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7話 町を回りました

倉庫の荷物運びの報酬と前日の残りで現在の所持金は銅貨5枚と小銅貨8枚。

昨日と同じ冒険者ギルドの宿舎で雑魚寝して銅貨1枚ですますか。

銅貨4枚でちゃんとしたベッドの個室に泊まるか。

これから毎日銅貨6枚が稼げると思えばちゃんとした宿を取るのもありだ。

ギルド宿舎のおばちゃんにこの辺りにある宿屋の値段を聞いてみよう。

値段を正確に把握してから答えを出すのが良いだろう。

ギルド宿舎の入口を入るとおばちゃんが声を掛けてくれる。


「いらっしゃい。今日も泊まって行くのかい?」

「いえ、ちょっと考え中でして・・・。申し訳ないのですが、この辺りにある宿屋の個室の値段を教えてもらえないかと思いまして。」


早速周辺にある宿屋の値段を聞いてみた。


「それを私に聞くのかい?まぁ、良いよ。この辺りじゃ3軒かな。一番安いのは銅貨3枚。次に銅貨4枚朝夕の食事付きでプラス小銅貨5枚。最後に銀貨1枚食事付きでプラス銅貨3枚だね。」

「え?最後の宿は飛び抜けてますね・・・。高級宿って事ですね。一番安い宿は食事が付かないのでしょうか?」

「付かないよ。泊まるだけのとこだからね。外に出れば色々食べる所あるだろ?」

「なるほど。う~ん。その中では銅貨3枚の所が良いですかね。金銭的にも何とかなりそうな気がします。」

「そうかい。じゃぁ、その宿にするのかい?」

「はい。どこにあるかお聞きしても?」

「その必要はないよ。今夜も宿泊ありがとうございます。銅貨3枚だよ。」


ニヤリと笑いながらおばちゃんがお金を請求してくる。


「え?ひょっとして銅貨3枚の宿ってここだったんですか?」

「あっはっはっ!そういうことだよ。」


なるほど道理で相場より安いはずだ。ここは冒険者の援助施設だろうからな。これはしばらくここから離れられそうにないな。

苦笑いしながらおばちゃんに銅貨を払うとカギを渡してくれた。

昔の牢屋に使われた様な鍵だ。

現代人の感覚からいくと非常に心許ない鍵である。

ピッキングで簡単に開くんじゃないだろうか・・・。貴重品置いて行ったりは出来そうにないな。


「部屋は204号室だよ。出かける時は鍵預けておくれ。部屋は2階の左側、手前から4番目の部屋だよ。階段は大部屋の先に行った所にあるからそこから2階に上がっておくれ。」

「わかりました。」


良く見ると鍵には数字らしきものが3つ書いてあった。

おれはこの文字を『204』と覚えた。

『2』と『4』は何となく依頼書で見たような気もするから恐らく間違いないだろう。

階段を上ると少し廊下があり、突当りを左に折れると左右にドアが並んでいた。

手前から4番目の部屋の前まで来ると、ドアに貼りつけてある番号と鍵に書かれている数字と間違いないか確認をする。

間違いがないと確認が取れたので鍵穴に鍵を差し込みゆっくりと回す。

カチャッと軽い音がした。

鍵を抜きドアノブを捻り押し開ける。

ドアは意外に軽くすんなりと開いた。

部屋の中にはベッドが1つ、小さな机と椅子が1つずつあった。

予想してたよりも悪くない部屋だった。

椅子に腰を掛けて今後の予定を立てることにした。

この世界で生きて行くのだから、今後の生活の中で必要な物を揃え無ければならない。

まずは服だな。いい加減こっちの服を買った方が良いかもしれない。下着とか靴も欲しいな。また金が掛かるな・・・値段を調べなければ・・・他の物はおいおいで良いか・・・

先立つものがなければどうしようもないので考えるのをやめた。

次にこれから一週間生活リズムが固定されるので、依頼以外の予定を立てることにする。

文字が読めないのはかなり困る。ってか困っているので、本屋で毎日勉強することにしよう。それと訓練所での自分の鍛錬をしなければ・・・。あと、魔力も毎日練りたいなぁ・・・

