常闇の魔女
「なあ君、何か依頼は受けたのかい?」
黒く長いがよく手入れされた艶のある髪を揺らした女がアレクに声をかけた。
「ああ、適当なものを2つほどな」
アレクは素っ気なく返事を返すが周りのものたちが騒ぎだす。
「おい、あれって常闇の魔女だよな?!」
「ああ。本物だなありゃ」
「まじかよ!始めてみたぜ、あれがこの辺じゃあ知らねえものはいねえっつうSランク冒険者か」
Sランク?と聞こえてアレクはいったであろう人物の方を見るが人が多すぎて確認できない。
「それで?なにか用かい?Sランクさん」
心底めんどくさそうに言うアレクに常闇の魔女は苦笑する。
「Sランクじゃない、リリーだ。別に用と言うほどでもないがただ少し気になっただけさ。それと適当な依頼っていってたけど具体的には何を受けたんだい?」
「ただの雑魚掃除だよ。最初だから軽めのにしといたんだ。」
アレクは少しイラついて声が大きくなり慌ててギルドから出ていく。
「で、内容はなんだったの?」
それでもしつこくリリーが聞いてくるので、遂にアレクがおれた。
「バウンドロック5体と火竜討伐だよ!!じゃあな」
そういってアレクは走り去った。
「バウンドロックも火竜も1人の人間が軽く勝てる相手じゃないんだけどなー」
リリーの呟きは誰の耳にも入ることはなかった。