2-1
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皆様に心からの感謝を。
少しでも楽しんでいただければ幸いでございます。
ようやく2日目です。
カルチャーショックの二日目、とものすごく以前に書いたあらすじには書いてありますが、どうでしょうか?
そしてものすごく長いですごめんなさい。
2ー1
朝、がきた。
それは自分の周りで人の動く気配がするから。
でも目が開かない。
闇の神が私をつかんだまま離してくれないから。
すーーーーーーー。
人の気配を感じながらももう一回闇の神の腕の中に戻ろうとする。
「いっつもこうなの?」
なんか男の人の声がするな。
小兄様かなあ。でもなんか違うかな。聞いたことある声なんだけどなあ。
すーーーーーーーーーーー。
「そうなんですよ、リック」
あ、アンナだ、やっぱり朝なのか。なんで寝るとすぐ朝になるのかな。
でリックって誰?
すーーーーーー。
「可愛いなー。」
上掛けから少しでているのか、つむじを触られる感触がする。
くすぐったーい。ツンツンしないでー。
すーーー。
「触っちゃだめですよ、一応嫁入り前なんですから。」
止めるアンナの声もなんか笑い混じりなんだけど。
それにツンツンうるさーい。
もっと眠らせてー。
私は上掛けに頭の先まですっぽりと潜り込んだ。
すーーーー。
「なにこの可愛い小動物」
人の枕元で爆笑するなー。
あれ?
「だから触らないでください」
いつもならアンナの容赦ない、上掛け奪い取りで起こされるはずなのに、今日はもう一人の声がする。
この声、だれだっけ?
すーーーーーーーーーー。
考えようとすると、またアーリア神の手が伸びてくる。
「姫様、神王様のまえで、上掛けはがされたくなかったら今すぐ起きてください」
え?誰だって?
「だ・・・誰?」
「神王さまですよ、今は近衛のリックですけどね。」
なんだ、夢か。
「姫っていつもこんなに寝起き悪いの?」
人聞きの悪い。夢でも言いたいこと言うんじゃないわよ。
エルリックめ。
「そうなんですよ、リック、どうにかなりませんかね。」
アンナも、相手しなくてもいいのに。
今日はたまたま、いや、いつもだけど。たまたまってことにしてくれてもいいと思うんだけどな。
「や、寝起きはワタシの管轄じゃないし。アーリアに今度逢ったら聞いとくよ」
え?マジ。よくなるのかな寝起き。
「本当ですか?よろしくお願いします」
そこまで聞いてようやく目が覚めた。
「アーリア様に頼めるなら、頼んでよ、エルリック。」
目覚めるなり、すぐにそう言ってエルリックにたのんでいた。
寝起きの悪さは昔からの大問題なのです。
たのんで貰って少しでもよくなるなら、頼みたいくらいです。
心から。
「あっはっは。これで起きるなんて・・・・・・・・」
そう言ったまま、おなかを抱えて大笑いするエルリック。
ひどい。乙女の寝起きみて、爆笑とか。
私が、エルリックにむっとしていると、アンナが私にガウンを着せかける。
それにモゾモゾと腕を通す。
「姫さま、これから湯浴みを」
着終わったところで、アンナが声をかけてきた。
「うん、なんか体中からアブラがしみでてるみたい」
昨日の食事があぶらっぽかったしなあ。
それに風呂行こうと思ったら、宰相閣下がきたしなあ。
結局お風呂入るより、アーリア神の手の方に先につかまってしまったしなあ。
「わかりますわ。」
アンナが少し顔をしかめた。
もしかして侍女クラスにもあの油まみれ塩まみれ料理なの?
