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問1.転生

 和寿の野郎、もし生き残れたらぜってぇぶっ殺してやる。


 思い返して見ればクソみたいな人生だった。いや、自分自身が作り上げた地獄のような人生という方が正しいだろう。

 あたかも、環境や他人が作り出した人生ではないことは理解しておかなければならない。


 母を殺して弟を養うために就職するという手だってよく考えたらあったわけだ。

 生まれた環境をいい訳にしてはいけない。


 くだらない優越感と、鬱屈した家庭への怒り。

 それを晴らすべく、他人をオモチャにする。

 そんな日々を、俺は生きる意味だと勘違いしていた。


 結果はこの通り最悪だ。


 2人もの命を死に追いやっている。


 一人はなんとか助けたけど、弟はもう助からない。


 どうしたらいいかなんて分からない。

 正解を導き出す方法もない。

 めちゃくちゃうぜぇ。





☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★





 うわ、眩しい。


 生きてるってことか。

 というかまだ生きてやがるのかこのクズは……


 目の前には2人の男女と女の子の姿が映っていた。


「★☆★☆♪★☆?」


「☆★☆★☆★◯」


 この人達は何語を喋っているんだ?

 英語や中国語とかなら、観光客から耳に入ることはあるし、なんとなく発音の雰囲気で何語かくらいなら分かる。

 けどこれは聞いたことがない言語だ。


 ここは病院なのだろうか。

 病室にしては広すぎる気がする。


 日本では治療が困難だったのだろうか。いや、そうに違いない。

 鉄パイプで顔面を殴られた時点で重傷だろうし、それ以上に10m以上の高さから地面に叩きつけられたのだから全身はズタズタだろう。

 そして、何ヶ月も眠っていてやっと目が覚めたと言ったところだろう。


 その以前に誰が俺の治療費を払ったのだろうか。

 家族は2人で、弟は死んだし、母は絶対に金を使わない。1円でも手元にあるなら自分が遊ぶために使うような人だ。

 俺のために使ったためしなんてない。

 和寿達には裏切られたし、和寿達が払ってくれたとは考えにくい。


 まぁいいや、後々分かるだろうから今はこの状況をなんとかしたい。


「★☆▽★☆▲△✕◯」


 本当に何を言っているか分からない。

 日本語は通じるのだろうか。

 このまま黙っておくのも気まずいし、申し訳ない。


「いぃぅ、ざぁあだ」


 は?


 貴様ら誰なんだよ、と言いたかったのに、唸り声しか出なかった。それもなんだか自分の声ではないし、甲高い気がする。

 プライドが邪魔して、開口一言目が喧嘩売りに行くところだったので運がよかったのかもしれない。


 柵のついたベットで3つの顔が俺を覗き込んでいた。

 触角の長い黒髪の美女に、銀髪のマッシュショートの男、女の子は黒髪のボブより少し長いような髪型。

 よくもこんな美男美女が揃ったな。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 3ヶ月の月日が過ぎた。

 どうやら俺は生まれ変わったらしい。

 抱き抱えられながら鏡に映った自分を見て、ようやく理解した。


 めんどくせぇな。


 正直人と関わっていくことがめんどくせぇ。

 生きているといくことは誰かしらと関係を持ち、相手のことを知っていかなければならない。

 そうしなくては、また同じ道をたどってしまいそうだ。


 3ヶ月前は全く分からなかった言語はようやく理解できるようになってきた。発音はできねーけど。


 最初に目に入った3人は家族だということが分かった。

 二十代前半の男女は両親で、女の子の方は姉らしい。

 親にしては若いな、と思った。

 俺の母は、40歳中盤くらいの年齢だった。はっきりとした年齢は覚えてないが。


 両親はいつも忙しそうだ。

 共働きで、よく家にはベビーシッターがやってくる。

 悔しいが赤ん坊1人じゃ飯を食うことも、ケツを拭くこともできない。首だって支えてもらわないと折れてしまう。

 ベビーシッターの存在は俺にとって必要不可欠な存在であることは間違いない。


 そして、ここはどうやら日本じゃないらしい。薄々勘付いていたけど。

 ベビーシッターに抱えられた時に見える窓からの景色は、赤いレンガの屋根が並んでいて、まるでヨーロッパの街並みを見下ろすようだった。

 車は通っているけど、古臭い。

 電気は通っているけど、薄暗い。


 というか、普通母親の母乳をもらって育つ年齢じゃないのか?俺は……。

 期待はしてなかったけど、残念な気持ちになった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 半年の時間が過ぎた。

