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第十話 「夫婦喧嘩」

 ウルの妊娠が発覚した。


 ここ数年悩んでいたウルだったが、ようやく出来たことに大喜びしていた。

 それは、レオンやアランも同じだ。


 もう自分には子供が産めないんじゃないか、とため息混じりに漏らしていた。

 けれど、1ヶ月程前に味覚の症状から始まり、吐き気、倦怠感などの症状が現れた。

 コロナなんじゃない?と助言してみたが、何それ、と言った表情を全員が見せた。

 当たり前か。


 ノクターン家の食卓は次の子供の話で持ち切りだった。


 男の子かな?女の子かな?

 名前はどうしようかな?

 服も一応用意しておこうかな?


 俺はできれば妹がいいと主張しておいた。

 弟はたぶんすぐ死ぬ。

 変わらんか。


 酢を摂取したら男になりやすいとか、カルシウム多くとったら女になりやすいとかあったような気がする。

 忘れた。



 さてはて、どうしたものか。

 子供のこと、これからの将来について話し合っていたレオンとウルだったが、なぜか喧嘩を始めた。


「はぁ?この家の稼ぎはすべて俺のおかげだろうが!」

「ならあなたは子供の世話をしたことありますか?ほとんどないでしょう!だいたいなんでそんな無断なものにお金を使ったんですか?!」

「いやだから、これは俺の金を使ったんだからいいだろ!」


 どうやら、金銭的な問題らしい。

 ノクターン家はそれなりに遊び呆けても、山のようにある財産の砂粒程度ほどの減りにしかならないだろう。

 子育てや教育に影響は出ないと思うのだが、ウルにとって使い方が気に入らないのかもしれない。


 この夫婦喧嘩は早めに止めなくては飛び火が来る可能性が高い。

 レオンは元冒険者で、今ではこの領地の騎士代表とも言える存在だ。

 ウルは元暗殺者で、今は裏仕事からは足を洗っていると言ったところだ。


 この喧嘩が大きくなれば殴り合いにまで発展するかもしれない。

 やめてくれ。


 夫婦喧嘩は互いを愛し合っているからこそ起きるとも言える。

 ならそれをより強調して分からせる必要がある。


 俺は、レオンとウルが喧嘩している部屋に堂々と乱入する。


 ノクターン家はメイドを含め、この部屋に入ろうとはしなかった。

 当然、この雰囲気の中では仕事もまともにできないだろうし、

 アランも何かを聞けるような状況ではない。


「フィン、今は大事な話の最中なんだよ」


 と、ウルがため息混じりに俺を追い出そうとする。

 しかし、俺は下がらない。


「父様、母様、なぜ“そんなこと”で喧嘩するのですか?」

「次生まれてくること子が不自由な思いをするかもしれないからよ!」

「そんなことってお前……子供は大人の話に口出しするもんではないぞ」


 そこは一致するのか。


「確かに、お金の話し合いは大切です。けれどそれは喧嘩をするほどのことでもありません」


 2人して、は?何言ってんだお前、という表情だ。


「そこで僕から提案があります」

「どんな提案だ?」

「2人にはゲームをしてもらいます」

「「……ゲーム?」」


 おお?食いついてきたか?


「ゲームならアランとかとしてきなさい」


 いや、そういうゲームじゃないぞ?


「まぁまぁ、とりあえず聞いてください。超簡単なゲームなので……」


 2人は軽く首を傾げた。


「まずルールを説明します。

 2人は自分の大切なものを紙に書いて僕に預けてもらいます。

 そして、それを互いが1週間後に言い当てます。

 勝った方はノクターン家のお金のルールを決めることができます。

 負けた方は……そうですね。1年間お小遣い無しとかどうでしょうか」

「それは罰が重すぎるんじゃないのか!」


 と、声を上げたのはレオンだった。


「いいえ、そんなことはないでしょう。だってこれからの大事なお金のことを決められるのですよ?」

「そうですね……」


 ウルは納得し、レオンは少し不満そうだ。


「それとも父様はお金がないと困ることがあるのですか?」


 レオンは体をビクッとさせた。

 図星らしい。


 レオンの仕事をよく見ることが多いが、家族以外で特別仲良くしているのはパパ友くらいだ。

 男子会とかでやけ酒をすることもあるだろう。

 けれどそんな頻繁にするわけでもないし、レオンが奢ることもないと想像はつく。

 レオンは以外とケチな男だから。


 金持ちはケチってよく言うでしょ?