うわー。
「リックはご遠慮くださいね」
寝ぼけたままアンナに手を引かれて浴室の入り口まで来たところで、
まだ、笑ったままでついてきたリックにアンナが釘をさす。
「はいはい。さすがにそこまではしませんよ。しかし、姫は飽きないねえ」
涙を拭いながらいうんじゃない。
まだ笑ってるし。
なんか悔しい。明日はちゃんと起きよう。
いや、起きられるようにがんばろう。
うん、頑張れるんじゃないかな、きっと。
うん。
昨日の汚れと眠気をお風呂でさっぱりとさせた私は、ようやく頭も通常に動くようになった。
うん、今日も一日がんばるぞ。
「あー、もういつも通りじゃん、つまんないなー」
近衛の制服に身を包み、いつもより美形度8割減(それでも格好いいのが悔しい。)なエルリックが風呂から上がってしっかりと午前中用のドレスを来て出てきた私をみて言った。
「えーと、今度は何の遊びを思いついたの?エルリック?」
昨日私が寝てからなにがあったんだろう。
「姫様、このたび御側付きを拝命いたしました、アルシェス近衛騎士団所属、リック・アーリーズ少尉です、よろしくお見知り置きください。」
ぴしっとそこで敬礼をよこした。
まったく、この神王はなに着せても似合うんだから、いらいらするわ。
「アーリーズ少尉よろしく頼みます」
私はそう言って、右手をすっと差し出した。
ひざまずいてその手の甲に軽くキス。
まあ騎士の礼だけどさー。
美形できちっと礼儀をわきまえた人にやられると、中身が神王だって解っていたって、ときめいてしまっても乙女だから仕方ないわよね。
「ねえ?少しどきどきした?ねえ?姫」
そのあとのコレさえなければ、私の初恋は1日じゃ終わらなかったのに。
私は10歳の私が神王に一目惚れして、その夕方にはしっかり淡い恋心にさよならを告げた日をふと思い出していた。
この人はやっぱり神なんだ、ってね。
「さて、昨日は途中で寝てしまってごめんなさい。
あれからどうなったの?」
アンナに聞いた。
「まず、朝のジュースとミルクをお飲みくださいな、姫さま」
そう言って、居間にある机に誘導する。
そこにはちゃんと暖められたミルクと搾りたてのジュースがおいてあった。
「ありがとう。」
私はそこに座ると、目の前のいすを神王、じゃなかった近衛士官リックに勧めた。
「で、どうなったの?エリオットは?どこに行ったの?」
私はそばにいるはずの兄の姿を探した。
「いま説明するよ、姫」
そういうと、リックが昨日の夜の話し合いを説明してくれた。
「なるほどね。私は毎晩捜査の報告を受けられることになったのね。
で、私は自分の結婚式と戴冠式に専念できるわけね。」
暖めたミルクのカップを手で包みながら、そういった。
「でもさすが酪農の国よね、ミルクおいしいわ」
そう言って、手の中のミルクの味の良さに感動した。
「違うよー。姫
それ、ワタシが持ってきたの。神国から。」
そう目の前の男が何事もなかったかのように告げた。
ちょ、ちょっとまって。
これ、神国のたべものなの?
簡単にたべちゃっていいの?
神国自体、ほぼ伝説の国で、所在さえ曖昧なのに、そこの農産物?
神国にも牛いるの?え?ちょ、まって。
私は手の中のカップを思わず見つめてしまった。
「だって少しここに滞在するね、って侍従神官に連絡したら、山ほど食材贈ってよこしたんだよ。一人じゃ食べきれないし、エレンに調理任せればおいしいもの食べられるし。
実際おいしかったでしょ?姫。」
「おいしい。ッデス。」
でもでもでも・・・いいのか?
「じゃあ問題ないよ。なにもね。」
そういってにっこり笑う。
この笑顔に何度押し切られたことか・・・。
「姫さま、覚悟を決めて開き直ってください。
あたしもそうしました。」
アンナが少し固い声でそういった。
うん、考えてもしかたないし。おいしいからいい、ってことにしよう。
「うん、私はなにも聞かなかった。コレはアルシェスから持ってきた食材ね。」
そういって、手の中のカップからミルクを飲み干した。
「そうです、姫さま」
「そうだよ、姫」
この二人にかかったらどうしようもない。
それはもう5年前から解っていたことなんだし。
「で、ここでの式のやり方なんだけどどうした方がいいとおもう?」
ミルクを飲み終わり、ジュースにてをのばしながらそうリックに言った。
きっとこのジュースの原料も、とおもったら緊張するからあえて考えない、考えちゃだめ。
「そうだね。姫はどう考えているの?」
私はリックにまず基本はフェルナータの形式を踏襲しつつ、たぶんあんな長くて形式に固まった式にこの国の人(特にザッチョ)が耐えられないだろうから、少しは省いてみたらどうだろうか、と提案してみた。
