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第2話 姫その5

 俺は納得して、立ち上がり、アイラのいる一階の食堂へと向かった。彼女は先に朝食を済ませていた。店員に同じものを頼んだ。朝食を食べて、最後にコーヒーを飲んだ。飲み終えたことを確認したアイラは、俺の横にいる魔物を指をさして尋ねた。


「その子は例の神器のカードから出た魔物? 可愛いらしいわね。名前はなんて言うの?」


 俺は「ダンド」と答えた。アイラは深いことを聞かずに残っていたコーヒーを飲み干した。俺も残っていた朝食を急いで食べた。部屋で荷物を整理して、いよいよ出発する時が来た。


 アイラが言うには、まず隣の国に行くとのこと。ここからは馬車での移動で、街の外には魔物だったりモンスターがうようよしていて、危険ではないとは言え道草を食う時間はないという。馬車には魔よけの魔道具がついているらしい。その効果は、大抵の強さの魔物であれば寄せ付けないが、効果が強すぎるために、それ以上の強さの魔物になると逆に引き寄せられるという特性があるという。手続きが終わって俺のもとへ戻ってきたアイラはまた苦い顔をしていた。


 この短時間で人と話すたびに、苦い顔を五回以上見ている。俺は、彼女の呪いの影響が、まだ続いているのではないかと勘ぐった。タクシー乗り場ならぬ馬車乗り場で荷台に乗せてもらい、揺れに身を任せ会話もないまま隣の国の国境付近まで近づいた。


先程、休憩を挟んだのにも関わらず、段々と馬車スピードが落ちてきているのが分かる。何があったのか俺は馬車から身を乗り出して前をみた。十数メートル離れた丘の上にオオカミのような群れが立ちはだかっていた。馭者(ぎょしゃ)はこのままじゃ通れないと嘆いている。


「どうすればいい? アイラ」


「そんなのあなたが倒せばいいじゃない。何事も経験よ。魔法はたぶん使えると思うし。何かあったら私が何とかするから。」


そんなアイラに俺は最初は正気を疑ったものの、これから先このモンスターよりも強いのが現れるのであれば、ここでひるんでいる場合ではないと自分に活を入れた。


(魔法を使うイメージは出来ている。だが、いまいち気分が乗らない。)そう思った俺は、気分を上げるため、ダンドに大きなラジカセにトランスフォームしてもらって音楽をかけてもらうことを思いつく。ダンドに視線を送るとそのことに瞬時に理解して、トランスフォームした。


戦う曲は陽気でおどりたくなるパーティソングだと決め、魔法を使うことは初めてで出し方は分からない。そのため昨日やってもらったことははじめの一歩にすぎない。アイラに「1番簡単な攻撃魔法は?」と問いかけ、「ファイヤーボール」だと教えられた通りに唱えると、両手には火の玉がゆらゆらと出現した。


魔物どもはやる気に満ち溢れていて、今にでも襲いそうな顔をしている。曲がサビに来ると同時に攻撃を仕掛けた。ファイヤーボールといえど狼のような獣には有効である。


音楽が始まったと同時に右手に装填済みのファイヤーボールを一匹の狼に当てた。仲間意識だったのか、目の色が変わり次々へと俺に噛みつこうとした。


俺は華麗なステップで獣を避けつつファイヤーボールを繰り出した。緊張で何も動けないよりかははるかにマシと自分に言い聞かせていたが、獣たちの痛みに苦しむ声が、殺してしまったオーヴェルニュのことを思い出して、手が止まった。と同時に音楽が止まった。


なろう系などのフィクションでは、平気な顔をして動物たちを倒すように描かれているが、今目の前で起こっていることは、実態は命を殺しているに過ぎない。その事実に気づき、俺が攻撃を止め、我に返った時にはもう遅かった。魔物は目の前で襲いかかる寸前だった。


誰かに服を引っ張られ、尻もちをついた。痛みで少し目を閉じて、徐々に開いた。俺の前に立つ人を見上げると、アイラが魔物をぶった切っていた。


「初めてにしては上出来。あの攻撃の仕方、少しおぼつかないところはあったけど、踊りの舞みたいで綺麗だったわ。ここからは私に任せて。」


その言葉を聞いて俺はすぐさま馬車の後ろに身を隠した。アイラは俺に向かって


「私にも音楽頂戴。」


軽く頷き音楽を流せるよう深く集中した。途中で止まっていた音楽が再び鳴り出した。彼女は腰から剣を抜き出し、獣たちを次々と倒していった。俺は彼女の舞のような洗礼された動きに魅了されていた。


俺が気づいた時には音楽が終わる前にすべて終わっていた。感動したのだろうか拍手を彼女に送っていた。アイラはその拍手にとても困惑していた。それは、俺が舞台が盛大に終わって、感動に満ちあふれている目をしていたからだ。拍手が鳴り終わってから疑問をぶつけた。


「これは、芸なんかじゃないわ。なんで拍手するの?」


「あまりにも、綺麗だったから、、、」


その言葉にアイラは、動揺を隠せなかった。何年ものあいだ邪悪なネックレス型の魔道具に苦しめられて、人から褒めてもらうことなど思いもよらなかった。しかし、その感動も少しの時間で収まった。

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