プロローグ
ガタン・・・ゴトン・・・ガタン・・・ゴトン・・・
電車の中でスマホで小説を読みながら帰宅の途中であった。
時刻は午後8時ちょっと前くらいだ。
仕事から帰ってくるのはだいたいいつも同じ時間帯だ。
自宅の最寄りの駅に一番早く着ける池袋からの快速に乗りながら何時もの様に集中している。
「次は―――。―――。」
目的の駅に着く前に小説の区切りがつき顔を上げ辺りを見回すと4割近い人がスマホを見ている。
何気に電車の乗客のスマホ率を調べるのが好きである。
本気で統計を取ってるわけではないので、これが多いのか少ないのか今一解らないが・・・。
30歳を過ぎると世間の流行りというのに疎くなるものなのか、スマホに換えてからまだ半年くらいしか経っていない。
下車する駅に着いたので網棚に乗せていた鞄を取って手に持つと、人の流れに沿って扉を出る。
急行は止まらないが、結構な人が下りる駅である。
ホームに降り、階段を上って改札に向かうと前に高校生らしき男女4人組がいた。
「ちょっとこれ見てよ。かわいくない?」
「かわいいですね。何個買ったのですか?」
「5個よ。お姉ちゃんにもあげようと思ってね。」
髪が肩までの長さで切り揃えてある活発そうな女の子が、黒髪でロングヘアーの清楚な感じの子と話している。
手にはキーホルダーらしき物を持っている。
「残りの3個はどうすんだ?まさか4つもいらないだろ?」
「健はしらないのか?マニアは、保存用、鑑賞用、予備用、そして使用のために4つ必要なんだぞ。」
女の子達の後で一緒に歩いてた二人の男の子も話に参加してきた。
「そうか…優希はマニアだったのか。」
健と呼ばれたイケメンの男の子は感慨深げに話を聞いていた。
「ちょっと武志!いい加減なこと言わないでよ!」
短髪で髪を立てている武志と呼ばれた男の子に対して焦った声で反論していた。
武志はニヤニヤしながら、
「悪かったよ。それルーンドライブのやつだろ?竜の下に付いてるのはパーティー組む時の魔法陣か?」
「む、よく知ってるわね。でも、魔法陣は召喚の魔法陣よ。パーティのはこのキャラには付いてこないのよ。」
優希が自分の目の前に持ってきたキーホルダーは、白い子供の竜が一つとその下に魔法陣のプレートが付いたものだった。
「皆にあげようと思って、人数分買ってあるのよ。」
そう言って3人に同じものを1個ずつ渡していく。
「ありがとうございます。」
「ありがとう。」
「サンキュー。」
それぞれがお礼を言い改札に向かって行く、優希も改札に向かおうとしたが躓いてしまう。
ドンッ
「あ、申し訳ない」
「すみません。」
おれと優希がぶつかってしまった。
改札に向かう進路上に優希が入ってきたのだ。
「大丈夫?」
「はい。大丈夫です。すみませんでした。」
元気良く返事をして最後に頭を下げてから、既に改札を出ていた友達の所に走って行った。
良い子だったな。しかもかわいい・・・
笑顔で見送っていたが、はっとしていそいそとおれも改札を出る。
さっきの子達とは出口が反対なので駅からの帰り道で会うことはないだろう。
駅のロータリーを抜けてマンションの間を通り抜けしばらくすると静かな住宅街に変わっていく。
道は途中から上り坂になり、若干歩く速度が遅くなる。
坂の途中に神社があり鳥居が見える。
ぼーっと顔をそちらに向けながら歩いていると突然足元が光始める。
驚いて足を止め、足元を見ると光の魔法陣が回転しながらだんだんと大きくなっていく。
その魔法陣から光の柱が天を突きぬける様に発生し、暫くすると魔法陣が縮まっていきそれに伴い光の柱も細くなっていく。
完全に魔法陣と光の柱がなくなると、そこには誰もいなくなっていた。