おくすり
時系列順にはなっていません、何話から見ても大丈夫です。
各話が短いので好きに読んでください。
ユキを家に帰らせたアズサ、芝太郎によると近所からはネガティブを感じないらしい。
アズサは気絶している犯罪者『ピッグ・スリー』の兄豚に近づき大またを開く、深呼吸をして胸元にまで拳を上げると一気に振り下ろす、下段突きだ!変身した状態では鋼鉄をも貫く。
実際に火炎放射器の燃料タンクを簡単に破壊した、可燃性の燃料が零れ落ちる。
「よし、じゃあ通報して帰ろうか…、ここからは警察に任せようアズサ」
アズサが変身を解除した。
「イヤッ、まて変だ佐清の魔法反応がとぎれている」
「あ?他にも犯罪者がいるのか?」
「たぶんね、佐清は僕と違って空中からサポートするタイプの妖精マスコットだ、基本的にやられることは無いはずだが…、反応が途切れた場所へ行ってみよう」
妖精マスコットとは魔法王国が魔法少女支援用に生成された生体端末でさまざまな機能を持っている。
・人間のネガティブを感知
・妖精マスコットとの通信
・魔法力を消費した景品の譲渡
・半永久的に活動可能(不死)
などである、芝太郎は同じ妖精マスコットである佐清との通信が途切れたことに不安を覚える。
アズサは警察に通報を済ますと、現場近くに駐車していたバイクに飛び乗る。
芝太郎もアズサの足を駆け上がり後部座席に乗り込んだ、芝太郎が乗れるように改造されていた。
改造は座席だけではない、エンジンのリミッター解除や出力アップがされていて、馬力は70Psを優に超える、排気量は400cc以下だがこのマシンはバイク流行時代に作られた傑作機でアズサの父親が残してくれたものだ。
―十分ほど前。
カナエはアリゲイターこと鰐淵と対峙していた。
実家の手伝いで配達をしている最中だった、鰐淵達は注文と偽ってカナエを誘き寄せたのだ。
しかしアリゲイター以外の犯罪者はカナエに倒されていた。
カナエ、魔法少女マジカルホシイモは疾風の戦士だ、本来は近距離で戦うタイプではないが、通常の人間は相手ではない。
カナエは持っている遠距離魔法具を鈍器代わりに使用!アリゲイターの頭に一撃を加える。
が、相手の首が少し傾いただけでダメージを受けてない様子。
「へえ…」
返しにアリゲイターはカナエに頭突きを喰らわした!
吹き飛ぶカナエ、手から遠距離魔法具が離れた、急いで体勢を立て直す。
帽子を深く被り、マントで体を包んだカナエの姿が消えた!これはマジカルホシイモの特殊能力、空気を屈折させたことによる工学迷彩だ。
すぐさまアリゲイターは手に持っていたナイフをカナエの方向へ投合!
「ぐがぁッ!」
ナイフは佐清に命中、カナエを庇ったのだ。
「スケキヨッ!」
カナエは思わず工学迷彩を解いてしまった。
「来るんじゃない…、ワタクシは不死身です…、だかグワアッ!」
アリゲイターが這い蹲る佐清に刺さったナイフをさらに深く突き刺す、そして地面へ固定。
ゆっくりと立ち上がり、カナエに近づく、そして喰らわしたのは平手打ちだ。
「ああッ!」
倒れたカナエは立ち上がる隙を与えられず背中を踏みつけられた。
アリゲイターはカナエの首筋へ薬物を注射。
「ア…、ア…」
カナエの鼓動が早くなる、目を見開き、自ら豊満な胸をかき乱す、よく揺れるッ!
「これはオレの愛用品でね、お前らの攻撃を喰らっても倒れないのはこいつのおかげだが、慣れてない奴には多すぎたか…、結構高いんだがな、あ?聞こえてねえか!」
カカカと笑いカナエを蹴り転がす。
体を痙攣させて開けっ放しの口から唾液が垂れた、カナエはもう戦闘不能だ。
「すまないアズサ、ネガティブを感知しきれなかった…、おそらく事件が起こったのは僕達が戦っていたとき、仕掛けられたんだ」
「奴が考えそうなことだな…」
廃墟の壁面、血文字でこう書かれている。
ジンジャニコイ ナカマガ シヌゾ
インクは佐清のものだ、壁にナイフで固定されていた。
バイクに跨ったままその光景を確認したアズサはスロットルを廻す、後輪が空回りしギャアアと鳴いた。
次の瞬間加速、バイクは廃墟から遥か遠くへ。
佐清は現場に残されたままだ、せめてナイフを抜いてやれアズサ!