王から贈り物とドラゴンになるための一歩
俺は仕立て屋を出てしばらく歩くと空が夕焼けに染まってきた。
そろそろ宿屋とか取らねぇとなぁ・・・
そう思いまた案内地図を見て宿屋を選ぶ。
宿屋は現実世界で言う団地に近い建物だ、いくつもの3回建ての飾り気の無い建物が3棟並んでる。
入口にはオバチャンが団扇うちわをパタパタして、椅子に座っている。
「すみません!1泊いくらですか?」
ばあちゃんはニンマリと笑い「銀貨90枚だよ」
まぁそんな相場だろうな、ここは比較的安い
ここに決めた!
俺は銀貨90枚払い、部屋へと入ると、想像してたが、やっぱり綺麗とは言えない、安い民宿みたいな感じだ。 「まぁ寝られるベットさえありゃ文句無しだ!」
そう言ってベットに飛び込み、天井を見て、拳を突き上げ「見てろよ異世界。現実世界ではできなかったドラゴンになる夢ぜってぇー叶えてやる」
そう呟くと俺は深い眠についた
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翌朝目が覚め背伸びして気持ちの良い朝を迎える。いつもならクソッタレな目覚まし時計が、仕事の時間だと告げるように鳴る嫌な宣告が無い、自分の好きな時間に起きられる、これがどれほどの幸せか。
俺は支度して廊下を歩いて市場へ向かおうとすると、長くて綺麗な赤い髪の若い女性が申し訳なさそうな顔で俺を見ている。
俺が笑顔で「いい部屋だったよ!清掃ご苦労さま!」と声をかけると女性はアウアウと何か言おうとしたが黙り込んでしまった。
俺は不自然に思いつつも、宿屋を後にして出ようとすると昨日のばあさんが
「ちょっと待ちな!」
俺が止まるとばあさんは
「延滞金が発生してるよ!」
延滞金の説明なんて無かった、ばあさんの顔つきからしてこれは詐欺系の手口だな。
俺は大きく胸を張る態度で「それで、何がご所望だい?」
ばあさんは俺の余裕の態度に少し戸惑いつつも、こう告げる「金貨50枚払うか、払えなければタダ働きの従業員になるんだねぇ」
俺は大笑いして「それじゃこうする」
俺は堂々と、ばあさんの前を横切り去ろうとする
ばあさんの口は震えていて「あ、あんた!逃げようって気かい!?」
俺は首を振りあざ笑うように「逃げるんじゃない、行くんだよ。俺は何も問題を起こしてないからな」
ばあさんは拳を震わせて「この野郎!捕まえてやる!」
俺はその言葉を待ってたと言わんばかりに手を差し出して「すれば〜?したらあんたが有罪になるけど」俺が笑顔で返すと、ばあさんは大焦りして「あんた達!やっちまいな!ごネル客だよ!」
後ろの影から、黒い服を着た、怪しい人が飛びついてくる。俺はその手をひらりとステップで回避して
「攻撃したね?じゃあお構いなく」
俺は黒服を着た男がナイフで突いてくるのを予想して、突いたところを脇で挟み込み、固定したままグルリと回転して男の腕をへし折る
「ぐわぁぁぁ腕!俺の腕がぁぁ!」
情けない声を上げて折れて腕が本来曲がらない反対側へとプランプランしている、俺はナイフを拾い、もう一人の男が剣を取り出して切りかかって来たので、そいつへナイフを投げつける。
男は笑ってナイフを剣で弾いて「っへそんな物に当たるか……?どこに行った!?」
「後ろだよ、お馬鹿さん」
男の腕はしっかりと俺に抑えられ、鋭いバタフライナイフが男の首をしっかりと捉えている。
男は剣を落として降伏する
俺は溜息を吐いてばあさんを睨み「さぁ衛兵達の出番だ」
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衛兵達にそいつらは連行され、俺は取り調べを受けると、どうやらあいつらは、大悪党として有名な組織だった、衛兵達がこんな事を言う「王から直々に褒美があると思われます」
俺の面倒なことに巻き込まれたなぁという表情は一気に明るくなり「本当か!?」
衛兵達は頷いて笑い「それにしても黒服団の奴らを1人で2人倒すとは大した奴だな、捕らえられていた従業員達が相当褒め称えていたぞ」
あいつら黒服団とか言うのか、団体となると、今後報復とか狙わて厄介だなぁ。一層この警備隊に入って金稼ぎしてから出ようかなぁ……
そんな事を考えていると後ろで
「あぁ……ロザリア……無事で無事で良かった……」
「ただいまお母さん……」
さっきの赤髪の子だ
衛兵達はその様子を見て「お前がした事の功績は大きい、誇ってもいいんだぞ」
確かにそうだけど。日本人にはそうやって誇ったりすんのは遠慮するもんだ
「そんな人助けするつもりじゃありませんでしたから、ただ理不尽な話で突っかかってきたから倒した、それだけです」
そう答えると衛兵達はこいつめと、笑って小突いてきて、俺も照れ笑いする
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そして、名も知らないこの国の城に案内され、謁見の間らしき所で、ファンタジーの定番、カリスマ力のある黒いヒゲのキリッとした王様が俺に
「褒美は何が欲しい?」
俺の答えはこうだ「自分のお店を開くお金が欲しい」
何をするにも金がかかる、ドラゴンになるための野望に資金を貯めるには経営が1番だ。
王は納得して「よかろう、城下町で1番良い立地の提供と、10万ゴールド報酬として出そう、あの黒服団の連中を死なさせず、捕縛した報奨金も上乗せした額ではあるが、不満はあるか?」
俺は首を振り「いえ!私には充分すぎる報酬でございます!」
できれば国王にドラゴンになる方法を聞きたい所だが、ドラゴンがこの世界でどうゆう立ち位置なのか分からない今は、この質問は危険だ。欲望をグッとこらえながら、俺はその身を引く
大金10万ゴールドと好条件の立地!!最高のスタートだ!!
