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ようやく晩餐会の開始~~~
基本は日本の宮中晩さん会の様子をもとに書いております。
間違っていたり、適当なところもあると思います。
しかし、ザッチョとツン姫で「あまあま」になる(予定)がどんどんずれて・・・
私の差し出した手を立ちあがった王子サマがとる。
その手を支えにしたように立ち上がる私。
でもね、本当の淑女は全体重を相手に任せたりしないのよ。
ふんわりと体重の三割位を相手に預けて立ち上がるのさ。
淑女は、自分で立ち上がれるだけの体力を持っている、細マッチョが基本ですわ。
もちろん柔らかいところは柔らかく、ですけれどね。
私が立ち上がるのを見計らったかのようにファンファーレが鳴り響き、晩餐会場への扉が開かれる。
さあ、正式なお披露目の始まり始まり。多分完全アゥエイだけど、頑張るよ。
開かれた扉の先は今宵のための大広間、晩餐会仕様になっているはず。
ってことはこの国がどういう感じで公式の場をしつらえているかわかるってことよねー。
まあ基本は3パターンだからそこからバリエーションをかませるかどうか、がセンスの見せどころだよねー。
この国はどうもてなすつもりなのかなあ。
晩餐会会場には、聞いた話では二~三百人のこの国の貴族。
それに近隣諸国の大使の姿。
私の提示した10コニの間にある程度の情報は彼らに伝わっただろうか。
まあ、どこの国も諜報活動はしてるだろうから、ある程度の情報はつかんでいるんだろうけれど。
私はその中をしずしずと進みたかったんだけど!
私の手を引くこのザッチョ王子サマがズッカズッカ大股で歩くもんだから、こちらは小走りになってしまった。
小走りだって優雅に歩いてるように見せますわよ。
それぐらいできなくて、どうします?
この戦馬鹿、少しは女に気を使え。
エスコートもできなくて前のヨメはよく我慢したな。
もしかして、扱いが荒くて繊細もしくは病弱だった先妻さんは儚くなっちゃったのかしら。
てか、この行動はもしかしなくてもさっきまでの控室でのイヤミへの意趣返し?
だとしたら王子サマ。相当ガキくさいわー。
あっという間に主賓の席に着く。
ゆったりと手を放し・・・・とかおもったらザッチョ、振り切りやがったよ。
こんな衆人環視のなかで、こんな心のままにふるまっていたら格好の噂話のエサになるじゃねーか。
ま、それならそれで。
必殺『実家に帰らせていただきます』か
小柄で年より幼く見られがちのこの容姿を利用して『王子サマが苛める』『大きすぎて怖い』とか震えて見せるのもいいかな。
表面を取り繕えなくて損するのは、どちらにしろザッチョ王子サマだしー。
さて、まず、ワタクシ達の婚約を祝うスピーチが両国代表からあり。
そのたびに乾杯。にっこりとほほ笑んで皆様に御挨拶。
なるべくバカっぽく、幼く、そしてトボケて見えるようにね。
そしていよいよ。
大問題の王子サマからの御挨拶。
まさか、この王子サマ、スピーチできないとかないわよね?
その可能性に目の前がちょっと暗くなった。
スピーチ用の原稿を取り出すのかとおもいきや、
残念なマッチョの王子サマはそのまましゃべり始めた。
おいおい、譬え暗記しているとしても、カンペ位用意しようね。
今までの大使達だってカンペチラ見しながらやってたでしょうが。
彼らの立場考えてやんなよ。
ってかコイツ、もしかしなくても俺様属性なの?
なんて面倒くさい性質なの!
はらはらしながらそのスピーチを聞いた。
王子サマは非常に偉そうに上から目線で婚約の祝いの礼を述べることからスピーチは始まった。
____まあ、国内中心の席だし。合格すれすれ、六十五点。
_____両国の末長い平和と繁栄を・・・・祈らないの?
______いきなり、戴冠式を同時開催を発表かい!
_______各国大使に国元への連絡を要請。
______________もう代表団国元出発しちゃって間に合わない国もあるとおもうんですけどー。
ダメダ・・・ダメダコイツ。
比喩ではなく本当に傷み始めた頭を抱えそうになりながら遠い目で、国元のお父様・お母様を思う。
とうさま、かあさま、ワタクシやって行ける自信がありません。
帰ってもイイデスカ?
そんな物思いにふけって、魂を実家の両親のもとへ飛ばしていた私が現実に引き戻されたのは、未来の旦那様がいきなり乾杯!をやらかした時のこと。
こんなにぼんやりしていなければ止められたのに、と悔やむ。
冷たい目線を隣の未来の旦那様に名流す。
もう、点数・・・どんなに甘く点つけてもマイナスなんですが。
しきたりもなにもあったもんじゃないわ。
仮にも「王室主催」の「晩餐会」でこんなグダグダが起こるなんて!
こうなったら何としても、あと9日でマナーやしきたりをこの戦バカに仕込んでやるわ。
『典礼の姫の名に賭けても!!』
私は心の中で握りこぶしを握った。
あと9日。
もう少し洗練された晩餐会を結婚祝賀の際には開いてみせますともさ。
乾杯が終わったところで、私は席につくと、ペンと紙を取り出してせっせとテーブルの下でメモを取り始めた。
必要なもの、宮廷での付け焼刃でも構わないからの教育。
最初のメモはそう書きつけられた。
私の手元が見えるのは隣に座った王子サマだけ。
その王子様は私に背を向けて、私のすることなんてどうでもいいという不貞腐れた態度でお酒をかっくらっている。
酔って醜態をさらさなければどうでもいいです。
私の邪魔だけはしないでくださいね。
さて、リネンの新調の確認・・カトラリーのチェック・・・ご婦人の洋服のダサさもなんとかしないとね。
軍服・モールとかもちゃんと人数分あるのかしら?
いざとなったらウチから連れてきた兵士を使いましょう。
あとは魔法使いに連絡をとって、無理でも色々転送してもらわなくちゃね。
あ、この国に転送の魔法陣・・・あるのかしら?
にこやかにあいさつに答えながら私の両手は食べるよりももっぱらメモに費やされた。
ザッチョ、サイテー。
が姫の印象。
なんだこの小うるさい小娘は。
が王子の印象。
ほんと糖分はどこに・・ごめんなさい・・・