表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第1話


「お姉ちゃん、夕飯はハンバーグがいいな」

 

かなではニコリと笑って、左側を歩く私に言った。

今日の夕食当番は奏だけど、その言葉で作る気も手伝う気も無いのが分かった。

「分かった」


言い合いになっても、最後は私が作ることになる。

そうなると、言い合うだけ時間が無駄になるので、私はアッサリ頷いた。

母親が幼い頃に病死している我が家は、中学2年生の私達が交代で夕食を準備していた。お父さんは喫茶店を自営業しているので、帰ってくるのは真夜中なのだ。

自宅が近づいてきたので、カバンから鍵を取り出す。

いつも通りに開けて入ろうとすると、電気をつけてもいないのに、黄金色の光が扉いっぱいに広がって私たちを包んだ。

眩しい、何これ。

思わず目を閉じると、身体が一瞬だけフワリと浮いて重力が無くなった感覚。

その次には、トサリと地面に尻もちをついていた。

電車でトンネルを通る時のように耳がキーンと鳴って数秒の無音があった後、ワアアアアと大勢の人が驚くような声が聞こえてきた。


「聖女が2人?」

「どっちなんだ」

「これで安心だ、良かった」


疑う声や喜ぶ声、驚く声などが両耳に痛いほど響く。

いつの間にか眩しさが消え、私が周囲を見渡すと、眼の前には10人くらいの人間が私と奏を取り囲んで観察するように眺めていた。

ジロジロと不躾な目で、上から下までねっとりした視線を感じた。

まるで値踏みするように・・・。


「どちらが聖女なんだ」


発言したのは、黄金の冠を頭につけた威厳のありそうな男性だった。

彼が発言した途端、皆の視線は私達から外れ、戸惑うようにお互いを見合っている。


「すみませんが」


私はたまらず声を出した。

まるで、物珍しい生き物を見るような目つきに怒りすら覚えた。


「私達はどうしてここに居るのかすら、よく分かっていません。聖女って何なんですか?何も私たちには説明が無いんですか?」


イライラした口調に気づいたのか、冠をつけた男性が一歩前に出てきた。


「確かに、何も説明せず申し訳ない。ここはアスティアという国で、私は王のバベルと言う。この国には30年に一度、他の世界から聖女が来るという習わしがあり、現れる場所が決まっているため、ここに居たら君たちが来たという訳だ」

「アスティア・・聞いたことないわ。どうして30年に一度、こんなことがあるんでしょう?私たちを呼んだとかじゃなくて?」

「意図的に呼んではいない。ただ、なぜか30年という周期でこの場所に人が現れるため、神の導きによるものだと思っているのだ。君たちが来る前の時は金色の髪をした女性が来たこともあるし、どんな人物が来るのか予想できない。剣を持っている兵士が居るし驚いただろうが、いきなり襲い掛かってきた時もあるので、許してほしい」


言われてよくよく周囲を見ると、帯剣している兵士が6名居て、私と奏を取り囲むように立っていた。

危険物扱い、か。


「何これ、帰りたい。おうちに帰りたいぃ」


奏は私の右腕にしがみつき、泣き出した。私だって、泣きたいよ。

私達が危険では無いと判断したのか、兵士達は壁側に下がり、王様の判断を待っている様子だった。


「話は明日にして、食事をして休んでもらいたいと思うが、どうかな?」


王様の言い方が、少し父さんの言い方に似ている。

そんなことを感じてしまったせいか、私は素直にコクンと頷いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