「まぁ、ということで良いですね!では大切なものを書いてください!」


 俺は2人に小さな紙切れを渡した。

 2人は迷わずに紙に『大切なもの』を書き、俺に預けた。


 紙に書かれた言葉を両方とも俺が想定していたものだった。

 思わずニヤけてしまう。


「ふむふむ……」

「質問なんだが」

「なんですか父様」

「お互いが言い当てれた場合と、言い当てれなかった場合はどうなるんだ?」

「言い当てれた場合は、もう一度やり直しましょう。言い当てれなかった場合は、延長ということで。まぁそんなことにはならないと思いますけど……」


 2人は互いに険しい顔をし、互いを怪しんだ。


「じゃあゲーム開始!」


 と、俺は手を叩いた。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

---レオン視点---




 その夜。

 フィンが俺の部屋に来ていた。


 扉がコンコンコンとノックされる。


「と、父様、フィンです」


 フィンは怯えたような声音だった。

 それに俺は驚きを隠せずにいた。


「え?あ、どうぞ」


 フィンは素早く静かに入った。


「父様助けてください、母様が……」

「どうしたんだ?」

「母様が、ずっと口聞いてくれないんです。「お父さんはあなたのこと愛してないのよ、私の愛が分からないなんて親不幸者ね」って言ってました。僕どうしたらいいのか分からなくて……」