まず俺は建築依頼をするため、家を建てる店へと向かう。市場の中で比較的綺麗な建物で流石建築を取り扱う店って感じだ。
中へ入ると綺麗な青い服を着たメガネをかけたいかにもOLの雰囲気を出す女性が
「それでは建築ですがどのような建物に?王国負担からでの相談なのでお代の方が構わずどうぞ」
まじか!?店を建てたいって言ったからそこまで支払ってくれるのか!?王様マジで感謝です。
俺が考えたのは飲食と小売の両立した店だ、飯を食う場所もあれば商品も買う事のできるスペースも居る。
「小売と飲食を両方考えているので、厨房とスペース、この2つが確保できるのが良いですね、小売のスペースとしては6割、飲食は残りと言った感じで」
女性はメモを羽ペンでカリカリ書いて了承すると、「二階の方に、従業員や、居住スペースを考えると……居住スペースは2LDK程度と庶民的なレベルになりますがよろしいですか?」
俺は力強く頷いて「あぁ、それで頼む」
俺にはでかい部屋や広い部屋はお似合いじゃないね、だって、掃除が面倒だし……
そんな事を考えていると、女性が「それでは工事の期間ですが……」
それを待ってた!と俺も聞き耳を立てる
「早くて6ヵ月、遅くて8ヵ月ですね、王国からの命令で総動員される予定ですが、何かありますか?」
まぁそんなもんだよな、俺は頷くと。
女性は笑顔で「それでは着工準備に入りますね!」
それでお店の件はなんとかなった、だが後は……
俺は図書館へ入る
なんで図書館なのに、入るだけで入園料として金貨2枚もすんだ……?額をぴくぴくさせながら
俺の目的の本へとたどり着く
ドラゴンに関する本だ、店ができるまでの間はひたすら、この図書館が営業してから、終わりまでドラゴンに関する情報集めだ!
2日かけて朗読し終え、まず最初に分かった事だが、ドラゴンは善でも悪でもない、両方に属すると言った方が良いかもしれない。
良きドラゴンは人々を守り、悪きドラゴンは人々を襲う。あとドラゴンは珍しいのか、珍しくないのかどっちかで言えば珍しい方である。それとこの世界では良い事に、崇拝対象にはなってないようだ。後々手を出すと厄介な団体が動いたりしたら面倒だからな。
大体ドラゴンがこの世界にとってどれ程の存在感が分かった所でメインのドラゴンになる方法だ
伝承から何から何まで片っ端から調べ上げる
1ヶ月かけて分かった事は、ドラゴンがこの近くには生息してないというだけだった。
俺は図書室で悔やむ「くそぉ……どうして伝承にも何も無いんだぁ……」
だが諦めん!何としてもドラゴンになるんだ!俺は!!
顔を上げてフンスフンス鼻を鳴らすと、
図書室の従業員の男性が声をかけてくる
「随分の熱心にドラゴンについて調べますね……多分、家の図書館のドラゴンにまつわる本は多分制覇してますよ?」
俺は苦笑いして「あっ、アハハハ、私ドラゴンが大好きで、ドラゴンになりたいんですよ」
男性は変人を見る目つきで俺を見てくる、まぁそう思うだろうな。
「そ、それは変わった目的ですね……そうなると魔術を習得した方が良いかと、人間の姿を魔獣に変えて戦う、魔術師が居ると聞きました」
俺は男性にすがる思いで足元で土下座して「頼む、その魔術師の名前、できれば住所、すべて教えてくれ!」男性は苦笑いして「っあ、アハハハそれはちょっと無理かなぁ……」
俺は頭をかしげると
「だって監獄ですもの、この国の」
うそぉぉぉぉん!?
でも魔術師で変身して戦うならば、何か知ってるかも、面会だけでもさせてくれはいかなぁ……
俺はそこで思いつく「そうだ、悪人をまた捕まえれば願いが言える!」
男性は苦笑いして「が、頑張ってくださいね」
俺はグッドサインて「おう!」と答えると図書館をあとにする