からあげ
時系列順にはなっていません、何話から見ても大丈夫です。
各話が短いので好きに読んでください。
「ぐがァッ!ぐがァッ!」
佐清が苦しむのは当然だろう、肺に熱せられた油が侵入したのだ、今彼は生きたまま素揚げにされているところだ。
「テメー今何つった!あッ!?」
「もうアズサちゃんそのへんにして、佐清も変なこと言ったらダメ」
ここはアズサの実家である『和菓子大納言』の厨房だ。
―10分前。
ガララとアズサ宅の引き戸が開けられた。
「アズサちゃん遊びに来たよ!」
「チっ、まあ上がれよ」
靴を揃えてから、アズサの部屋に向かうカナエ、特に集まって何かするわけではないが毎週一日ある定休日の日課である、しかし『和菓子大納言』はこの5年間ずっと閉店中のままだ、定休日とはカナエの実家『風呂屋敷乾物店』の事だ。
ぐびぐびと缶ビールを煽るアズサ、部屋のそこらじゅうに空き缶が散らばっている。
缶ビールと説明したがそれはアズサがそう思っているだけで、実のところは発泡酒の空き缶である、今飲んでいるのもそうだ、彼女は発泡酒とビールの違いが分からなかったのだ!
「もうッ、お昼からお酒、あんまり飲みすぎちゃ体に…」
「いーんだよッ、っせーな!」
「全く少しは規則正しい生活を送る気は無いんですか?カナエを見習ったらどうです?大体魔法少女でありながら昼間からこの体たらく、ワタクシ情けぶがァッ!?」
アズサのしたたかな右ストレートが命中、妖精マスコットの佐清もカナエと一緒に来ていたのだ。
「うるせぇ…」
ひび割れた嘴でなお囀る佐清。
「ッはぁ…ッはぁ…、この際言わせて貰いますけどね、アナタいくらご両親が早くに亡くなったとはいえ甘えすぎでは?しかも残してもらった貯金や保険料の使い道は酒ですか?タバコですか?下らない…」
「ちょっと佐清!そんなこと言いに来たんじゃないでしょ!ごめんねアズサちゃん…」
「それに不規則な生活、それだからカナエに比べて胸の発育が…」
「あ…」
無言で厨房に向かうアズサ、小豆を煮るための寸胴鍋に大量の油を投入、火力は最大にする。
―調理開始ッ!!