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4話 依頼受けました

「私はアルス。ランクDの人族の冒険者だ。よろしく頼む。」

「リョウです。今日入ったばかりのランクFです。」


おれに声を掛けてきたのはアルスという金髪イケメンだ。

サンブック難民のおれを不憫に思ったのか、もともと世話好きなのかよく分からないが、どちらにしろありがたいことだ。

だが、背が低いのだ。

身長175センチであるおれの胸辺りまでの高さで、だいたい140センチくらいじゃないだろうか。

ひょっとしてそういう種族なのかもしれないが、本人が人族と言っているので人族ということにしておこう。

人族としたら残念な感じだ。せっかくのイケメンなのに・・・。


「まず、依頼を受けてみようじゃないか。」


そう言うとおれを追い越して依頼書の掲示されている壁に向かう。

おれもその後に続いて歩いていく。

それを確認するとアルスは話し始めた。


「初めはランクFの依頼から始めるのが良いだろう。大体町の雑用的な依頼が殆どで、危険がある討伐依頼等はランクEからだ。ランクFは初心者が依頼に慣れ、基礎体力を付ける意味合いがある。依頼者にとっては、臨時で仕事を頼める便利屋と言ったところだ。荷物の運搬、お使いの依頼、草刈り、倉庫整理、宅配業務等々だ。」


なるほど、日雇い労働者みたいなものだな。長期で人を雇うほどじゃないけど、人手が欲しい時に冒険者ギルドに依頼を出して働いてもらうのだろう。初心者の冒険者にとっても利益があるし、なかなか良いシステムだな。


「今日はどんな依頼があるかな。ん~。これと、あとこんなのはどうかな?」


掲示されているたくさんの依頼書の中から2つの依頼書を指さした。

それらの依頼書を見てみるとおれのギルドカードにあった『ランクF』と同じ文字がありランクFの依頼書だということは分かった。

その他のことは当然分からなかったので、アルスの方を見る。


「どういった内容なんですか?」

「こっちは依頼人は武器屋のギルで、武器を届けて欲しいそうだ。報酬は銅貨1枚。ポイントは1。それでこっちは依頼人が本屋のセシリーで、本の整理を手伝って欲しいみたいだな。報酬はどうか2枚。ポイントは同じく1だな。どちらも難しい依頼じゃないし、初めての依頼には丁度いいんじゃないかな?」

「どちらもおれでも出来そうな依頼ですね。えっと・・・両方受けることはできますか?」

「ん?3つまでなら依頼を同時に受けることが可能だ。両方とも受けるつもりなのか?」

「お金がないので頑張ろうかと思いまして。両方の依頼を受けてみます。」

「そうか。じゃあ、この依頼書を持ってカウンターで出してくるといい。」


アルスは掲示板から依頼書を2つ剥がし、おれに渡してくれた。


「ありがとうございます。行ってきます。」


依頼書を受け取りカウンターに向かった。

さっきの受付嬢の前がまだ空いていたので依頼書を出しながら声をかける。


「すみません。依頼を受けたいのですが。」

「はい。依頼は2件ということでよろしいでしょうか?」

「はい。2件でお願いします。」

「では、登録致しますのでギルドカードをお貸しいただけますか?」

「わかりました。」


ギルドカードを渡すと箱型の魔道具の挿入口らしい所に入れ、依頼書を見ながら入力をし始める。

入力が終わったのか受付嬢がカードを入れた場所を数秒眺めていると、ギルドカードがシュッという小さな音と共に出てきた。


「登録完了いたしました。ギルドカードをお返し致します。依頼が完了しましたら、依頼主様から依頼完了証明書を貰ってギルドカウンターまでお持ちください。報酬をお支払い致します。」

