prologue:1 side:姫
このお話は最初SNDM(寸止め)48という仮のタイトルをつけておりましたが。
あまりにもなタイトルなので変えてみました。
内容は仮タイトルまんまのコメディもどきです。
少しでも楽しいと思っていただければ幸いです。
はじめまして伊達ししいと申します。初投稿作品になりますがよろしくお願いします。
一応R15にさせていただきました。
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王家に生まれたからには果たさねばいけない義務があることはわかっていた。
同じ年の乳母のリリナの娘アンナとはともに育ったが、
私はいつもイイものを食べイイものを着せられている。
つまりそれが身分の差であり、その差は唯この身が王家に生まれついたという理由でしか生まれてこないことも。
私は4歳くらいのころに気がついてしまったのだ。
それでもまだ私は気楽である、大兄さまは長子として生まれついてきたがゆえにこの国を背負って立たなければならない。
中兄さまは大兄さまの政務のサポートをこなし、何かあった時のスペアとして大兄さまにお世継ぎが生まれるんで毒にも薬にもならない様に目立たず存在している。
小兄さまは軍事に適性を見出されたようで日夜鍛練に励まれておられ、軍のTOPとして立てるように、努力されておられるけれど、スペアは2つもいらないので、もうすぐ臣下に下らなくてはならない。
実の兄を兄とも呼べなくなり、そのうえ兄に膝をつかなくてはならないのだ。
お姉さまはこの間、東の隣国へ嫁いで行かれた。
その後2~3カ月に一度便りは送られてくるが、姉さまのいつもの快活な文章ではないところを見ると、妹姫に出す手紙でさえも自由にならない生活なのだろう。
お手紙通りお元気でいらっしゃることを願うしかない。
私はそんな王家の5番目に姫として生まれついたのだ、今まできれいなドレスを着て贅沢な暮しをおくり、何不自由なく暮らせたのも何かの時に役に立つから、以外の理由は思いつかない。
そして私の何かの時は13歳のときにやってきた。
お庭で王妃であるお母様とお茶をしているときだった。
お父様が来て、こういったのだ。
「姫や、お前の興し入れ先が決まったよ」
私は一瞬目を見開いたがまるで天気の話でもしているかのようにこう聞き返した。
「まあ嬉しい、陛下。それで私の旦那様はどちらの国の方ですの?」
その日から2年。15になった私は不安を抱えながら嫁ぐ国に向かう馬車に揺られている。
「どんな方なのかしら?」
私は晴れた空に向かってそうつぶやいた。
この馬車に同乗するのは我が国の侍女であるアンナとかの国のお迎えである、大臣のクラクス―様。
車輪の音にかき消えるように囁くようにしてつぶやいたのだから、この質問に対する答えなど望んでいなかった。
私が知っていることと言えば、3つだけ。
隣の軍事大国ダンジールの世継ぎ王子、フィジョン様と言うお名前。
御年が私より5歳年上の20歳になられるということ。
そして、私が2番目の正妃であるということ。
前に王妃様でいらした方は、出産で命を亡くされたあげく、お生まれになった方も姫様であまり体がお丈夫でないとか。
まあ、そうでもなければ、なんの利用価値もない隣の小国の末姫なんかもらいませんよね。
別に隣国まで鳴り響く美姫ってわけでもないですし。
私の役割その一は、その姫様のお相手と養育。
その二は言わずと知れた、お世継ぎ作りだけどねー。
うちの父様は愛妾を持たず、母様だけでも子供が5人。
子供が出来やすい家系だと思われて、そこが望まれた最大の理由ということらしい。
ま、いいけどねー。
フィジョンさまにはただいま絶賛お付き合い中の愛妾様がいらっしゃるので、
理由その二になってます。
理由その三は、まあ政治的なこと。
私の国は小さいけれど海に面しておりまして。
タンジールから流れ込む大河、トイサ河河口の港を所有しております。
その上国土はそれなりに温かく、作物も割ととれまして、輸出もいたしております。
また海のないタンジールへの最大の輸出品は塩。
タンジールがウチに攻め込まないのはその国境が高い山脈がそびえ立っており、
唯一ひらけたところは川沿いの湿地帯で馬での行軍もままならないから、ですし。
それだけの労力をかけて支配するだけの理由もないということで、同盟国扱いなのだ。
タンジールからの保護並びに同盟関係の強化のあかしとして興し入れ、ということになってます。
ま、花嫁行列のあとに塩を担いだ馬が続いていることで想像してください。
まあそんな感じで、タンジール側から「しお姫」なんて言われてることも知っておりましてよ。
まあ、王族同士の結婚なんてこんなものです。
できればフィジョンさまがあまりブサイクでなく、変質的な性的趣味のないかたでありますように。
そう晴れた空に願いをかけてみる。
昨日国境を越えて、王都まであと3日。快適である馬車でもやっぱりちょっと腰が痛い。
侍女やお付きの騎士たちはもっと痛いんだろうなあ。
ごめんね、付き合わせて。
今日の宿場には温泉があるらしいよ。
ゆっくりしてね。一回熱でも出そうかな。
そうすればもう一泊位休めるよね。
熱くらい自由に出せなくて、王族なんて務まりませんのよ。
ここで臣下を休ませる理由を作るのも姫としての務めですわよね?
だってわざわざ行程に温泉保養地が入っているのは、そういうこと、ですわよね?
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お相手の王子様は次に出てまいります。
楽しんでいただけるようがんばります。