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お気に入りに入れていただいたり、POINTもありがとうございます。
何よりも励みになります。
さて、ご招待する時、席次や招待する人を絞り込むのは大変です。
最近はマナーやしきたりを軽視する方も多いですが、その決まりごとがどうして今まで受け継がれてきたのかとか考えるのも新しい視点を手に入れるチャンスだと思います。是非色々調べてみてくださいね。
「では、殿下。私を式典の責任者にしていただけないでしょうか?」
私の口から滑りでた言葉に自分でも少しびっくりする。
でも、考えてみるとそれが一番いい方法のような気がしてきた。
騎士の肩にすがりながら身をゆっくりと起こす。
そして、なるべく目に力を入れて王子様に訴える。
その滑り出た私の思いつきの言葉に私を支え起こしてくれた騎士が一瞬ちょっとだけ身を固くする。
「ごめん。あとで説明するから、お願いまかせて。」
私は彼から身を放す瞬間こっそりそうささやいて先ほど作ったメモを肩当てと方の間にさしこんだ
「ありがとう。カルロ。今頃旅の疲れが出たのかしら?少しめまいが。」
そう言って勢いをつけて身を放した。
そして支えてくれた礼に微笑む。
「いえ、間に合って何よりでございます、姫。
お加減の方は大丈夫ですか? 晩餐会を中止にしていただいたほうがよろしいのでは?」
本当に心配そうに私の前に膝をついたままカルロがそう進言した。
その手はまだ私の肩を軽くつかんだままだ。
それなのに彼の視線は私ではなく隣の王子にくぎ付け。
なんか周りの気温が下がったような気がするんですけど。
もしかしてにらみ合ってる?私からはみえないんだけどー。
「大丈夫よカルロ。まだ始まるまで時間もあることですし。」
そう言って彼から身を少し放した。
私は多分にらみ合ったままの二人が放つ空気がどんどん冷えて行くのが怖くて、とりあえず間に入ってみたんだけど、なんか余計冷えた気がするよ。
二人にそれぞれ視線を投げかけると二人からにらみ返された。なんで?
ちょっと状況が呑みこめずに困っていると、後ろからスッと扇が差し出されるとともに優しい声がかけられた。
「姫様。」
アンナがそう一言声をかけてくれたので、ほっとして微笑みながらアンナを見る。
ありがとうアンナ。視線に感謝を込める。
そして、アンナから差し出された新しい扇を受け取った。
その扇を優雅に音もたてずに開いて、口元に持っていく。
「しかして、殿下。おまかせいただけますの?」
言葉を選んで、それでも優雅さと無邪気さは失うことなく威厳を込めて。
ふんわりとした微笑みを目にしっかりと宿して。
しかしその口調は毅然と。
”断れるもんなら断って見やがれ。”という思いを込めて。
ぶっちゃけ言わせてもらうと、曲がりなりにも自国で『典礼の姫』とまで呼ばれた私が。
こんな典礼の初歩の初歩も知らない国がみすみす目の前で私を巻き込んで大失態をやらかす片棒を担ぐのはまっぴらなの。
近隣諸国だって、私にお伺いの手紙をよこすことだってあるのよ?
みっともない結婚式や戴冠式なんかやらかしたら、評判ガタ落ちのうえ後ろ指さされるかもしれないじゃないの。
この王子サマのマナーもなってないし。
このままこの人が国王となって外交儀礼がちゃんと出来るとは思えないのよね。
すくなくとも私がこっぱずかしい思いをしない程度には取り繕っていただかないと。
とりあえずは、この10日で。
「もしお断りになるようでしたら、きっと私より式典その他諸々に精通していらっしゃるのでしょうね。是非ご紹介いただきたいものですわ。」
にーーーーっこり。
覚悟しとけよ。王子サマ。
典礼の姫と国内外でお世辞やおべっかで呼ばれていたわけではないんですのよ。
「あ、私の指示を聞いてくださる官吏ももちろん、付けていただけるのですわよね?」
そう駄目押すと、広げた扇を一瞬でたたむ。
そして、今気がついたかのように、魔時計に目をやる。
「あら、丁度10コニ経ちましたわね。晩餐に御案内いただけますか?」
そう言ってすっと手を差し出した。
悔しそうに睨みつけたところで、そんなもん何の役にもたちませんわ。
交渉は駆け引き。
剣よりも口先のほうが強いこともあるのですから。
あらあら、空のグラスを握りつぶすなんて。
私の王子サマは、なんて野蛮なんでしょう。
20歳の男子(子持ち)が15の小娘に言い返せないのはつらいだろうね。
ごめんね。王子様。次回は王子様のターン・・・になるといいね。(希望的観測)