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2話 腹をくくりました

3時間位経つと森が開けて町が見えてきた。

あ~やっとか。若干気持ち悪い・・・。

予想に違わず馬車に酔っていたのだ。

まぎらわすために軽く無心になっていた。今は余計なことを考えたくなかったのもある。

あの光の正体とか、どうやってここに来たとか、ここに居る理由とか、誰がこんなことをしたのかとか、とか・・・

道の先には門が見える。大きな木製の門でその左右は柵がずっと続いているようだった。

なんだか・・・古臭いというか、前近代的というか・・・。

門には警備の人だろうか革の鎧を身に付け、腰には剣、手には槍を持っていた。

おいおい。あんたは何から町を守ろうとしているんだ・・・。形だけなのかな?この地方は古き良きものを大切にしてるとか?

門まで来るとディックが門番に挨拶をしながら何かカードのような物を渡している。


「こんにちは。これでよろしく。」

「商人ギルドのカードだな。よし、通って良いぞ。」


カードを確認しておれたちは通された。門番がおれをチラッと見て哀れみを含んだ顔をしていた。

はて?そんなに幸が薄そうだったかな?


「おれは良いのか?」

「大量に売る品物がなければ特に問題ないぞ。俺は馬車で来てるからカードを見せたんだ。お尋ね者はここで捕まるからリョウは手配されてないようだな。わははっ。」


そんなことをディックが笑ながら言ってきた。


「ひどいですよ。もちろん捕まるわけないじゃないですか。」


たぶん捕まることはしてないはずだ。不法入国だけどね。

門を入って直ぐに馬の厩舎や馬車を置いておく馬車があり、ここでディックと別れることになる。


「ありがとうございます。おかけで町まで無事来れました。あと、両替できる場所を教えてもらっていいですか?」

「いいってことよ。両替かあ。商人ギルドでやってくれると思うぞ。この道を真っ直ぐ行くと中央広場に出る。広場の西にあるのが商人ギルドだ。看板も出てるからすぐわかるぞ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「じゃ、またな。元気でやってけよ。」

「はい。では失礼します。」


おれはとりあえず中央広場に向かうことにした。

広場は食べ物の屋台や地面に敷物をして色々な品物を売っている露店商とで賑わっていた。

円形の広場は外縁に屋台があり、中央に露店商が集まっていた。

市場って感じだな。お腹も空いてきたし早く両替してこよう。

近くの屋台が何かの肉を焼いているにおいが空腹を刺激する。

商人ギルドのがあるという西側に進んでいくと大きな看板が見えたきた。

そこには「商人ギルド」と書かれている・・・と思われる。

おれは今更ながらに気が付いたことがあった。

何で言葉が通じてるのだろう?

看板に書かれている文字が日本語ではなく見たことも無い文字で読めないのだ。

自慢ではないが英語すら全く話すことができない。それなのにディックと意思の疎通ができ、門番の話してる言葉が解った。

ディックが話しかけてきた時には日本語が話せる外人さん何だと思っていたのだ。

耳を澄ませば広場の話し声も聞き取れている。

何かおかしい・・・これは、もしかして・・・いや、30歳を越えたいい大人が考える事ではない。そうだ!日本語で話して文字は日本語じゃない・・・苦しいか。そうだ、両替できたら地球で、出来なかったら・・・。よし!行ってみよう!

おれは商人ギルドの扉を開け近くの受付らしき女性に聞いた。


「両替できますか?」


鞄から財布を出しその中から一万円札を出す。


「え?両替は右手奥の受付でお願いします。」


受付嬢はおれの差し出した一万円札を見て一瞬驚きの表情をしたが質問に答えてくれた。

違う違う。いきなりお金だしたから驚いたんだ。決して紙幣がないから紙を出して両替ってことを驚いたんじゃない。

右奥のカウンターをちらっと見てから。


「ありがとうございます。」


笑顔でお礼を言い両替のカウンターに向かった。


「すいません。両替お願いします。」


カウンターで呼び掛けると奥から頭の上に猫耳を生やした少女がでてきた。


「いらっしゃいませ。私がお伺いせていただきます。」


く、ネコミミだとぉ!もはやこれまでか。だが、まだわからない。これはファッションかもしれん。無駄にリアルなネコミミだが、ファッションかもしれん。


「あ、はい。これをお願いします。」


猫耳に視線がいったまま一万円札を差し出す。

猫耳の少女はそれを受け取って観察し始めるが、困った顔になった。


「申し訳ありませんがこの紙と交換することができません。」

「そう・・ですか・・・」


やっぱりだめだ~。わかってたよ、そりゃぁわかってましたとも。でも、いきなりネコミミはずるいだろう!