「うん、ワタシもそう思うよ。姫。」
そういって、リックは自分のグラスにジュースのピッチャーからもういっぱいジュースを注ぎ足した。
「よかった」
神王がそういうなら、基本的な方針は間違っていないんだろう。
ああ、よかった。
具体的にどの式を削っていくのか、相談しようと思ったそのとき、
リックが紙の束を出してきた。
「そう言うとおもって、昨夜、作っときました」
昨日タンジールの宰相閣下たちがおいていった紙には、ほぼ真っ黒になるほどの書き込みがなされている。
「え?」
それをみて、びっくりした。
その書き込みの字は私の筆跡にそっくりだったから。
「これくらいできますよ。なんて言ったって、神王ですから。」
そういって胸を張る。
書き込みを読むと、昨日その式次第をもらってから思ったことがそのまま書き込んである。
「ええっ」
私はその紙と神王を交互にみながら、ここまでして貰っていいのだろうか、とそれだけを考えていた。
「大丈夫。大丈夫だよ。ちゃんと侍従神官を通じて神国の神殿長にも確認とったし。コレは理にふれない。」
神王はこの世界に直接の影響を与えてはいけない、という大原則がある。
それは神王に逢ったときにまず最初に言われたことだ。
だから、神王と直接言葉を交わせたとしても、世界を手に入れたことにはならない、と。
そんな力いらない。私は私の抱いた疑問に答えてもらえればそれでいい、とそのとき答えた。
神には神の決まり事があるらしい。
それを破ると、神王でさえいろいろな罰をうけるらしい。
それを知っているからこそ、私は神王、その力に頼らないんだ。
だって、神王の力がなくても生きていけるように私たちはできているのだから。
「本当に?大丈夫なのね。」
私はそれでも確認せずにいられなかった。
「うん、これは、君の思ったことを文字にしただけだから。ワタシの意志は介在していない。よって手助けにしかならない。」
リックはそう答えた。
「ありがとう、リック」
「うん、どういたしまして。」
私たちはそういってほほえみを交わしあった。
「姫さま。そろそろお時間でございます」
そういってエレンがはいってきた。
「ええええええっ。なんでエレンが二人いるの!」
「あ、言うの忘れてた。うっかりワタシが名前呼んじゃったから、エレンの分身が元にもどれなくなっちゃったんだ。だから今日からエレンは双子で、もう一人はエリンね。姫」
あっさりとリックがそういうと、リックの眷属であるエレンたちはにっこりと私にほほえんできた。
そっくりすぎて判別できない。
「う、うん。で、リック。見分け方はどうすればいいの?」
私が戸惑いながら聞く。
「さあ?ワタシにもわからないから、名前呼べばいいんじゃない?」
「いい加減すぎる」
私が頭をかかえると、その頭をそっとリックの大きな手が包んだ。
「細かいことだし、二人とも姫のそばにおいておくことは変わらないから、安心して」
ぽんぽんと頭をたたく。
「いいんですか?」
上目遣いにそう聞く。
「いいから、そうしてる」
そうほほえむ。
「では、姫様。参りましょうか。」
そう言って腕を差し出したときには、先ほどの神王がまとっていた気安い雰囲気はどこへやら。
すっかり近衛士官の顔になっていた。
わたしも息を吐くと、その腕にそっと手を預ける。
「行きましょう」
小さな居間から出ていくと、タンジールの王宮警備の軍人が待ち受けていた。
目でその武官に誰何する。
「わたくしは、タンジール宰相であるメラン公付きの武官でカリバーンともうします。姫のご案内を申しつかって参りました」
そう言って礼をとった。
私はかるくうなずいた。
それを合図に、リックが口を開く。
「案内を頼む」
リックがそう武官に言う。
「失礼だが、貴殿は?」
おいおい、どうみたって近衛士官だろ。
すこしは丁寧語をつかわんか。
「アルシェス近衛少尉、リック・アーリーズだ。姫の護衛を拝命している」
リックの態度が硬くなる。
そりゃそうよね。
向こうが敵愾心むき出しならこちらもそうしないと。
「失礼した。では先導させていただこう」
え?それだけ。
もう一度名乗らないの?
どうなってるの、この国は。
そういって、そのカリバーン武官は、なんとリックの前を通路の端によって歩き始めた。
私の前にはだれもいない。
「姫の前を歩け。」
リックがいらついたように、そうカリバーンに告げる。
そりゃ、リックは神王だから護衛がその前にいてもおかしくないけどさ。
この場において警護対象はわ・た・く・し。
私の前にたってくれないと、弓とかでねらわれたらどうすんのっ。
「は?」
武官はなにを言われているか解らない、とでも言うように足を止めた。
「武官は何かあったときの盾であろう?
