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1-7

色々資料を読んでいたらよけいに頭が混乱しました。

戴冠式・結婚式の資料は本当に読んでいて楽しいのです。



「あの、殿下。お伺いいたしたいことがまだまだたくさんあるのですが、続けてもよろしいですか?」

私はふわふわに重なったシフォンチュールのドレスのひだの中からメモ用紙と簡易ペンをとりだした。

初めての晩餐会のしきたりの違いをメモするためにもってきたんだけど、今使わずにいつ使う!的なものになってしまった。こっそりメモポケット作ってもらってよかった。

ドレスメーカーのスーリア夫人には、

『普通なら化粧道具入れとか、ハンカチ入れ、サッシュ入れとかの可愛い隠しポケットの依頼だったり、アヤシイところでは護身用ナイフ入れとか、百歩譲ってあんなこんな薬入れとか、をドレスに仕込んでくれ、って言うならわかりますけど。姫様。メモ用紙入れとインクが染みださないようなカバーとか・・・。ホント色気も素っ気もない依頼をくださいますわよね.』とため息交じりに呆れられたものだが、作ってもらって本当によかったわ。


もう外聞なんてかまってられるか。

あと10日で人生の一大イベントを2個同時にこなさなくちゃならない上、ここは完全アウェイ。

右も左もわからない場所ときたもんだ。

誰に何を頼めばいいのかもわからないし、そもそも私に指揮権が少しでもあるのかもわからない。

そんな場所で、諸外国の要人の目の前で失態なんかできるものか。

国元じゃ、典礼の姫とか呼ばれて、何かしら行事がある時の女性のドレスコードの基本とも言われたくらいで、そのためにいつも誰よりも一番に式典用ドレスも発注しなくちゃならなくて大変だったんだから。

そんな私が、場違いでハズしたドレスなんかで式典に参加なんかできません。

私のアイデンティティの問題なんだから。


断れるものなら断って見ろ。塩とともに荷車に乗ってでも帰ってやる。

そんな決意をまなざしに込めながら王子に対した。

こうなったら多少のマナー違反は目をつぶらなくちゃね。

結婚前の男女が同じイスに腰掛けているだけでもすでに十分、マナーに反しているんだし。


王子はゆったりとグラスを揺らしながら私にうなずいて見せた。

なんだコイツこの優越的な態度は、本当はオマエが一番あわてなくちゃいけないんじゃねーの?

内心むっとしながら声には出さないように質問を続けることにした。

かんしゃくを起こすのはいつだってできる、いまはこの状況で少しでもいい方向に持っていくことができるように行動しなくちゃ。


恥をかくのはコイツだけじゃない。

私や国元も恥をかくことになるんだし。

もし少しでも恥をかくようなことがあったら聖堂前離婚してやる。

頭の中でものすごい悪口を目の前のマッチョ王子につきつけながら、私は曖昧な微笑みを浮かべて王子に質問することにした。



「この国のしきたりについて知らないことが多いのですけれど、戴冠式とはどのようになさるものなんでしょう?

我が国では神国よりそれなりの神官殿をお呼びして戴冠してもらい、近隣にも知らせをしたりしてかなり盛大にやるもの、ときいておりますけど。そういうしきたりに詳しい官職のかたとかはこの国にはいらっしゃいませんの?

ぜひお会いして、この国のしきたりなどきちんとおうかがいしたいんです。殿下に恥をかかせたくはございませんので。できれば本当に今すぐに。」


「今すぐ?そんなにいそぐのだ?なぜ?」

王子はそのたれ目から繰り出される視線は睨みつけてるようだけれど、お預け食らった犬のように首をかしげてるところでその威力は半減しとるわ、必要だからに決まってるだろう。


「私も式典の当事者です。それも戴冠式のときは殿下のおそばにいなくてはなりませんでしょう?

慣れない進行で失敗して恥をかきたくはありませんもの。」

すくなくとも式次第が詳しく知りたいんじゃ。式次第の内容を見れば大体なに着ればいいか見当がつくんだよ。おしえろや。この鈍感ザッチョメンめ。


「ああ、それなら心配することはない。」

なにそれ。たってりゃカカシでもいいってことですか?

私が首をかしげていると、また近距離で爆弾が落とされた。


「しきたりなんてものは、この国にはないからな。だからしきたりに詳しい官職などおいてない、あえて言えば父上母上か。」

それを聞いたとたん、目の前が暗くなった。


なんですとー!


視界の60%位が暗くなった。久しぶりに倒れると思った。

前のめりにぐらつく、ヤバイ。


「姫様」

ふらついた私を支えてくれたのは目の前のマッチョではなく、侍女のアンナと一緒に駆けつけてきた、騎士団長。その腕の中で彼にだけ聞こえるようにひとことささやくと私はゆっくりと身を起こした。

途中で、隣の王子殿下を一瞬睨みつけた。

このザッチョ。役に立たねえ筋肉ばっか付けやがって。隣に座ってる女一人ささえられねぇのか。


どんどん私の中で未来の旦那様に対する点が辛くなっていくのはなぜでしょう。





どんどん姫様の口が悪くなっていきます。

どうしてなんだろう・・・・。

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