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真白の折り鶴

作者: さとさとの
掲載日:2026/01/11

七十年以上前、


原爆で病気になった女の子が


「元気になれますように」と願って


包み紙で鶴を折り始めた。


女の子はまもなく天国に行ってしまったけれど、


世界中の人々は平和を願って


鶴を折ることを止めなかった。



私は八才の真白ちゃんに作られた折り鶴だ。


学校の授業のとき、


桃色の折り紙で折ってもらった。


真白ちゃんは自分の折り鶴だとわかるように


白色の折り紙で切り取った小さな花を、


しるしとして私の羽に付けた。


たくさんの生徒に折られ、


鶴はやがて千羽になった。


平和を願って折られた鶴は、


糸で通されながら束ねられ、千羽鶴になっていく。


私は糸で通されるとき、羽が折りたたまれて


白色の花が見えなくなったけれど。



私はこの街の平和を願う公園の、


原爆で亡くなった女の子の像のそばに


ささげられた。


公園には世界中から届けられた


色とりどりの折り鶴でいっぱいだった。



時々、困ったことがあった。


いろんな国からやってきた折り鶴たちが


私に話しかけてくる。


言葉がわからないからおしゃべりできない。


けれど、みんな笑顔だから、私も笑顔になる。


歌を歌う子もいるから、私も一緒に歌う。


真白ちゃんのいる街で、


私はいつまでも楽しく暮らしていくつもりだった。

 


この街には毎年数え切れないほどの折り鶴が届く。


街はすべての折り鶴を


長い間大切にあずかってきたが、


置くところもなくなり抱えきれなくなっていた。


折り鶴はどんどん古くなりボロボロになっていく。



ある日、仲間たちが次々と


公園から倉庫に運ばれていった。


折り鶴のひとつが泣きながら私にたずねた。


「ぼくも、時間がたったら捨てられるの?」


「いいえ、捨てられたりはしないわ」


「じゃあ、どうなるの?」 


「生まれ変わるのよ。ノートや便せん、折り紙にも


なるわ。とうろうとかアクセサリーにも」


泣くのをやめた折り鶴の顔が、パッと明るくなる。


「君は何に生まれ変わるの?」


「わからないわ。自分で決められないもの。


でも、何になるか楽しみなの」  


 

この街の人々は、


折り鶴をどう生まれ変わらせるか


一生懸命考えていた。


古くなった折り鶴は、


千羽の鶴の束からひとつひとつ、


この街の人々の手でとかれていく。


一羽ずつになった折り鶴は、


工場で折り紙の色を残しながらとかされていき、


再び紙として生まれ変わるのだ。


「私たちは、なくなったりしないのよ。


折った人の気持ちも、祈った人の想いも」



真白ちゃんに折ってもらってから、


たくさんの時間がたった。


私もそろそろ折り鶴ではいられないかもしれない。


紙の体が痛んで、


きれいな桃色もくすんでしまった。


心配なのは、白色の花が外れてしまうことだ。


このしるしがなくなったら、


真白ちゃんに見つけてもらえないかもしれない。



雪がふって風が穏やかだったある日、


私は風に頼んだ。


「真白ちゃんに会いたいの」


すると、


風は雪を巻き込みながらとても強くふいて、


千羽の束から私を外してくれようとした。


けれど、うまくはいかなかった。


他の子たちが飛ばされそうになったから、


私はもういいよって首を横に振った。


なみだが一粒こぼれたとき、


私の羽から白色の花がはらりと落ちた。


風は約束してくれた。


「花を真白ちゃんに届けるから。かならず」 


風は地面に落ちた白い花をすくって、


雪の中ふわりと舞い上げた。

 

もう雪なのか、


花なのかわからなくなったけれど、


雪がきらきら光るから、


大丈夫だって声が聞こえたから、


きっと真白ちゃんに届くって信じることができた。




桜が葉桜になった頃、


この街で平和を願う花のお祭りが行われていた。


風が私のしるしの白色の花を運んだのは、


ある女の子のところだった。


その子はお祭りのパレードで


ダンスを踊る準備をしていた。


髪に付けられたバラの花は、


折り鶴の再生紙で作られた女の子の手作りだ。


様々な折り紙の色が散りばめられた花びらの中に、


風が私の白い花を置いていったこと、


女の子は気づかない。



音楽が鳴った。


先頭の女の子たちが踊りながら進み始める。


「真白、行くよ!」 


友達に呼ばれて、女の子は髪の花飾りを整えた。


女の子はパレードの中で誰よりも輝きながら、


光がはじけたような笑顔で踊り始めた。




 


読んでいただき、ありがとうございました。

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