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第2話 姫その3

 「はぁ~」アイラはため息をついて立ち止まり、初めて真正面から俺の顔を見た。「そんなことしないわよ。わざわざ召喚の儀式で苦労したことを無にするなんて馬鹿げてる。逆に私が王様に殺されるわ。」


 「まぁそれもそうか」と口にして、俺は安堵の息を漏らした。そして、別の疑問を口にした。「それでずっと質問したかったことがあるんだ。魔法ってどうやって使うんだ?自分の力として使えるようになりたいんだ。」


 アイラは少し驚いた様子を見せた。彼女の眉が一瞬上がり、その表情が少し柔らかくなったように感じた。「宿でね」と短く答え、再び歩き出した。


 やがて彼女は横に長く伸びる三階建ての建物の前で足を止めた。「竜亭」という看板が掛かっている宿だった。中に入るとカウンターで手続きを済ませた。アイラは銀貨一枚だけを支払う。その金額が少ないと感じ、ちらりと料金表を見やると、それはまさしく一部屋分の料金だった。疑問に思った俺は、思わず声を上げた。


「おいちょっと待てよ。まさか二人一部屋か?」


 「何か問題?」と、彼女は涼しげな笑みを浮かべた。その表情に、どこか意地悪そうなものが感じられ、俺は思わず身構えてしまう。「女性一人で旅をするのは危険だし、何より、あなたに魔法を教えるなら近くにいた方が便利でしょう?」


 一体、彼女は俺に何をしようとしているのだろうか。警戒心と期待が入り混じる複雑な感情を抱えながら、俺は黙って頷いた。代金を払ってカギをもらい、二人で階段を上って部屋に入る。部屋は広くはないが清潔で、窓からは街の景色が見えた。ベッドが二つと机が一つ、小さな暖炉もある。質素ではあるが、居心地の良さそうな宿だった。彼女は奥のベッドに腰掛け、向かいに座れとジェスチャーをした。俺は緊張しながらもう一方のベッドに座った。


「それで? 魔法の使い方だよね、教えてほしいのは。」彼女はまっすぐに俺の目を見て尋ねた。


 緊張しながらも俺は同意の返事しかできない。姫が夜の密室で一人きり、しかもベッドの上で向かい合っている。教えるという名目で何かロマンチックな展開になるのではないかという、俗っぽい期待を抱いている自分がいることに気づいた。しかし、アイラの純粋に真剣な表情を見て、その期待は一気にしぼみ、自分の邪な考えが恥ずかしくなった。


 アイラは姿勢を正し、俺の前に座り直すと、片手を伸ばして俺の額に人差し指を置いた。その指先から微かな温かさを感じる。


「まず目を閉じて。イメージして、自分の体の真ん中に火の玉のようなゆらゆらと動いているものがわかる? それが魔力の塊。すべての生き物が持っているけど、異世界から来たあなたはまだ眠っている状態なの。」


 瞑想するみたいに目をつぶって言われた通りにしてみた。最初は何も感じなかったが、深く集中していくと、胸の奥で何かうごめいているような感覚が捉えられた。それは小さく、かすかだったが、確かに存在していた。俺は答えるように頷いた。


 「良い感じね。」アイラの声が少し柔らかくなった。「多分何事もないだろうけど、痛かったらごめんなさい。今から私の魔力をあなたに流す。それであなたの中に魔力回路が出来て、魔法が使えるようになるはずよ。」


「痛いの?」不安が俺の声に滲んだ。


「人によるわ。でも大丈夫、私が調整するから。」アイラは再び額に指を当て、もう一方の手で俺の手を取った。「深呼吸して、リラックス。」


 俺が息を吐き出した瞬間、体の芯に熱い電流が流れ込んでくるような感覚があった。それは徐々に回路のように広がり、指先から足の先まで、全身を巡っていくのを感じた。痛みはなく、むしろ体の奥から力が湧き出るような心地よい温かさだった。

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