ということでざっくりと一日の流れを作ってみた。

朝起きたら訓練所で鍛錬。

朝飯を食べて倉庫の荷物運び。

依頼終了後に本屋で勉強。

その後夕飯食べて宿に戻る。

寝る前に魔力練って眠くなったら寝る。

よし!完璧だ!取り敢えず今日は本屋軽く顔出してから夕飯を食べて来よう

椅子から立ち上がると・・・ちょっと自分の臭いが気になってた。

こっちに来てから着替えていないし、風呂も入っていない。

さすがにお風呂やシャワーなんて物はないだろうなぁ。インナーのシャツだけでも洗って部屋で乾かしておくか

Yシャツの中の肌着を脱ぎ中庭の井戸で水洗いして振りまわして絞り、部屋の椅子に引掛けておいた。

おばちゃんに鍵を渡して、出掛けてくると言って宿舎を後にする。




本屋に入るととカウンターで昨日同様にカウンターでエミリーさんが本を読んでいた。


「こんにちは。文字の勉強させてもらって良いですか?」

「あんたか。もう来ないのかと思ってたよ。こっちに来な。これを使って勉強すると良い。」


そう言ってセシリーさんは一冊の本を渡してくれた。

その本は厚みはないが装幀しっかりしたもので一目で値の張るものだと分かった。


「こんな高そうな本をお借りして良いのでしょうか?」

「何言ってるんだい?本は元々高いものじゃないか。確かに装幀に凝るものもあるけど、その本は子供用だし良いとこ中の下と言ったとこだよ。


申し訳なさそうにおれが聞くとセシリーさんは呆れたような顔をして教えてくれた。

やはりこの世界では本が相当高価なものらしい。

紙は羊皮紙で印刷技術なんて無いから手書きである。

しかし、今一ピンと来ないんだよな。どのくらいの価値なんだろう?あ、値段を聞いてみるか。


「ちなみにこの本はおいくらするんですか?」

持っている薄い本を軽く挙げて値段を聞いてみた。

「それは中古で金貨1枚と大銀貨6枚だったかな?」

「え?」


その値段におれは絶句した。

現在のおれの生活水準が低いのは分かっているが、1日銅貨4枚あれば十分すぎる。

現代日本でだいたい銅貨1枚=1,000円くらいだろう。

ということは、子供用文字練習の本が160万円ということだ。

この世界だったら1年以上暮らせる。

節約すれば2年。

頭の中でこれで牛丼何杯食べられるみたいな計算をしてしまった。


「しゃきっとしな!別にこれをお前にあげるわけじゃないよ!練習で貸すだけだからなんだからね!」

「は、はい。ありがとうございます!」


当然おれは心の中でこう呟いた。

ツンデレか・・・

早速本を開こうとするとセシリーさんがアルファベットの様な基本的な母音、子音に当たるものを教えてくれた。

これが分かれば、あとは単語を覚えて行けば大丈夫だろう。

実際には会話では日本語になってるのに単語を見たら異世界語だから覚えるの大変そうなのだが。

取り敢えずやってみるしかない。

そのうちに色々な本も読めるようになるだろう。

練習の本を見ているとセシリーさんが持って行って良いというので、借りて行くことにした。

160万円の本を持ち歩くのはかなりプレッシャーがあるのだが、文字を読めるようになるためだ。

早く覚えて、早く返そう。そうしないと精神的に持たなそうだ。




夕飯を食べるために町をうろついていると服を売ってそうな店を見つけた。

値段の調査のために入ってみることにした。

ハンガーにたくさんの服が掛けられていた。

様々な服があり1点もののようだ。

カウンターには店主らしき男がいた。

髪はぼさぼさで、ひょろっとした頼りない感じの人だった。


「すみません。色々な種類があるようですがお値段はおいくらでしょうか?」

「いらっしゃいませ。値段は書いてある通り場所によって変わってきます。こちらが銅貨2枚、こちらが銅貨3枚、これは銅貨5枚です。」


