7 騎士団長の苦悩
「あなた!陛下にちゃんと言ったのでしょうね!」
家に帰るなり妻が責め寄ってきた
「あ、ああっ・・・」
返事に困ったので適当な返事となってしまった
そうしたら
「あなた!あの子は目が見えなくているのですよ!」
と激高してきた
まあそうだろうな
なにせ片目を抉られたのだ
もう前と同じに剣は振れまい
いや剣は振れるけど普通には戦えまい、だな
騎士にとって目は利き腕とともに一番大切なものである
相手との間合いや剣の軌道を読むのに必要だ
片目だとどうしても遠近感が上手く取れない
・・・上級者になると剣を見なくても雰囲気で避けられるというツッコミはいらない
対等な相手だと片目が見えないというのはハンデにしかならないのだよ
魔法士長に依頼して治癒魔法を使って貰ったのだが手や足ならいざしらず複雑な目ともなれば完全な修復はできなかった
視力はもとの1/10程度
明るいか暗いくらいしか判断がつかない
もはや騎士としては死んだと言って良いだろう
まあ無抵抗の女生徒に向かって剣を振り下ろそうとしたのだ
命があるだけでも感謝しなければならない
・・・いっそのことそのまま死んでいたほうがましだったかもしれない
それを判っていてトドメを差さなかった公爵令嬢にはそら恐ろしさを感じる
「あなた聞いていますの!」
息子可愛さに激高している妻をどうやって宥めようか
剣を振るよりも難しい難題に頭を抱えたくなってきた