「わかりました。依頼完了証明書ですね。」


受付嬢からギルドカードを受け取ると、依頼完了から報酬を受け取るまでの流れを説明してくれた。


「あ、これからもお世話になると思いますのでお名前伺ってもよろしいですか?」

「失礼致しました。私は、ミリーと申します。これからもよろしくお願い致します。」

「こちらこそよろしくお願い致します。では、行ってきます。」


おれはカウンターを離れアルスに向かって数歩歩くと、踵を返しまたカウンターに戻る。


「武器屋と本屋の場所を教えて頂いてよろしいですか?」



「ここが武器屋か・・・」


おれは地図に載っていた武器屋の前にやってきた。

ミリーに場所を聞いて一人で来ている。アルスとはまた夕方ギルドで会う約束をして別れた。

さすがに街中の依頼で付き添ってもらうのは気が引けたし、アルスもそこまでするつもりもなかったようだ。

石でできた頑丈そうな平屋の建物で入り口の横には看板が上から吊るされていた。

ドアを開ると正面にカウンターがあり右はすぐ壁で、左に武器が並べてあった。

カウンターには一人の少女が立っていた。


「いらっしゃい。何をお探しですか?」


桃色の髪を左右で三つ編みにした12、3歳の少女が声を掛けてきた。


「すみません。冒険者ギルドで依頼を受けたリョウという者ですが、ギルさんは居らっしゃいますか?」

「あ~ヨークさんの所に配達してくれるのね。ちょっと待ってて。おとーさん。おとーさん。」


呼ばれて出てきたのは140センチほどと背は低いが筋骨隆々な髪が灰色で同じ色の髭を蓄えた男だった。

おードワーフじゃないですか!背低いけど筋肉すごすぎ!