 何に怯えているのか分かった。

 ウルが自分の子供を傷つけるとは思えないが、俺が見ていないところで何かしているのかもしれない。


 ウルは俺と同じでプライドが高い。

 この勝負ゲームで負けたくないのだろう。

 まぁ、所詮はフィンが考えたただの遊び。


「……そうか」


 あのまま言い合いをしていてもいずれ殴り合いになるのが目に見えているから良かったのかもしれない。


 結婚する前の痴話喧嘩の時もそうだった。

 彼女が俺の浮気を疑った時だった。

 必死で俺は誤解だと伝えたが、彼女にとって火に油を注ぐものだったらしく、俺は頬を殴られた。

 あれは“並の一般女性”が出せるものではない。


 俺もそれには頭にきた。

 さすがに女性の顔を殴り返すのは良くないと思ったので、頬を軽くビンタする程度にした。

 そのあと回し蹴りを入れられて肋の骨が折れてしまった。

 あれは二度とごめんだ。

 そういう意味ではフィンは命の恩人と言えるだろう。


「父様に言ったこと絶対に母様に言わないでください。何をされるか分からないので」

「わ、分かった」


 ただ俺の中で疑問だった。

 本当にウルは家族を傷つけるようなことをするのだろうか。


 怒りに任せては駄目だと最近痛感したばかりだ。

 落ち着いて行動しなくてはいけない。

 呪いの影響もある。


 そうだ、しばらく彼女の行動を観察しよう。

 そうしよう。



---ウル視点---




 扉がコンコンコンとノックされる。


「母様、フィンです!」

「どうぞ!」


 フィンが明るい声音で言った。


「母様、容体はどうですか?」

「えぇ大丈夫よ。どうしたのこんな遅くに」

「実は父様が、よく女の人と会うのを見てて……」


 私はその瞬間殺意とも思える程の怒りが湧いた。

 けれど、拳を握りしめることで少しだけ抑えることができた。


 冷静にならなくては……。

 結婚する前彼が浮気をしたことがあった。

 私は問い詰めたけれど、彼は誤解だと容疑を認めなかった。

 結局あれが本当に浮気だったのかどうかは未だに分からないけど、やっぱりそういう人間だったらしい。


「それは本当に?仕事とかじゃなくて?」


 一応確認しておく。


「仕事以外で会ってると思います。おそらく明日も会いますよ」

「なんで分かるの?」

「父様が鬼族の村に挨拶に言った時、若い娘さんに満更でもない顔してましたよ?」


 頭をよぎる過去の記憶。

 レオンが女の人と2人で笑いながら町中を歩いていた。

 家に帰ってきたらレオンに私は怒鳴り上げた。

 よく平気で帰ってこれるわね!と。


 しかし彼は、なんのことだ?ととぼけていた。

 本当に腹立たしかった。


 けれど、その1週間後にネックレスをプレゼントしてくれた。

 付き合って3年記念だから、と。


 今思うとあの女の人は仕事でよく関わる人だった気がする。

 その人と私へのプレゼントを選んでくれていたとしたら……。


 この目で確かめないと……。


「そうね、分かったわ」

「僕がチクッたなんて言わないでくださいよ」

「分かってるわ」




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 次の日。

 私は、レオンの動きを見るためにつけていた。

 レオンは今日仕事だと言って家を出ていた。


 これで鬼族オーガの村に行くようであれば可能性は高まる。


 そして、彼は鬼族の村に行き、とある家を訪れていた。

 家に招かれていたのだ。

 家の中に入られては会話が分からない。

 諦めて家に帰ることにした。


 彼は女の家に入ったのだ。

 これは間違いないのではないだろうか。

 フィンの言う通りだった。


 ゲームはまだ後半戦を残している。

 というかゲームにする必要はあったのだろうか。

 かんか……バカバカしい。

 まぁ、子供フィンが遊びで言っていること。


 フィンは昔から我儘を言わないし、泣かない子だった。

 そんなあの子が一緒にゲームしたいと言ってきたのだ。

 喧嘩中……大切な話し合い中にすることではないだろうけど、フィンが提案してきたのは私達の気が合うかどうか。

 一石二鳥だ。



---レオン視点---




 ゲーム開始から3日程経った。


 ウルとは全く口を聞いていない。

 けれどウルはフィンに必要以上に話しかけている。

 そしてフィンは困ったような表情をしている。


 助けてあげたいのは山々だが、ウルとは気まずいのであまり近づきたくない。

 ごめんな。


 本当にウルはフィンを傷付けているのだろうか。

 フィンの言うことは信じてあげたい。

 あげたいけどどうしても信じきれない。


 現にアランはそういうことで親の我々に文句を言ったことはない。

 メイド達からはたまに子育てにおいてアドバイスや注意をしてくれるが、そう言ったことを言われたこともない。

 よく分からない。


 フィンは生まれてから嘘をついたことはない。

 いや、この前ワルガキの件でついてたか。

 まぁそれはいいとして……。


 とにかくフィンは“無意味な嘘”はつかない。

 それに我儘を一度も言ってこなかったフィンが俺を頼ってきてくれたのだ。

 ゲームの話を持ち出したのもこのためだったのかもしれない。

 いや、我儘は言いたくても言えなかったのでは?


 そうだ、ウルに脅されているフィンには我儘なんて言えるはずがない。

 やばい……辻褄が合ってきてしまった。


 フィンがいい子すぎるのも実は俺が仕事に言っている間ウルに脅されているから?!


