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42.是が非でもレイドライバーの頭数を揃えないと-ではどこから?-

全47話です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 カズは通信を終えたあと[ちょっと出かけてくる]と言って、アルカテイル基地をあとにした。ゼロゼロには[何かあったら対応よろしく]と伝え、クリスには[ちゃんと副官として働いてね]と釘を刺して一路研究所に向かう。


 ――これは、こっちも人道的でない行動に出ないといけなくなるのかも知れない。


 カズはそう考えていた。


 東ヨーロッパである旧エストニアに引き続いて南米の旧アルゼンチン、この短期間に既に二か所に帝国は出現している。旧エストニア線は勝利したものの、旧アルゼンチンに至っては敵レイドライバーの残存を許した。イージス艦も沈められてしまった。


 カズの言う人道的でない行動、それは改修の際に出た余剰部品で機体を生産する、というものだ。おそらく帝国もこの方法でレイドライバーの[かさ増し]を行ったのだろう事は想像がつく。でなければこんな短期間に二か所、それも二体ずつの計四体という数のレイドライバーを派兵できるとは到底考えられない。


 ――多分、今グランビア市にこっちが侵攻をかけても耐えられる、もしくは撃退できるだけのレイドライバーがいるんだろうな。その上で派兵して来たと見るべきだろう。うーん、やる事がまた増えたぞ。


 これはカズでなくとも頭を抱えざるを得ない状況だ。政府の人間は増産体制にある、と言ってくれた。だが[近いうちに]とは言われたが、具体的なスケジュールが降りてきていない。というこの状態と、三か所目が何処か分からないがあり得るという現況を考えると、是が非でもレイドライバーの頭数を揃えないといけないのだ。


 その為に現在とれる唯一の方法、それが[余り物でこさえる]というものだ。


 研究所には性能アップした駆動系などの部品が届いてから換装作業を行う。つまり改修だ。そして改修の際に出た旧駆動系などのパーツは、いずれは本国が引き上げるにせよ、とりあえずは研究所にまだ残されている。そして、装甲やフレームなどの基本部品の在庫もある程度はストックがある。それは、先の三体のレイドライバーを補充された際に保守部品として一緒に渡されたものだ。それは、この部品だけで何体か組めるのでは? と思わせる量だった。


 だが[かさ増し]を行おうにも二期生の九人は既に配備済みだ。それでも足りないから、と言って三期生の教練を一年早めて二人のパイロットを捻出したのだから。


 ではどこから?


 ――さんざん実験に使っておいて今更なんだけどね。


 カズが思いあたるアテ、それは研究所で様々な実験に使用されている二個のサブプロセッサーである。この二個については実験用の為、今まで外に出してこなかった。実験という意味ではケンタウロス型の機体であるワンワンのサブプロセッサー、ネイシャで散々行ってきた。それこそ人道的な配慮は一切なされず、文字通り[こねくり回され]て実戦へと送り出された。それは自我のあるサブプロセッサーへの[色々な実験]に用いられてきたのだ。


 そこへ登場したのが今回の話である二個のサブプロセッサーという訳だ。この二個が研究所で作られてからは基礎的な試験や、情動に対する試験、新開発のプロセッサー部品のテストなどをネイシャから受け持つようになった。そんな実験体が二個、研究室で未だに存在しているのである。


 これは近々廃棄予定のある個体なのだ。それは、一通りの基礎的実験が終了し、生体コンピューターの性能も目途が立った現在、用途がないからである。つまり[用済み]という訳だ。生体コンピューターの稼働実験に回そうか、とも考えられていたのだが、そのデータは奇しくもクリスで取る事になった。


 なので、事実上本当に不要な存在になってしまったのだ。だが、そこはあの研究所である。もしかしたら[もっと残酷な実験が必要かもしれない]と廃棄は未定のまま、最低限人格の崩壊だけは起こさないように配慮して、研究所に留まらせ続けたのである。


 そんな個体だ、ネイシャより多少はマシなものの、扱いとしてはもっと雑であった。危険量の薬剤を注入されもした。生体コンピューターを逆利用して様々な感情を与え、そのデータ取りもしたのである。


 現在、サブプロセッサーと呼ばれる個体には、人格崩壊を起こさないようにする為に様々な感覚が提供されている。


 一例を挙げるなら[食事]についてだ。


 脳だけの存在である彼女たちは、脳髄液に似た特殊な液体を使用して摂取してまた機会に戻すという、脳髄液は常に循環させているのだが、時間になると[食事]を摂れるようになったのである。


 具体的には[食事]の味を生命維持装置に組み込まれているコンピューターから発して味覚を感じさせ、それと同時に少しずつ満腹中枢を刺激するのだ。そうするとあたかも[食事]を摂った感覚になる。


 そうやって娯楽を、食事をとらせると自我の崩壊を少しでも防ぐのに繋がるという結論に至ったのである。


 そんなデータ取りもこのサブプロセッサーたちで行ってきたのだ。


全47話です


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