一日の始まり
王は悩んでいた。
ある一人の男が現れたことによって悩んでいた。
なぜならマリス王国の国王の娘、第三姫ヒスイは少し前に開かれた会議により召し使いもしくは下女もしくは嫁に出される予定だったのだ。
しかも相手は伝説上のものと思われていた大公爵である。
大公爵が現れたことを聞いたマリス王国の同盟諸国は緊急会議を開き、大公爵の機嫌をとるため、誰かの娘を差し出すことにしたのだが、当然我が娘を差し出そうなどというものはおらず結局ヒスイ姫をいかせることになったのだった。
「どうしたものか。ヒスイにはなんと初恋の相手ができたというのに!なんたることか!」
この世界の奴隷は人権などなく、何をしてもよいが当たり前であり嫁も主人の命令には逆らえないのが普通だ。
「いっそ初恋の相手がexランク冒険者であるというならばヒスイをさらってくれればよいのだがなぁ」
国と娘に挟まれた王はそのようなことをぼやくも、そんなことは不可能であると判断し最終的には仕方がないという他なかった。
「おい聞いたか❗大公爵様とexランク冒険者と覇神が現れたらしいぞ。」
「ああ、聞いたよ。邪神邪竜と悪い話しか最近聞いてなかったからな。少し嬉しいぜ。」
「だよな。プレートを見たときはホントにビックリしたよ。プレートにいいことが書いてあるなんてなかなかないからな。」
王都のある商店街ではその話題でいっぱいになっていた。
※プレートとは神のお告げてきなもので、これは世界の"絶対"
なので間違っていることはない。
この世界にはいくつかの絶対があり、それはこの世界を支えている。
噂の当人は、
「なんか話題になっていてやだな」
といいながら自分の話で盛り上がる人のすぐとなりを逃げるように通りすぎた。
その三つが全て同一人物だとは誰も思っていないみたいだけどな。
まあ一つくらいはすぐにばれそうだな。
まあ今から冒険者ギルドいくからすぐにばれるしな。
冒険者ギルド
「この度ギルドマスターよりも権限が高いexランクが現れたらしい。くれぐれも粗相のないように。私の首が飛んでしまう。」
最後の方は冗談半分でいったが、そうなっても文句は言えないだろうことは皆が承知しているため、誰も笑いはしない。
「ではよろしく頼んだぞ。」
そういうと、ギルドマスターはマントを翻して奥にあがった。
今日もいつも通りの一日が始まることを祈って。