王都で書類仕事ばかりで戦場に出ない臆病者に戦を解れと言うのが無理でしょうが……(上)
ナーロッパ歴1056年11月14日13時。
リューベック王国王宮ホルステン宮の大会議室には摂政、諸侯、内務卿と外務卿と軍務卿の三卿を始めとした重臣、彼らを補佐する上級官僚達、そして陸軍の将軍や海軍の提督達が集結していた。
「我の結婚式が終わった後でこんな事になってすまぬ」
アルベルトが席を立って頭を下げると、
「敵国が侵攻を企ているのだからやむを得ますまい」
「奴らに我々に手を出した事を後悔させてやりましょうぞ」
「さよう。奴らの血で国境を赤く染めましょう」
などなど、特に陸軍の将軍達から強気の発言が出ている。
「各将軍の意気や良し。しかし、奴らの血でこの地を染めるには、動員した軍と確かな戦略が必要だ。それを話し合う前にまず国王陛下より王命を諸卿に伝える。」
アルベルトが立ち上がると、彼の傍に控えていた侍従長がアルベルトに国王からの勅書が渡される。
そして、会議参加者も一斉に席から立ち上がり、アルベルトの方を向き、地面に片膝をつき、頭を下げる。
それを見たアルベルトは勅書を受け取り読み上げる。
「国王陛下よりの命を伝える。我が国に侵攻を企てる侵略者を総力を挙げて殲滅せよ!」
「御意!」
「国王陛下は病のため、迎撃の総指揮は摂政である我が取る。異存がある者は申し出よ。」
とアルベルトが告げるが、反対する者は出る訳がなく彼らも同意した。結果は解りきっているばかばかしいやり取りではあるのだが、アルベルトも重臣らの同意を得ると言う過程を踏んでおく必要があった。
この時代のナーロッパでは皇帝、国王といえとも諸侯に絶対的な命令を出せる程強くない。しかし、一方で諸侯もバラバラでは所領を守るのは難しいため、領地の保障を条件に国に協力する。そういう難しいパワーバランスによって国家は成立していた。簒奪王と簒奪帝がこのバランスを一時破壊するものの、それ以降500年近くはこの体制が維持されていく事となる。
そのため、摂政であり次期国王であるアルベルトも重臣や諸侯の支持は必要であり、こういう配慮も見せねばならなかったのである。
「では早速御前会議を開催する。まず、軍務卿、詳しい説明を」
アルベルトがそう言って席に座ると、軍務卿以外の者が席に座り、軍務卿レーベン伯はアルベルトに一礼した後口を開く。
「既に報告は諸卿に行っていると思いますが、もう一度確認します。諜者の報告によりますと今月10日より国軍、諸侯軍の動員及び傭兵の募兵を開始しているとの事。フリーランス王国は王都および西部や南部の各拠点から軍需物資の移送を開始しており、東部のアルンやルエヌに集積中です。我が国への侵攻を企てている事は明らかです。ただ、他の旧フラリン同盟諸国の動きは現在確認できておらず、確認調査中であります。」
アルンはフリーランスの東部に位置しており、有事の軍事拠点だと知られおり、ルエヌもフリーランス東部主要街道の結節点にあたる交通の要所である。
フリーランス王国の東にはリューベック王国しかない以上、リューベックを狙っているのは明らかだ。
「また、デーン王国でもオレンボー辺境伯による軍の動員が報告されています。現在、他の地域での動員の有無を調査中ですが、最悪の場合、デーン王国も侵攻してくる可能性が考えられます。この事からロアーヌ帝国やナビア王国に支援要請も考えねばなりません。」
会議の場は一気に重くなった。
フリーランス王国だけならともかく、他の旧フラリン同盟諸国やデーン王国とも開戦となれば一気に不利となる。
単純に、リューベック王国だけでは兵力上勝負にならない。
しかし、これに反論する者がいた。
「軍務卿、よろしいでしょうか?」
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