「お前が依頼を受けたのか?」


何故かおれを睨みながら聞いてくる。


「はい、そうです。リョウと申します。よろしくお願い致します。早速ですが、お届けする品物をいただいてもよろしいでしょうか?」

「ふん。おい、リムこいつにあれ渡せ。」

「は~い。お父さん口悪くてごめんね。はい、これお願いね。」


リムと呼ばれた少女が斧らしき物を渡してきた。


「いえ。・・・大きいですね。」


リムは軽々と持っていたが斧は柄の長さが2メートルくらいで、ヘッド部分は布が巻かれておりそのシルエットは直径60センチほどの楕円形をした。

ん?見た目ほど重くないのかな?意外に持ち運べそうだ。

見た目はかなり重そうだったのだが、持ってみると意外に重くなく意のままに操るとはいかないが運べない重さではなかった。

おれが持ち上げるのを見たギルさんが「ほー」と声を漏らしニヤリと笑った。


「お前は冒険者のくせに武器を何も持ってないようだな。」

「え?ギルドには今日登録したばかりですし、今まではそういう生活をしてきていなかったので・・・」


ギルさんがおれをジロジロ見てると、リムがギルさんに「ほらサンブックの・・・」と小さい声で何か言っている。「あーあれか」と顎髭を指で擦りながら話を聞いていた。


「そ、そろそろ届けに行ってきますね。どこまで届けてくればいいですか?」

いつまでもここにいるのも居心地が悪いので仕事をするために声をかける。

「あ、ごめんなさいね。場所は――」



「無事届けることができました。」

「ありがとう。助かったわ。」


斧を届け終わったことをリムに報告しながら木の札を渡した。

渡した木の札は、長さ15センチ幅2センチ厚さ1センチくらいで斧を届けると代わりに渡されたものだ。

リムはその札を確認すると、今度は長さ10センチ幅3センチほどの金属製の板を渡してきた。


「はい、これで依頼完了よ。ギルドカウンターでこれ渡してね。」


なるほど、これが依頼完了証明書ってやつか

おれが依頼完了証明書をまじまじと見ていると・・・


「おい。これ持ってけ。」


ギルさんが鞘に入った一本の剣を渡してきた。


「え?すみません。お金の持ち合わせがないので――」

「やる。持ってけ。」


話してる途中で剣を強引に押し付けてカウンターの奥へ行ってしまった。

おれは訳も分からと唖然とギルさんの行ってしまった方向を眺めていると。


「貰ってあげて。あなたのことが気に入ったのかもね。」


リムが肩をすくめてそう言った。


「あ、そのベルトじゃ剣を吊るのには頼りないわね。う~と。これで良いかな。これも持って行って。」


幅の広い厚手のベルトをカウンターの下から取り出して渡してくれた。


「あの・・・良いんですか?」

「いいの、いいの。その代り武器を新調会うる時はうちでお願いね。」


にっこりと表現できそうなくらい屈託のない笑顔を見せてリムはそう言った。


「ありがとうございます!おれ、がんばりますから!」


ギルさんとリムの優しさにちょっと胸が熱くなった。

二人に感謝しつつ店をでた。



 次は本屋だな。この世界の文明度合を見ると本は貴重品な気がするなぁ。

本屋の扉を開けて中に入ると所狭しと本が並んでいた・・・ということはなかった。

廊下の様な通路になっていて、その先にカウンターがあった。

カウンターには老婆が椅子に座って本を読んでいるようだ。


「いらっしゃい。1時間銅貨2枚だよ。」


カウンターの傍まで来るとそう声を掛けられた。

カウンターの右には部屋があり、そこにはベンチと机が一体となったところに鎖で繋がれた本が何冊も置いてあった。

本を売ってる訳じゃないのかな?有料図書室みたいなもんかなぁ?


「えっと・・・。依頼を受けた冒険者のリョウと申します。セシリーさんをお願いしたいのですが。」

「セシリーは私だよ。あんた冒険者だったのかい?全然見えないね。その髪と目だとサンブック難民かい?この町まで流れて来たのかい?ご苦労なこったね。まぁ、いいわ。早速こっちきて仕事しておくれ。」

セシリーさんは白髪を後ろで纏めてお団子を作った髪型で鼻にメガネをひっかけちょっと神経質っぽいおばあさんだ。身長ははギルさんより低いのだが、すごい勢いでしゃべり始めておれは押され気味になってしまう。

「は、はい。よろしくお願い致します。」


ぴょんと椅子から飛び降りて歩いていくセシリーさんに遅れないように付いていく。

カウンターの奥の部屋には整理されていない本が積み重なっていた。


「この本は?」

「仕入れた本をまだ整理してないんだよ。本は重いからあたしには重労働でね。だからちゃっちゃと整理しておくれ。あんた字読めるかい?読めなさそうだね。題名順で揃えてるから、背表紙の一番上の文字が同じ物同士で集めて棚に入れて置いておくれ。じゃ、任せたよ。」


そう言うとカウンターの方に戻っていった。


「よ、よし。頑張りますか。」


おれは嵐の様なセシリーさんが去ったあと、気合を入れなおして本の整理を始めるのだった。

2時間くらいでなんとか本棚にすべて整理して収めることができた。


「文字が読めないとこの先大変そうだな。」

「もう終わったようだね。どれどれ・・・」


そう言いながら入ってきたセシリーさんが本棚を確認し始める。


「ま、こんなもんだね。じゃぁ、お疲れさん。これと・・・あとこれ持ってきな。」


セシリーさんは依頼完了証明書をおれに渡してから、顔を背けながら、乾燥させた葉っぱに包まれた物をくれた。


「え?ありがとうございます。」

「それと文字を習う本がうちにあるから勉強したい時来な。タダで良いから気にしないでくるんだよ。」

「あ、ありがとうございます。何から何までお世話になってしまって・・・」

「良いんだよ。気にするなって言っただろ。せいぜい頑張るんだよ。」

「はい!」


本屋を出てセシリーさんのくれた包みを開けると、パンの間に焼いて味付けをした肉を挟んだサンドイッチが入っていた。

あ、この世界来て初の食べ物かも・・・

そう思うと突然空腹感が襲って来て貪る様にサンドイッチを食べてしまった。

味は・・・まあまあだったが、空腹も手伝って満足のいく食事になった。


「ふぅ~食った食った~」


食べ終わり呆けていると、周りの視線を感じた。道の真ん中で突然サンドイッチを貪り始めたので奇異なものを見るようにしていたのだ。

おれは逃げるようにギルドに走った。





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