44.彼女たちには悪いけど-もしかしてレイドライバーの頭数の話ですか?-
全47話です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
カズはその個体の事を思い出していた。いや、思い出さずとも常にそこにあったのだから気が付かない訳がない。それは今まで見ないふりをしてきただけなのだ。
――彼女たちには悪いけど、この際使いつぶされてもらおう。
そんな事を考えつつも、相も変わらず寄り道をしつつ数日をかけて研究所に到着した。
「おかえりなさい、所長」
アイザック・ウォーカー、元の副所長であるクリスチャンの側近だった人物で、現副所長の彼が出迎える。
カズは普段研究所に常駐している訳ではない。それは彼が軍人だからだ。何と言ってもレイドライバー部隊の隊長なのだから。だか、間違いなく研究所の所長でもある。なのでこうやって二足の草鞋を履いているのだ。
「あぁ、アイザックさん、ただいま戻りました」
という挨拶もほどほどに、
「実は今日は色々なすり合わせをしに来たのですよ」
と切り出す。
「それはもしかしてレイドライバーの頭数の話ですか?」
――流石、そうでなくっちゃここは任せられないよね。
そう思わせる程にアイザックという人物は頭のキレがいい。何と言っても現副所長、実質この研究所を切り盛りしている人物なのだから。
「そう、頭数です。こちらに戦況は入って来ていますか?」
一応の確認の為の質問、
「もちろん、二体喪失ですね。パイロットとサブプロセッサーは無事のようですが」
ちゃんと正しく伝わっているようだ。
「色々と考えたんですよ。もしかしたら帝国は、我々よりもペースを上げてレイドライバーというものを生産し続けているのかも知れない、と。ヨーロッパの余韻が残っているうちの南米ですからね。それだけで四体だ。どう考えても数が合わない。もちろん、政府からは[追加の生産もしている]とは言われたのですが、いかんせんスケジュールが降りてこない。という現状を考えて、ちょっとした策を思いついたんですよ」
――本来ならこれはイレギュラーな問題だし、やるべきでないのは分かってるんだけどね。
いつものように微笑みを浮かべながらカズは言う。
「とは?」
当然、そう返って来るので、
「研究所には現在、二個の基礎試験用のサブプロセッサーがありますよね、と聞けば分かりますか?」
と聞く。
「パイロットは何処から調達を?」
どこまで理解してくれたのか、そんな会話になる。
「パイロットはいませんし、要りません。っていうか、実際は上への確認と、こちらとの相談かな」
――研究所と、政府上層部と、その両方に確認をとらないといけない。それにはオレがこの場所まで帰って来ないと出来ない事なんだ。
カズはそう言ったのだ。
「まさか、政府の言う[無人機]を?」
と返して来るので、
「そう、無人機。あらかじめ言っておきます、この話は人道的ではない。それを踏まえたうえでまず聞いてもらえますか?」
カズはそう答えたのだ。
全47話です