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1話 目覚めました

「・・い・ち・・お・・い・・・」


・・・ん?何だ?誰か話しかける・・・?

よく聞こえないよ・・・なんだ・・・なんだ・・・

眠いよ・・・まだ寝かせて――


「おい!」


突然肩を強く揺すられ意識が覚醒した。


「え?え?」


突然の事に目を見開いて固まっていると。


「にいちゃん大丈夫か?」


目の前に男がいた。40代前後の髭を生やした少し強面の外国人が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。


「え?は、はい!大丈夫です!」


え?外人?なんで?日本語?ん?ん?

何が何だか分からないまま大丈夫と返事をしてしまった。


「そうか。こんなところで寝てると危ないぞ」


こんなところ?おれはどこにいるんだ?

まだ突然の事に立ち直れずにいたが、きょろきょろと周りを見渡し状況を確認する。

どうやらおれは道の端で座り込んで寝ていたようだ。

しかも、その道はアスファルトで舗装さすれたものではなくむき出しの土であり、道に沿って左右は木々で覆われていた。

・・・ここは・・・どこだ?何でこんなところで…

何故森の中に居るのか、そして何故こんな森の中で寝ていたのかまるで解らなかった。

自分の住んでいた場所は都会ではないが森があるような場所ではなく、畑は多少あったが住宅地と言ってよい所であった。

森・・・なのか?何故こんな所に・・・?やばいぞ、全く記憶がない。どうやってここに来たんだ?やばい、やばい、やばい、やばい・・・

自分の行動の記憶がないと言うのはこんなにも恐ろしいものなのか。

行動には大なり小なり責任が生じる。記憶が無いからといってそれが消えるわけではない。

何処かで何かしでかしてないだろうか、若しくは何かしなくてはなら無いことをしていないということもありえる。

それを考えるだけで焦燥感と恐怖感が交互に襲ってきて冷や汗を全身にかいていた。


「本当に大丈夫か?顔色が悪いぞ。」


目の前の男もおれの顔色が悪くなっていたので心配で声をかけてくる。


「あ、はい・・・。ちょっと気分が悪いですが大丈夫だと思います。」


引きつった笑顔で返事を返えす。

そして、少しふらつきながらも地面に手をついて立ち上がると、その男も少し安心したようだ。


「おれはこれからガメヌの町に行くんだが、一緒に行くか?」


どうやら近くの町まで乗っけていってくれるようだ。

ってかガメヌってどこ?日本じゃないのここ?いつの間に国境越えたんだ?パスポート作って無いんですけど・・・。不法入国?なんかやばいことに巻き込まれたのか?どうする?どうする?

記憶の喪失、それは正常であれば起きない現象である。

原因としては、飲酒、睡眠不足、過度のストレス、頭部への衝撃によるもの、病、痴呆症、薬物の過剰摂取、何らかの記憶操作と、今思い浮かべられるのはこんなところか…。

酒は弱いので自分が記憶が無くなるほどの飲酒を自らするはずもない。ってかそこまで飲めない。

睡眠不足、ストレス、病気、薬等は無いな。平凡で平和な日々を送っていたからな。

と言うことは頭部への衝撃によるものか、何らかの記憶操作か…。

どちらも手がかりがないから真実はわからないな。

くそ!やばいな。全く状況が解らない。ってか記憶操作って映画とか漫画の見すぎか…。まあ、ここにいてもしょうがないから移動したいが…。信用しても良いのか?

男の向こうには馬一頭と荷物がたくさん詰め込まれた馬車がみえた。

町に何か売りにいくのだろうか?服装と雰囲気からすると、農業してる人みたいだな。一応連れてってもらうか。しかし、警戒は怠るなって感じかな。


「どうする?そんな感じじゃ町まで歩くのは大変だろう?馬車に乗ってきな。」

「じゃ、お言葉に甘えさせてもらいます。町までお願いします。」

「なんか兄ちゃんの言葉使いはお上品だな。どっかの貴族様とかなのか?」

「え?いや、普通の家で生まれましたけど…」


初対面のしかも年上であろう人に対して敬語になるのは自分にとっては当たり前の事だったので突然貴族という言葉が出てきたのでびっくりしてしまった。


「う~ん。そうか。俺はディックだ。よろしくな。」

「は、はい。おれは亮、土屋 亮です。よろしくお願いします。ディックさん。」

「ツチヤ リョウ?珍しい名前だな。それに苗字があるなんてやはり貴族なんじゃないか?」


また貴族か…外国でも苗字くらい普通じゃないのか?周りは森の様な感じだし、田舎の方はそういうものなのかな?


「貴族じゃないですよ。おれの国では苗字を普通の家でも付けるようになったんですよ。国が管理し易いようにだったかと思います。」

「へーそうなのか。えーっと・・・」

「土屋が苗字で亮が名前です。亮と呼んでください。」

「苗字が先にくるのか・・・。わかった。よろしくな、リョウ。おれのことはディックでいい。さん付される柄じゃないからな。」


おれはディックさんに促されて馬車の荷台に乗り込んだ。

荷台には手作りの籠や、動物の肉や皮、果物などが積んであった。

小麦とか農作物が積んであるのかと思ったがそれらしきものはなかった。

う~ん。農家じゃないのかな?


「そうだリョウ。これお前のだろう?」


ディックが黒い手持ち鞄を放ってくる。

おれはそれをキャッチして鞄を見てみると。

あ、仕事の鞄だ・・・。ということは休みに来たってことではないのか・・・

よくよく考えると、自分の服装がYシャツ、スラックス、革靴とまるっきりサラリーマンである。


「そうです。ありがとうございます。」

「リョウは服装も持ち物も変わってるなー。」


そう言うとディックは御者台に向かった。

おれは鞄をあさってスマホを出して時刻を確認すると朝の8時過ぎだった。

う~ん。朝か。当然圏外だよな・・・

スマホの画面に表示されてる電波状況を見てため息をついた。

そういえば仕事帰りに足元が光った様な…あれのせいか?

驚いて気絶したのだろうか?それともあの光には意識を断つ効果があったのだろうか?

日付を見ると昨晩の事の様で、12時間くらいたっているようだ。

ん?なんだこれ?

鞄の中に白い子供の竜と、魔法陣の付いたストラップが出てきた。

あ、女子高生とぶつかった時に入り込んじゃったのか

優希と呼ばれていた女の子が友達にあげていたストラップを思い出した。

これ返さなきゃかな?・・・いや、まず帰ることを考えた方が良いか・・・


「出発するぞぉ!」


ディックが出発を告げると馬車が動き始める。

うおぉ!結構揺れるんだな

スマホの画面で時間を再び確認して、スマホの電源を切り鞄にしまった。

舗装されてない道を走る馬車の揺れる荷台で、「あ、これ酔いそう」と思いながら町へ向かうのであった。




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