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間があいてしまいました。

ヨーロッパの国のマナーもその国によって微妙にちがうんですよ。

ちなみに日本は英国準拠、ちょっとロシア入り。だそうです。




さて、とりあえず挨拶も終わり、楽しいお食事タイムの始まりです。

色々視線を感じるけどそれはまあ、ほおっておこう。

色々ストレス感じるとご飯おいしくないしね。

 

それでも私はさりげなく周囲を見回しながら料理を口に運ぶ。

ウチの国はここよりも温暖で海洋国家でもあるので、

それまでのこってり系煮込み料理よりも素材の味を生かしたシンプルな料理法がはやっている。

しかしこちらでは素材の問題などもあってそうもいかないのだろう、手の込んだこってり系ものが多い。

味が濃い、塩味がきかせないない分油分でこってりと料理されていることが多い。

いや、コースのうち1つとか2つならまだ食べられるけど。

まず、チーズふんだんにかけた温野菜サラダ(つまりグラタン一歩手前)。

次が川魚の素揚げ、あんかけソース(つまり油味)

次がメインのお肉。なんでこんなに厚く切った!って感じの焼いて塩かけただけのもの。

ここまで来て私の胃は悲鳴を上げた。

ただでさえコルセットで絞めてるのに、入るわけないじゃないのっ。


おなかにたまってしまうし、口の中がなんか油っぽい。

お酒で流し込むザッチョにはこれでいいかもしれないけど、あたしにはきついわ。

お肉を頑張って三分の一くらい口にしたところで、そっとカトラリーを置く。


給仕が寄ってきたので、相談してみることにした。


「わたくし、まだお酒はたしなみませんの。口をすっきりさせる飲み物などありますかしら?」

乾杯のとき少しだけ傾けたグラスを示して、お水を要求する。

給仕は一瞬固まってから頭を下げてそそくさと下がっていった。


水はウチよりいいはずだし、楽しみ。

早くお水~~~~~。

口が粘っこいよ。塩っぽいし。



さて、次のお料理がくるまでは観察を続けるかな。

私の近くに座ってらっしゃるご婦人方のドレスのデザインは、と。

ウチからみたら3~4シーズン遅れ。

私が10歳のお披露目の時に着たドレスとそっくりなドレスを着た妙齢な、というか年増のご婦人がいらっしゃる。

べ、別に自慢じゃないが、あのデザインは幼児体型の10のこどもだから似合うのであって、

もう社交界デビューを果たしたお姉さまが着るものじゃないと思う。

はっきり言って痛い。

また隣の娘が着ているのはそのとき姉様が着ていた顔立ちがはっきりした美人限定(まちがっても私じゃドレスに負ける)のデザインだし。

はっきり言って似合ってないなあ。せめて色だけでももっと自分に合う色にすればいいのに。


他にも私や姉や母様のドレスをコピーした人がおおいなあ。

なんか恥ずかしい。

しっかし、これをドレスメーカーのリリが見たら卒倒しそう。ってか片っ端から剥いで説教だな。

リリは今どこにいるんだろう。

一応私の侍女としてつれて来たけど、もしこんなところ見たら凄いことになりそうだわ。


そして、心のメモ帳に『リリには舞踏会を見せないこと』という文言を刻んだ。


しかし、お水まだかなあ。


ぼんやりと、しかし微笑を絶やさぬまま、私は観察をつづけて、お水の到着を待っていた。


「姫、食が進みませぬか?」


そういってダメ出しメモをせっせと心に書き留めている声をかけてきたのは、ええとさっき紹介された、だれだっけ、ああ宰相閣下。


「いえ、わたくしお酒をたしなみませんので、お水をお願いしたところなんです。お料理は本当においしゅうございます。」

そういって微笑み返す。

まさか油っぽすぎておなかいっぱいともいえないし。


「ああ、姫。気がききませんで、申し訳ない。」

そういってそばの給仕を呼びつけると、水の催促をしてくれた、いい人だ。

少なくとも王子よりは気が利くな。

そう思ってチラリとザッチョ王子をみると、やはり自分勝手に飲み食いしてる。

もういい、お前には期待しない。


「さて姫。」

あれえ、社交辞令でおしまいじゃないの?