 めっっっっちゃ長く感じた。

 中学から高校に上がるまで一瞬だったのに、半年が3年くらいの感覚だった。

 若いと時間の流れが遅く感じるのは本当だった。すげぇ。


 半年経って、ハイハイの移動ができるようになった。

 動き回れるようになったおかげで色々なことを知った。

 この家は割と貧乏なのかな?と思っていたけど、普通ぐらいらしい。いや、たぶん普通より若干裕福なくらい。


 部屋数は4部屋。

 結婚したら同じ部屋で寝るもんだと思っていたけど、以外にもこの両親はそれぞれの部屋で寝ている。

 仲悪いのかな……。


 ベビーシッターのリラは両親と仕事関係のようで、任務がどうとか言っていた。


 ドアの鍵が開く音がして、父が帰ってきたと足音で分かった。


「フィンの調子どう?」


「目を離したらすぐにどこかに行ってしまうわ。変じゃない?あの子」


「確かに……泣いたところを見たことないな」


 そんな会話をしていた。

 普通なら泣く時間と寝る時間が大半を占めるこの年頃では確かに変だ。

 生まれた瞬間から一度も泣いたことはない。

 演技でも泣いておくべきだったかもしれない。


「おかえりなさい!お父さん!」


「ただいま、ミナ」


 姉のミナがスタスタと父のところへ行き、元気よく迎えた。

 姉のミナは、母ウルの遺伝子を多く受け継いでいるようで黒髪ロングの元気いっぱいの女の子。

 ノクターン家に金髪のヤツはいないのに俺は金髪を髪を有していて、取り違いか養子を疑うレベルだ。


「では旦那様、失礼します」


 リラは父に挨拶をするとそそくさと帰って行った。


 父と母の帰る時間は不規則だ。

 今日はたまたま父が帰るのが早かったが、今日は母の方が遅いらしい。

 めんどくせぇ家族だな。


 食事は基本的に父が作る。

 父と母で家事の分担が決まっているらしく、家事が次から次へと溜まっていくということがない。

 前世、父が生きていた時は母が専業主婦として家事をこなしていたが、これがかなり大変そうだった。

 それが父が死んだ瞬間何もしなくなるとは……


 そんなことを考えていると、父が食事を作り終えた頃に母が帰ってきた。

 ミナは父の時と同様、スタスタと走って出迎えた。


「おかえりなさい!お母さん!」


「ただいまです。ミナ」


 フラフラしながらご帰宅の母……相当お疲れのようだ。


「ウルさんお疲れ様です」


 落ち着いた笑みで母を出迎える父。


「レオンさん、ただいまです」


 この両親は変だ。

 お互いをさん付けで呼び合ってる。


「フィンさんもただいまです」


 それに母はミナのことは「ミナ」と呼ぶのに、俺のことは「フィンさん」と呼ぶ。

 嫌ってわけじゃないけど変な感じだ。


 父、母、姉で食事をしている間に俺は、両親の秘密を探るべく父の部屋に突撃した。

 父の部屋の前まで来れたのはいいが、ハイハイしかできない俺にはドアノブは高すぎて手が届かない。


「こぉら、何やってるんだ」


 俺の冒険譚はほんの数十秒で幕を閉じた。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 ようやく自分の足で歩けるようになったし、言語も話せるようになった。

 この時をずっと待っていた。

 なぜなら、両親の秘密を自分の足で探れるからだ。


 ミナは去年6歳になった。

 6歳という年齢は日本と同じで学校に通うことができる。

 日本と違うのは義務教育ではないということ。

 小等部からの入学をすると、中等部、高等部での入学試験を免除することができるらしい。

 ミナは点数はギリギリだったものの、面接試験で両親の対応力とミナの丁寧な言葉遣いが評価され合格したとのこと。

 全部盗み聞きした。


 ということで、両親は仕事に。

 姉は学校に。

 そして、リラが来るまで少し時間がある。

 この絶好なチャンスは逃してはいけない。


 生まれてから1年半程経ったが、結婚している割には初々しい2人の様子に違和感をずっと感じていた。

 それがようやく2度目の冒険で明かされるかもしれない。

 前回とは違って、背伸びでドアノブに手が届く。

 扉を開くとそこには、銃や剣が並べられていて、かなり物騒な部屋に思える。

 そういう趣味に金を使いたいのは分かるけど、これはやり過ぎだ。

 分かるけどね。かっこいいし。


「こぉら、だめでしょ?勝ってに入ったら」


「なんで?」


「危ない物がたくさんあるからよ」


 それは見れば分かる。

 けど、家族のことは知っておきたい。

 ミナは両親のことを何も思わないのだろうか。いつものほほんとしている。

 生まれた瞬間から無駄に知識と知恵を有している俺には、普通なことでもそれに理由を求める。

 それ以外にやることがないからだ。

 最近ようやく歩けるようになって疑問を解決するために行動しているが、両親のことだけは知ることを許されない。


 リラに聞くのが1番手っ取り早いかもしれないけど、『普通』をどこで知ったんだ?てなると思う。

 いや、考えすぎか?


「父様と母様の仕事を知りたくて……」


「そういうことね。お父様は最高のお医者様よ!診断の早さと正確さは軍の精密機器さえも凌駕してしまう程で治療技術はまるで人間には真似できないような……」


 何かごちゃごちゃ言ってやがるが、父は医者らしい。それが分かれば十分だ。


「なのに急に現れたと思ったらあの女……私のロイエル様を……絶対に殺してやるわ」


 爪をカリカリしながら文句を並べるリラに俺は白い眼差しを向ける。

 それに気付いたのか、「あら、ごめんなさい。うふふ」と誤魔化す。

 変な人……

読んで頂きありがとうございます!

生まれた環境は、言い方は悪いけど利用するもんだと思ってます。

ハイファンタジーにしてますけど、ローファンタジーよりかもしれません、キーワードを変えるかも?

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