王太子と王太子妃、病弱な国王と会談する(下)
国王の館に到着し、国王の寝室に案内された。
「王太子殿下、王太子妃殿下がご到着されました。」
侍従長が確認すると
「入れ。」
と返事があり、アルベルトとアリシアは部屋に入る。
「リューベック王国摂政アルベルト、国王陛下に拝謁いたします。」
「初にお目にかかります、国王陛下。リューベック王太子妃アリシアにございます。」
病気のためベットに横になっていたリューベック王国国王ブディブォイは体を起こし
「アルベルト、アリシア、結婚式にも参加できずすまなかった。」
と口にする。
「いえ。父王陛下が病と闘われている事は私と妻も、いえ、臣下一同良くわかっております。寝室で私達の結婚を祝って頂けたのでしたら、これ以上にない誉であり、幸いでございます。」
まず、アルベルトが頭を下げながら答え、次にアリシアが頭を下げ
「義父王陛下の病が快復する事をお祈り申し上げます」
と常識的な事を口にする。
「そう言ってもらうと心が軽くなる。さて、まずそなたの用件を済ませるとするか。アルベルトに王命を下す」
アルベルトは片膝を地面につき、王命を受ける際の儀礼を守る。
「侵攻して来る敵軍をリューベック王国の総力を挙げて撃滅せよ。」
「王命、謹んでお受けします。」
「アルベルト、勅書はすでに作成している。侍従長から受け取って戻ると良い。」
「ありがとうございます。」
アルベルトとアリシアが一礼して王の寝室から退室しようとするとリューベック王国国王ブディブォイが
「アリシア嬢、いやアリシア、少し時間はあるかな?」
とアリシアに尋ねる。
「本日は予定も入っておりませんが、わたくしに何か御用でしょうか?」
「用と言った物ではないか……本日は少し調子が良い。少し年寄りの話し相手になってくれぬか?」
(何か狙いがあるのか?それとも陛下が申される通り単純な時間つぶしなのか。流石にこれだけでは読めないわね)
アリシアはアルベルトの方を向き
「アルベルト様、宜しいでしょうか?」
と尋ねる。
「アリシアが父上の話し相手になって頂けるのであればとても助かります。」
「解りました。」
アルベルトの答えを聞いたアリシアが国王の方を向き
「不肖アリシア、喜んで義父上の話し相手を務めさせて頂きます。」
と続ける。
「うむ。年寄りの相手をしてもらい、感謝する。」
リューベック王が感謝を述べた後アルベルトが
「アリシア、私が連れて来た侍従武官を一人残しておく。帰りはそれに案内してもらってくれ。」
と述べるが、リューベック王は
「我の頼みで残ってもらうのだから、そなたの館までは我の侍従武官に護衛と案内させる。心配せずとも良いぞ。」
と告げる。
「解りました。では国王陛下。私はお暇させて頂きます。」
とアルベルトは帰りの挨拶した後、一礼して寝室を退室していった。
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