺が身構えて「ロウウェン全力で俺を殴ってみろ、その都度止めて解説してやる」
ロウウェンが全力で振りかぶって殴り掛かる、だが俺は腕をつかみ、殴ろうとした方向に投げ飛ばす
「なんでスルリと抜けるように投げられるのか疑問に思っていたな、力の流れを利用したんだ、お前は進行方向は定まっていた、だからそれを変えず、俺はお前の足をすくい上げれば、勢いがついたまま正面に投げ飛ばされる、自分が殴ろうとした勢いの分だけ、自分にダメージが入る。俺が試しに殴るから意識してやってみろ、体術の基本は既に体得したお前なら理解さえすればすぐに使えるはず」
俺が殴り掛かると、スルリと抜けて、投げ飛ばしてくる。やはり頭も戦闘になると体得もずば抜けてキレている。
だが投げられた瞬間、俺は地面を両足でダンッ!と地面を蹴り反動で、ロウウェンの首を足で捉えて
「まぁこのままゴキッと行けちゃうわけだ」
投げた後の技を見せてやると
ロウウェンはすぐに理解した「力の流れを、地面を蹴る事で逃がして、相手の首に回り込むカウンターですね!!」
こいつ本当戦闘になると頭が馬鹿みたいに回るな、このままだと俺も、修行していかないとロウウェンにあっという間に技を吸収され尽くされちまいそうだ。
俺の修行はここまで、ロウウェンも満足したいたようだ、あいつは元々一撃離脱を中心に研ぎ澄まされた感覚を持っている、だから失敗した時の攻撃は読みやすい動きをしていた、だから今後はそれも注意していくつもりだが……まだまだお店で頑張ってもらわないとな
氏名:テトラ
性別:女
種族:人間
年齢:15歳
詳細:宿屋の詐欺ババアにまんまとひっかかり、消息不明となっていたテトラ、タクトが経営主を逮捕した事で無理やり書かせた契約書が無効となり、自由の身になるが、15歳は成人して働き始める頃、そんなこんなで悩んでいると助けたタクトと再開、タクトが構える店「フジヤマ」で頑張り稼いでいこうと張り切る、家庭内では稼ぎ頭らしく家族からも褒められていて最近は雰囲気が明るい