「そろそろ、よろしいですか?他の業務もありますので・・・」


おれは腕を組みぶつぶつ言ってると猫耳少女が申し訳なさそうに言ってくる。


「あ、はい。ありがとうございました。」


おれは少し焦りながらお礼を言い、そのまま商人ギルドを出た。

くそっ!決定か?いや、おれを騙すためにやっているという可能性が・・・。

考えながら道沿いに歩いて行くと大きな声が聞こえてきた。


「今のうちに謝ったら許してやってもいいぞ。その代り有り金全部置いてきな。」

「ごたくはいいから掛かってこい。」


古ぼけた革鎧を着たスキンヘッドの悪人面の男と細身で革のフード付きマントを着て顔の見えない男が道の真ん中で争ってるようだった。

スキンヘッドの方が頭一つ分大きく180センチ以上でいかにも荒くれ者であり、マントの男には同情的な視線が集まっている。

テンプレか?これはテンプレなのか?

スキンヘッドは腰からロングソードを抜き、叫びながら突進する。


「この野郎!馬鹿にしやがって!覚悟しやがれ!」


マントは立ったまま動こうとしない。顔が見えないので表情は読めないが余裕がありそうだ・・・。

スキンヘッドが剣を振りかぶりマントに打ち込もうとした瞬間マントが前に出る。

するとスキンヘッドは剣を振り下ろすことなく後ろに倒れた。

マントが踏み込んで顎にアッパーを当てたのだ。

やはりテンプレ。弱そうな方が勝つな。ってか普通に剣とか使ってるし・・・いや、まだまだぁ!!

マントは倒れたスキンヘッドの気腰元をガサゴソと探ってから小さな革袋を取りだし縛ってある紐を緩めて中身を確認すると、再び紐で縛ってマントの中に手を引っ込めガサゴソとしまうと、何事も無かったように歩いてどこかに行ってしまった。


「あいつランクDのゴルをあっさりと倒しちまいやがった。」

「見かけないやつだが新人か?他の所から来た冒険者か?」

「他の所から来たらしいぞ。何でも旅の途中で寄ったとか言ってたな。ランクはわからん。」

「少なくともCランクはあるだろうな。でも、どうしてトラブルが起きたんだ?」

「マントの奴が気に入らなかったのかゴルの奴が―――」


野次馬が事情を周りに話してる途中ですが・・・

はい。冒険者頂きました!もう腹くくりましょ。ここは異世界です。魔物なんかいたりして危険極まりない世界に違いない。若かったらテンション上がったのだろうか?魔法とかあったらテンション上がりそうだけど、おれが使えなきゃ恐怖以外の何物でもないな。おれはやっていけるのだろうか・・・。取りあえず冒険者ギルドに登録しなくちゃかな。でも、一文無しじゃ登録できないかも・・・。説明だけでも聞いてみようかな。

おれは決意して冒険者ギルドに行くことにした。

しかし、冒険者ギルドの場所がわからないので前にいる野次馬な方々に聞いてみた。


「すみません。冒険者ギルドはどこにあるか教えて頂いてもよろしいでしょうか?」

「――奴が表へ出ろって言い始―――ん?兄ちゃん冒険ギルド行くのか?それなら、ほれ。あそこに見える剣と斧が交差してる看板が冒険者ギルドさ。」


ここから喧嘩があった場所を挟んだ向こう側に冒険者ギルドはあったようだ。

本当にギルドの表すぐの所でやりやってたようだ。


「ありがとうございました。では、失礼します。」

「兄ちゃんも辛いだろうけどがんばれよ!」

「はい。がんばります!」


野次馬さんは憐みに満ちた目でおれを見ながら応援してくれた。

何だか知らんが応援されました。門番と同じ目だったな。何かあるのか?

おれはその理由を考えながら、喧嘩があった道を横切り冒険者ギルドの前に立ったのだった。


因みにゴルは道の真ん中で寝られても困るからか道の端によけられてました。




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