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パート・タイム・バッド・レイディ(日帰り悪役令嬢)  作者: 焼ミートスパ
第一章 婚約破棄された直後に入れ替わったちゃったよ

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8 魔法士長の苦悩

「一体どんな教育をしてきたんだ!」


「公爵家と言えども絶対に許されることではない!」


「このままでは舐められますぞ!」


「令嬢ごときにやられるなど本家の跡取りとしてどうなんだ」


我が家である魔法士長家に親兄弟どころか親戚一同が集まって喧々諤々の大騒動になっていた







あれは数日前のことだった


王立学園の卒業式で第一王子が婚約者の公爵令嬢に向かって婚約破棄を宣言したのだ


それだけでも頭が痛いのに ~反国王派がここぞとばかりに騒ぎ立てることだろう~ うちの息子がその一味となっていた


何の罪もない公爵令嬢に向かって魔法を放とうとしたのだ





まあそのまま令嬢を葬り去ったのならまだよい


魔法士長の息子としてのメンツは立った(はずだ)




しかしながら残念なことに返り討ちにあってしまった


口の中に尖った氷の塊を突っ込まれたのだ





それが良かったのか悪かったのかは判らん




無防備な人間に向かって魔法を放とうとしたことについての報復として適切であったのか?


たとえ相手が犯罪者であっても無力な令嬢に魔法を放とうとしたのは問題ではないのか


たとえ報復であっても公爵令嬢はやりすぎた


冤罪だったのならなおさらだ


孫や甥や従弟が傷ついたからと感情だけで善悪を判断するのは当然だ


逆に返り討ちにあって魔法を放てなくて良かったとも言えるかもしれない


なにせ被害はこちらの方が大きいのだ


堂々と賠償と謝罪を求めよう


各自が各自の立場で勝手なことを人の家に集まって言っていた





もっとも当の息子は自分の血で溺れ死になりそうになった恐怖で魔法が使えなくなり部屋に籠っているのだが





過去に戦争や紛争で死にそうになった人間が魔法を使えなくなった事例はそれなりにある


まさか自分の息子にそんなのが訪れるとは思ってもみなかったが





長いつららで口から喉に掛けて貫かれた


治癒魔法で傷は完璧に治癒した


だが心の傷は治せなかった


簡単に言うとそういう訳だ




・・・ところで一体どうやったらこの混乱は収束するのだ?


噂によると公爵家は反旗を翻して独立するような気配があるそうだが?


こんなところで呑気に騒いでいる場合ではないと思う





もっとも誰も気にしていないというのが嗤える


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