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平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です  作者: モモ
第1部 第2章

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王太子、王太子妃に尋ねる(上)1056年11月15日

 ナーロッパ歴1056年11月15日10時


 アルベルトは今、アリシアとともに黒狼隊の宿営地に向かう馬車に揺られていた。

 護衛はアルベルトの侍従武官と近衛騎士30騎と近衛兵100名程度。他の馬車でアイザック・ロブェネル将軍をはじめとする軍の高官達も同行している。


「期待されている部隊なのですね? アルベルト様や将軍達がこんな時期に閲兵するなんて……」

 アルベルトの正面に座っているアリシアは揺れを気にする事なく嬉しそうに尋ねてくる。

(尻痛くならないのかな)とアルベルトは思うが、まあ口には出さない。

 ちなみに彼は揺れで尻が結構痛くなっている。


「まあ、言ってしまえば黒旗軍の猿真似です。当初はあまり期待されていませんでしたが、ラーンベルク夜襲戦以降多少期待されるようになりまして……」


「期待されていなかった……ああ、成程。軍事目的以外で編成された部隊という事ですね。」

 アリシアは綺麗な指を顎に当てて、言葉を紡ぐ。

「軍事目的ではないとしたら……治安ですかね。王都のスラムの貧困層から元気な者を集めて編成したと言った所でしょうか?」

 鋭い答えであった。今のやり取りで軍事目的以外と言うのは解っても王都の治安改善のためにと言う答えにつながる言葉は出て来ていなかったのだから。

 アルベルトが驚いた表情を見て、アリシアは柔らかく笑う。そして、彼女の隣に座っているアリシアの侍女の顔が青くなっていた。

「簡単な話ですわ。ピルイン選帝公領主都ザクソンからリューベック王国王都リュベルに来る道中で王都近郊と地方の経済格差を見てきましたから。」


 そういう事かとアルベルトはアリシアの答えに納得する。

 リュベルまで来る道中でリューベック王国が王都近郊とそれ以外の地域で大きな経済格差が発生し、人口流入が大きな問題となっているのに気づいていただけなのだ。そこから軍事目的以外と言う言葉から治安改善目的と繋げたのだろう。


「しかし、殿下。その部隊を編成してもまだまだスラム問題は解決していないのでは?」

 アリシアは微笑を崩さず、続けてくる。

 言葉は疑問形だが、彼女の人形のように綺麗な顔は自信で溢れている。


「何故そう思われるのですか?」

 アルベルトが尋ねると、アリシアは右手を前に出して人差し指と中指の2本上げる。

「それは二つの事から簡単に推測できますわ。一つ目は黒狼隊の規模。私はかの部隊規模は詳しく解りませんがリューベック軍の規模から考えれば最大に見積もっても2千人程度でしょう」


 黒狼隊は現在二個大隊で2000の連隊編成なので、アリシアの推測は当たっている。

 アルベルトは目で続きを促す。

「二つ目はリュベルの繁栄は今始まった訳ではない事です。王都への流入も長い間続いて来たでしょうから、たかだかその程度の数を兵士として雇ったとしても焼け石に水でしょう」


 アリシアは目で違いますか?と訴えてくる。


「その通りです。スラム問題はまだ全く解決しておりません。アリシアには何か方策を思いつきませんか?」

 アルベルトはダメ元で聞いてみる。流石にこの国の内情は詳しく解っていないのだからそこまで期待はしていなかったが……


「私もリューベック王国の内情はまだ詳しくないため、的外れの事を言うかも知れませんが、その時はお許しください」


「ええ。それは解っています」

 アルベルトが頷くとアリシアは美しい声で言葉を紡ぐ。

「ありがとうございます。それでは、まず、一つ伺いたいのですが、王家の領地でも土地はある程度余っているのではありませんか?」


「確かに農地はともかく土地は余っていますね。」

 アルベルトが答えるとアリシア嬢は微笑を浮かべてもう一度尋ねて来る。

「その土地は農地にも開墾可能ですわよね?」


(ああ、土地を開墾する人員として農民にすると言う事かな?)

とアリシアの案をアルベルトは推測する。

 その案は一度内務省の改革派が提案して検討されたが、王都の貧困層全員分の農地を開墾するとなると莫大な費用がかかる事で内務省の主流派と軍部の反対により中止されてきた。まあ、リューベック王国は商業からの収入が大きく農業の収入の割合はたかが知れていたのが大きな要因である。商業収入に大きく余裕がある以上田舎で国がある程度自給できる分の主食を生産出来れば十分と内務省の大半の幹部と将軍達はそう思っていた。しかし、スラム対策は必要であったため、最終的に軍部(陸軍)・内務省主流派と内務省の改革派は妥協し、当時黒旗軍を真似た黒狼隊の編成と繋がった。それと並行して、徐々に開墾して行こうと言うのが内務省内部で話し合われているようだが、それはまだまとまっていなかった。

「開墾が可能な土地は十分あります。開墾して農民にと言う話と思いますが、それは一度検討されました。しかし、費用が掛かりすぎると言う事で内務省の一部と軍部の反対があり、実施されませんでした。」


 しかし、アルベルトの答えを聞いたアリシアはがっかりする様子はなく、むしろ彼女の人形のように整った顔には自信が溢れていた。

「確かに開墾はいたしますが、アルベルト様の考えているより遥かに開墾する土地は少ないです。そして、農民にするのではなく……そうですね。例えるなら半常備兵みたいな物です」

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