一目惚れ
「では、ありがとうございました。」
そういって華麗なる姫は頭を深く下げる。
それはアレクシスにしてみれば当然のことであったが、この世界の人々にとっては驚愕に値することだった。
しかも今いるのは裏道であり、人は勿論のとこ、気配すら感じられない場所だ。
頭を下げれば相手が見えないため、何をされるかわからないのだ。
たとえ前を見ていてもアレクシスから逃れられることなどできないが。
「ああ。まあ依頼だったからな。そこまで感謝される覚えはないよ。」
そういってアレクシスはくるりと後ろを向いて歩き出そう踏み出した途中でとまり、ちらっと姫を見る。
「危ないから送っていこうか?」
その遠慮がちに差し出された手に、姫は内心動揺する。
(彼のことは信頼に値する人だと思うけれど、、私まだ男性に触れたこともないのに、、、)
「、、、、、、、」
その少し困っている姫を見て何を思ったか、アレクシスはフードを取った。
「これで少しは信用してくれるか?」
アレクシスからしてみれば、ただフードをとっただけだったのだが、ヒスイからすると信用云々の問題ではなくなっていた、
一目惚れをしてしまったのだ。
ヒスイが黙ってしまったことを不思議に思って髪をかくそのすがたも様になっていて、
ヒスイは頭で考えるより先に、からだが勝手にアレクシスの手をとっていた。
それを見たアレクシスの笑顔をみて、少し濡れたのはこの後一生の秘密となるかもしれない。