なるほど、この札に値段が書いてあるのか。これが『銅貨』で、こっちが『2』『3』『5』だな。銅貨2枚で良いのがあれば買うかな・・・。ちょっと見てみよう。

おれは銅貨2枚の場所で使えそうなものを探した。

特にこれといった物が無かった。

銅貨3枚、5枚の方は気になる服が何着かあったが予算の関係上購入は難しい。

しかし、端っこの籠をみるとパンツらしき物を見つけた。

こちらはまた別の札があった。

聞いてみるとそれは銅貨1枚の様だ。

薄い生地の短パンの様な形で腰回りと太ももを紐で結ぶようになっている。

パンツは重要だ。服は毎日替えなくてもいいが、下着は毎日替えたい!

パンツを銅貨1枚で買い、丸めて鞄に詰め込んだ。


「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしてます。」


パンツ1枚しか買っていないのに、何故か店長に丁寧に挨拶されてしまった。

そういえば、店の中でずっとおれを舐める様に見ていた気がする。

もしかして・・・。あの店に行くのは止めた方が良いだろう。




懐が寂しくなってきたので、夕飯を安く済ませようと思っていると道具屋を見つけた。

そういえば水筒が必要だったことを思い出し店に入ることにした。

中には生活雑貨、旅に使いそうな物など色々あった。

取り敢えず革で出来た水筒を見つけたので値段を聞いてみた。


「すいません。これいくらですか?」

「いらっしゃい。その水筒は小銅貨5枚よ。」


赤い髪を左右で三つ編みにしている10代後半の女の子が教えてくれた。

目は青くちょっとつりめ気味だがかわいい子だった。


「小銅貨5枚かぁ。このコップと手拭いはいくらですか?」

「コップと手拭い両方とも小銅貨3枚。」

「3つで銅貨1枚になりませんか?」

「う~ん。まぁ、良いですよ。ちょっと待ってね。」


そう言うと水筒、木のコップ、手拭いを細い麻紐でまとめてくれた。

それを受け取るとおれは銅貨1枚を彼女に渡した。


「ありがとう。またよろしくね。」


道具屋は良い感じだ。

店員はかわいいし、まけてくれたし。

石鹸とかあったのかな?今度聞いてみよう。

やっぱり高いのかもな。

材料と道具が揃ったら作っても良いかな。


『アムル』という店を探そうと思ったがまだ字が読めないので看板では分からないな。

今日はは屋台で済ませて情報を得ておくかな。

宿舎に戻る途中に真ん中に切れ込みを入れたコッペパンの中に肉と野菜を挟みその上から黒いソースを掛けたサンドイッチの屋台があった。


「1つ下さい。」

「ありがとうございます!」


その場で作ってくれるようだ。


「アムルって食堂知ってます?」

「アムルかい?知ってるよ。中央広場から南の大通りに出てすぐ右だよ。」


商人ギルドからそんなに離れてないようだ。

明日の朝、倉庫行く前に寄ってみるか。

サンドイッチを食べながらそんなことを考えつつ宿舎に戻った。


おばちゃんに渡してもらった鍵を使い部屋に入る。

手拭いと椅子に掛けてあったシャツそして今日買ったパンツを持って中庭の井戸に向かった。

井戸に着くと運良く誰もいなかった。

急いで革靴と靴下を脱ぎ足に水を掛けて足を洗う。

次にワイシャツを脱いでから手拭いを水で濡らして身体を拭いていく。

シャツを着て今度はスラックスを脱ぎ、脚を拭いていく。

パンツを脱いで股間に水を掛けて洗い、手拭いで拭いて水気を取り買ってきたパンツを履く。

最後に顔を洗った。

ワイシャツと靴下を洗い、絞ってから振り回し水気を取る。

素足を無理やり革靴に押し込み、荷物を持って部屋に戻った。

ワイシャツは椅子に掛け、スラックスと靴下はテーブルに掛けた。

明日の朝には乾いてくれると良いんだが・・・。





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