「どうすればいい……」




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 ゲーム最終日。

 俺はレオンとウルを集めた。


「はーい!ではゲーム終了で〜す」


 2人は険しい顔をやめない。

 当然と言えば当然だ。

 俺がばら撒いた種があるからだろう。


「フィン、正解を言えばいいんだよな」

「はいそうですよ」


 レオンが不安そうに言った。


「ではせーの……で言ってくださいね。

 せーの!」

「「……か」」

「……の前に!いや今金って言おうとしたでしょ……」


 俺は深く頭を下げた。


「まず父様と母様に謝らなければならないことがあります。初日に言ったこと全部嘘です」


 2人は怒るだろうか。

 頭を上げるのが怖かったが、2人の表情を見た。

 2人は安堵したような表情をしていた。

 安心した。


「どういうことだ?」

「今から説明します。

 まず僕は、

 父様には母様からいじめられていると、

 母様には父様は浮気していると言いました。もちろん両方とも嘘です」

「なんでそんな嘘を付いたんだ!」


 テーブルにバン!と手を叩き、レオンが声を上げた。


「それは、2人のプライドを増長させるためです」

「は?」


 ウルは首を傾げ、レオンは今にも襲いかかってきそうだ。

 当たり前である。


「まず2人は元からプライドが高いですよね?」

「まぁ確かに……」

「そうですね。私もかなり高いです」


 2人はうんうんと肯定した。


「プライドが高い人間は大前提コントロールしやすいんですよ!」

「どういう意味だ!」

「心当たりあるでしょう?

 まず僕は2人に嘘の情報を流しました。

 それによって2人はあんなクズにだけは負けられない……いや、負けてはいけないと思ったはずです」

「そうだな」

「そうですね」


 2人はうんうんと話を聞く。


「そしてこのゲームのコンセプトは相手を知ること。

 方や即ちお互いの過去を思い出しながら、

 方や尾行して観察しながら探していたと思います。

 けれどそれは僕の行った通り悪い方向に進んでしまったのでは?」

「その通りだけど、どうして?」


 ウルが不安そうな顔で聞いてくる。


「まず僕は父様がワルガキの母に文句を言われていたことを知っています。それも僕がワルガキに何かをする度に。だかは僕はゲーム2日目で朝からワルガキを殴りに行きました。その結果軍関連の話で鬼族の村に行くついでに呼び出されましたよね?父様」

「あぁそうだ」

「あぁ、だから私はそれを見て浮気だと思ったのですね」

「そういうことです。鬼族は人族より寿命が長い分、少し年老いても若く見えるんですよね」

「な、なるほど……」


 ウルは納得し、気が抜けたようにストンッと座った。


「そして父様は僕の子供気がないところを気にしていましたから、我儘が言えないのは母様のせいでは?と考えたのでは?」

「全くその通りだ……」


 レオンはお手上げだ、と目線を下に落とす。


「そして最後に……

 僕があの情報を流したことによって2人は本当にあの人が?と思ったと思います。それこそが僕の狙いです」

「え?」

「プライドが高い人間は、相手が自分と同等、もしくは自分より上の相手を目の前にした時、負けた時のリスクばかり考えてしまいます。実際今、負けた後の生活を想像していますよね?」

