43.以前の機体にはコアユニットという存在があった-結果を言えば[半年]であった-
全47話です
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ここでひとつ、カズが行った実験の中に、実際に人間の四肢を切断したあと表皮を削ぎ感覚器官をすべて奪い、まばたき一つ出来ないようにて、今のレイドライバーと同様の環境下に置いて暗室に放置するだけ、というものがあった。
今でこそ脳だけの[考えるモノ]のサブプロセッサーとパイロットという体制が採られているが、それ以前の機体には四肢を切り落とされて、機体の中心に据えられたコアユニットという女性の存在があった。
現在の子宮リンクシステムはこの当時から存在している。それは第二世代になった今の型からはパイロットとサブプロセッサーを繋ぐために使われているが、第一世代の当時はコアユニットとパイロットを繋ぐために使用されていた。
初めはコアユニットになる女性もサブプロセッサー同様、脳だけを使用する予定だったのだが、レイドライバーの制御をするのに生身の身体が最適だという事が分かった。
第一、当時の技術では自我のある状態での脳の摘出はまだ相当に難しかったのである。ゼロゼロのケースは本当にある種の[賭け]だったのだ。
だが、こんな非人道的な行為と事情だ、研究所が一番恐れたのは、その情報流出とコアユニットの離反、である。
確かに、単独行動をさせれば離反や命令無視の可能性があるので、研究所は肉親である子供をパイロットにする事を考え付いた。いわゆる[人質]である。
それにまだ子供であれば教育課程で、軍好みの[調律]も出来る。実際に単独とパイロットがいる状態の比較実験では、パイロットの存在が性能の差に結びついたのだ。
だが、それは同時に同調、という問題を引き起こした。つまり、パイロットとコアユニットの同調である。そしてリンクさせるのに子宮同士を介するのが一番効率がいい事も分かった。それは肉親でないと上手くいかない事も実験から導き出された。
なので、コアユニット同様、パイロットとなる子も女の子である必要が出てきたのだ。そして、コアユニットになる女性は四肢を切り落とし、胴体は残してレイドライバーの一部にしたのだ。
これが、第一世代である。当時のサブプロセッサーは自我がなく、都合のいい演算処理装置だったのである。
当然、実戦配備する前に被検体によるテストが行われた。四体の被検体を、コアユニット同様、四肢を切り落として一切刺激を与えないという実験をしたのだ。
戦争だって毎日やるもんじゃあない、待機状態を想定しての事である。一週間ごとに質疑応答をして、精神が保てているかどうかを専門的に分析してみた。[実験]には当然、実戦を想定して女性を使用した。四体、それだけの命をそこですでに使っているのである。
その結果を言えば[半年]であった。
人間は常に刺激を受けていないと生きてはいけない生物のようである。
まず、二か月目あたりで二体に異常が見られた。最初は軽微な、軽いうつ病のような症状だったが、三か月、四か月と経つにつれてまた一体、残る一体もどんどん生気がなくなっていった。そして半年、どの個体も判断能力も、思考能力も使い物にならないレベルになったのである。つまり心が[壊れた]のだ。
そして、一度[壊れた]ものは二度と元には戻らなかった。
これらの結果を踏まえて、実戦配備されたころのコアユニットには娯楽、が与えられた。それはある程度の意思が汲み取れる、リンク状態にあるサブプロセッサーがその思考を汲んで、見たい映画や小説、聞きたい音楽といったものを与えたのだ。
さらにはそれは自我のあるサブプロセッサーへと繋がる。彼女たちも元は人間なのだ。刺激がない状態では正気を保っていられない。なので、同様に刺激となるものが求められた。
それは娯楽であったりするのだが、その中に五感というものがある。モノを見、音を聞き、肌で風を感じ、口でものを味わい、風の匂いを感じる。
最低限、この五感を感じさせる必要があったのだ。だが、発達途中の脳科学はその感覚部位がどのような刺激で感じるのか、同等のものが得られるのか、まさに手探り状態であった。
そこで現れたのが、前述の二個のサブプロセッサーである。彼女たちはその実験もされたのだ。それは同時にネイシャへとフィードバックされてより実践的に研究、実験、検証が行われた。
なので、脳だけの[考えるモノ]である彼女たちは、たとえ脳だけの存在になっても自我を保っていられるのである。
そんな実験に使用されていたサブプロセッサーが二個、現存しているのだ。
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