「正直にお伺いしたい。」

やだなー。ご飯のときに真剣な話するとまずくなるじゃん。


「典礼の姫と呼ばれて名高い姫から見てこの国の作法はいかがだろうか?忌憚なく言っていただきたい」

えー。やだー。

一番最初に思ったのはその一言だった。

本当に忌憚なく言ったら、外交問題に発展しそうなくらいなダメ出しできますよ。

それでもよろしいのかしら。

まあ、外交に差しさわりのない程度で嫌味を交えて、くらいかねえ。


「そうですわね。

淑女の皆様方がわたくしを歓迎する意味で、わたくしの以前のドレスデザインのものを着ていただいているのに感謝いたしますわ。

特に、王子殿下とのご婚約がなりました10歳の時のドレスなど懐かしくまたその皆様のお優しい気持ちがうれしいですわ。

また、紳士の皆様方のお作法は、お血筋から考えますと、北方の古の大国フェルナータの儀礼にそっているものと思っておりましたら、お皿の並べ方などわが国と似ておられる。

また、晩餐会の進行などは、どちらかといえば、わが姉の嫁いだ西の国のようですわね。

結婚式や戴冠はどのような典範でおやりになるのか、お聞きしたいものですわ。

それによってドレスも違ってまいりますし。どうおやりになるのでしょう、早くお聞かせくださいませ? ねぇ宰相閣下。」


と答えてあげた。

問題になるほどきっつい事は言ってないよ。

ウチの典礼部なんて私の顔見ると逃げ出すのもいるよ。

そいつは長続きしねえけど

そして、一気にまくしたててのどが渇いたので潤そうと近くにあった、グラスを取りあげて飲もうとして酒精のにおいに顔をしかめた、そうだ、まだ水ないんだっけ。とグラスをテーブルに戻してすこし遠ざける。


「…姫?」

そういって宰相閣下が私に話しかけてくる。

気が付くと、さっきまでざわついていた会場がシーンとしている。


「お水はまだかしら?わたくし、のどが渇きました。」

給仕が控えている方に声をかける。

壁際に控えていた給仕の半数が脱兎のごとく出て行った。

一杯でいいんだけどな。


「それで、宰相閣下。どういう段取りですの?

というか、式の主役である王子殿下はまあ、軍服ですみますからいいですけど。

わたくしの場合、支度に時間がかかりますのよ。

こちらにきてからこのような大事をお知らせくださるなんて、わたくしその場にそぐわぬ衣装で式典に出席して、恥をかかせて『典礼の姫などと呼ばれていても、あの程度だ』などと近隣諸国にいわせるおつもりで?」


そういって手元の扇をパチンと鳴らすときっちり四分の一だけ開くと口元に持っていった。

そして宰相にだけ聞かせるように小声で。

「正直わたくし、塩持って実家に帰らせていただきたいですわ。

わたくしが10歳の時のデビュッタント・ドレスのコピー着てるの貴方の奥方ですわよねえ。

なんかの羞恥プレイですの? てか御幾つですの?奥方。」


そうして、扇を口元からはずしてにっこり笑った。

「宰相閣下?段取りの方はいかがですの?」


「ここでご説明すると折角の晩餐がさめてしまうほど長くなりましょう。

後ほど詳しいものにご説明にあがらせますので、そちらに詳しい話はお聞きください。」


本当はここで追い詰めてあげてもよかったんだけど、さすがにそこまでしたら悪いしね。

私は矛を収めることにして、ぱちんと扇をたたんだ。


「楽しみにしていますわ。あと10日しかないんですもの。

式次第とか手順とかもきっちり決まっていて教えていただくだけで済むのですわよね。

当然。」


「御前、失礼いたします。」

そういってロマンスグレーのソフトマッチョの宰相閣下は下がっていってしまった。

私的にはザッチョ王子よりも好みなだけに残念だわー。


すこし顔色悪かったようだけど、だいじょうぶかしらー。

そろそろ無理のきかないお年頃のようにお見受けしました。

好みなタイプだけに長生きしてくださいましね。



「失礼いたします」

そういってやっと私の目の前にお水が置かれた。

それもグラス5つも。


こんなに要らないわ。

なんか違うのかしら?

「あ、ありがとう」

引きさがる給仕にお礼をいう。


そしてまた3つのグラスが差し出される。

なんかこの水違うの?

それとも意地悪ですか?

並んだ8つものグラスを一つ一つ確かめながら慎重に口をつけるグラスを選ぶ。


そして一番きれいなグラスから水を飲んだ。

なんだただの水じゃん。

あの温泉宿で飲んだ水、美味しかったなあ。

そのうち運ばせるかな。


ふぅ、やれやれ。

まだコースは半分か。

私のお腹に入るんだろうか?





最近この話を「しっかり姫とザッチョ」と呼んでいる自分がいます

でも姫まだ15歳なんですよー!

しっかりしろザッチョ。ってか最近名前がうろ覚えに(´ー`A; )

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