姫の前を歩くものだ。コレだから・・・」
リックが語気をあらげる。
そして二人がにらみ合い始めた、これじゃ仕方ない。
内心ため息をついて、口を開く。
「リック。おやめなさい。郷に入っては郷に従いましょう。
この大陸ではどこの国に行っても、貴人の前後に護衛武官がつくものですが、しかしタンジールではそうではない、ということだけの話です。
何かあったら、そなたが私を守ってくれるのでしょう?」
リックをしかるように聞こえるが、その実は「タンジールは国際的な礼儀もしらないのだから我慢なさい」と嫌みをかましているのである。
「は、命に代えましても」
そういってリックは私が預けた手をとってキスを落とす。
芝居とはいえ、気分がいいわあ。
「では、案内だけお願いしましょう。」
私はリックから視線をはずさずに、そうリックに告げる。
「姫がそうおっしゃっている、早く先導せぬか」
リックは火に油を注ぐかのように、語気をつよめた。
「は。」
そういって、今度はカリバーン武官は私の前を歩く。
ええええ。そうキタか。
「姫の前にたつな。先導だけなら、本官の前でよい」
リックがそうカリバーンをたしなめる。
「は、はっ」
なにがなんだか解らない、というように、また元の位置にもどった。
さっきの会話を要約すると。
*礼儀どころか護衛の仕方を基本さえ知らないような人たちね。
*護衛の役には立たないでしょうから、リックが全面的に守ってちょうだい。
ってことです。
これもわからなかったか・・・・。
今度から直接的にわかりやすくしよう。
そんな礼儀漫談をやっているうちに、朝食室に付いたらしい。
「こちらです。」
そう言って、カリバーン武官は脇によけた。
が、一向に扉が開かない。
私たちは閉じた扉の前にたたされた。
これって、「社交辞令で呼んだだけなのにくるなんて、ばっかじゃねえの」って言われているってことでしょうか?
でも迎えきたし。
でも官位も告げてないな、カリバーン。ってことは
「無冠に先導されてきてばっかじゃねーの(笑)」ってこと?
私は血の気が引いた。
「帰ります。こんな仕打ちを受けるなんて」
私はそう言ってリックを見上げた。
「姫に対して失礼な。帰りましょうすぐに。」
リックが、私の手をもって来た道をとって返す。
案内してきた武官が視線を泳がす。
なんで私たちが怒っているか解らないのだろう。
こんな仕打ちを小国とはいえ、一国の王女にしておいて、なにとぼけてるのっ。もう信じられない。
こんな初歩の嫌がらせに引っかかるなんて、私としたことがっ。
泣きそうになるのをぐっとこらえて私は平静を装ったまま部屋に少し急ぎ足で向かう。
「お待ちください」
しまっていた扉から人が飛び出してきた。
昨日逢った、ロマンスグレーの宰相閣下だ。
「ご無礼つかまつりました、後ほど下のものをよくしかっておきますので、どうか、部屋の方に。」
宰相位にあるものが、直角に近い礼をとっていることに、近くにいた武官たちが目を見張っているのがわかる。
「もしかして私はみなさまの礼儀講座からやらねばならないのかしら。
アルシェスでは登城してきたての少年兵でもこんな無礼はありませんわ。」
もしかして、嫌がらせじゃなかったの?
本当になにもしらなかったの?
こんな基本でさえ、知らないってあり得るの?
私は、リックを見上げた。
「粗野でございますので、姫にはご不快なこともあると思いますが、その都度おしかりくださいませ」
宰相がなおも食い下がってくることをみると、本当にただの礼儀知らずだったのだろうか。
ここまでしといて、また部屋であざ笑うつもり?
一回試してみるか。
「おやおや、大国のタンジールともあろう国が小国のアルシェスに教えを請うのですか?」
私は、そう告げた。
「は?」
なにとぼけてるのよ。
「我が国王が、なにかと解らぬことも多いだろうからと、我が国の典礼官を私に先行して派遣しようとしましたところ、「小国に聴くことなどない」というお返事をいただいたのですが」
ええ、腐ってもフェルナータの末裔を詐称するくらいなんですから、併呑した国の典礼官をあつめて、フェルナータ風位の礼儀を維持してるのかとおもったのよ。
私が甘かった、ってことか。
120年の間にあのフェルナータの礼儀を受け継ぐものは消え去ったってことなのね。一度、フェルナータの騎士パレードみてみたかったのにな。
「それは、どちらからの返事なのでしょうか。」
宰相がおそるおそる口にした。
「あら、もちろんタンジール国王陛下ご自身からのものですわ」
その私の返事を聞いたとたん、宰相閣下が頭を抱えてよろけた。
あっ。宰相閣下っしっかりして。
貴重な見るに堪えるロマンスグレーが失われてしまうのは困るんです。
お酒が入っている状態で書きましたので、誤字脱字が多いかと。
後から修正すると、思います・・。お気づきの点ありましたらご指摘くださるとうれしいです。
ご指摘くださった皆様とお酒がイケる口の方にはPC上でカンパイさせていただきます。
イケない方には、神国特産桃源郷のモモジュース(ピーチネクター)でカンパイさせていただきます。