「そうだな」

「うん」

「じゃあここは平和的に行きましょう」


 俺は満面の笑みを浮かべ、紙切れを取り出した。


「2人の答えは同じなのだから」


 そこには『家族』とこの世界の文字で書かれていた。


「ウル……」

「レオン……」


 なんだ熱々じゃねぇか。


「けど、なんでこんなくどいことしたんだ?最初からこの紙を見せていれば良かっただろ」

「それは2人を人間に戻すためです!」

「はぁ?」

「2人はただ怒り任せに自分の意見をぶつけてるただのバケモノでした。それに相手をよく観察する機会ができたでしょう?もう夫婦喧嘩はしないでくださいよ?不快です」

「あぁ……すまん」

「ごめんねフィン」


 これにてノクターン家夫婦喧嘩は静かに終わったのであった。


「もしかして、俺達の『か』から始まる言葉って金じゃなくて家族では?」

「そうかもですね!」




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 それから数ヶ月、何事もなく過ごした。


 ネムの魔術の伸び方は異常もいいところ。

 上級魔術までをすべて無詠唱で使えるようになった。

 俺ですら数年はかかったというのに……。


 まぁ、俺とネムは友人関係であり師弟関係でもある。

 弟子の成長は素直に喜ぼう。


 あと、アメリア以外のメイドが俺に軽蔑の目を向けるようになった。

 おそらく俺が子供らしい嘘をつかないからだろう。

 夫婦喧嘩の解決に使った嘘は意味のある嘘。

 即ち、相手を惑わし、行動に誘導する助言。


 メイド達は自分と話す際にとんでもない嘘をつかれているのではないかと、俺と話すことをやめていった。

 アメリアは周りに流されないタイプなんだな、と思いより俺はこの人を尊敬した。


 レオンは身近にこんな綺麗なメイドがたくさんいるのに手を出さない。

 それはレオンの心の強さを物語っている。


 そこまでウルは頭が回らなかったのだろうか。

 たぶんだけど、この世界の人間は頭が硬い。

 もう少し脳トレしたほうがいいよ君たち。


「なんだ?まじまじと見て、父さんのようにカッコいい大人になりたいのか?」


 体術中にレオンを見ていたらなんか聞かれた。


「ちゃんとお金は考えて使ってくださいね。お金は人を守ることだってできるのですから」

「え?あ、あぁそうだな」


 たぶん分かってないな。

 前世の弟の話をしてもレオンには伝わらないだろう。

 金さえあれば弟を守れたんだ。


 確かに自分の金なんだからどう使おうと勝手だろ!という意見には賛成だ。

 けれど大事に使って欲しい。

 いざという時家族を守れるように。


「まぁ母様に“また蹴り砕かれないように”ちゃんと話し合ってくださいね」

「ときどき俺はお前が怖いよ」

「実の息子を怖がるとか父親としてどうなんでしょうか」


 俺がレオンのように金持ちだったらどのように金を使っているだろうか。

 というか金を使わないかもしれない。

 永遠と貯金し続けて、極限まで節約して少しずつ使って暮らすだろう。


 いや、待て待て。

 結婚したらそういうわけにもいかないだろう。

 女の子は結婚とか指輪とかプレゼントとか、金を使うことを求めてるらしいし(知らんけど)。

 女心はよく分からん。


 というか好きな人にも金にも恵まれて最高の人生送ってるじゃねぇかコイツ。

 なんかムカついてきたな。


「いやぁお前も男から分かるようになるさ。大好きな女の人にはお金を使いたくなるものなんだよ」

「5歳の僕には何も分からない感覚ですね。まぁ、確かに値段はその物の価値の数値化とも言えますしね」

「お前やっぱ子供じゃねぇだろ」

「まだクソガキですよ?」


 前世の知識を持ち込むのはこれまでにしよう。

 そうでないと怖がられるらしい。


「まぁ追いかける尻は一つにしておけ、じゃないと………な?」


 俺は何も言わずに白い眼差しを向けておく。


「ネムちゃんは可愛くなるぞ〜ありゃ」

「うっさいな〜」

「照れんなよ」


 レオンは良くも悪くも父親だ。

 その事実は変わらない。

 もう二度と“あんな”ことはしたくないからな。


 精神年齢40にもなる俺とレオンとでは比べるまでもなく、レオンが優秀と言えるだろう。

 この世は結果がすべてだ。

 工程はいらない。


「んふふ……」

「なんだよ」


 レオンが俺の後を見てニヤニヤとする。

 ふと後を振り返るとネムが立っていた。


「ほら行って来い」


 と俺の背中を叩く。


「いてぇ」


 俺は何事もなかったかのようにネムに笑顔を向けた。


「今日も行く?」

「うん!」




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 ウルの出産はノクターン家のメイドが数人囲んで行っていた。

 出産は命懸けとよく言うが、ウルがもう死んだ方がマシ!とか言う程痛いらしい。

 汗だくになりながらレオンの名前を呼び、手を強くに握っていた。


 アメリアも常時治癒魔術をかけて援助し、家中のメイドが総動員で作業し、

 俺は情けなくもアメリアの指示通り簡単なことしかできなかった。


 周りが忙しくしているとこちらまで落ち着かなくなるのは日本人だからだろうか。


 アメリア達のおかげで無事にこの世界に誕生し、元気な産声をあげた。

 女の子だった。

 妹だ。


 お願いだから病気になりませんように。


 女の子かー!と言いながらでへでへと笑うレオン。

 レオンは親バカだったらしい。



 その子はミナと名付けられた。

キモいしイタい。

絶対書き直すこれ

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