4.さて、どのポイントが良いのか-やっぱり罠だと思う?-
全47話予定です
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行軍は警戒はしていたものの、比較的楽に進んだ。舗装路はローラーを使って移動する。敵の位置は既に特定済だ。ならばと周辺の地形をスキャンし、プランをたてながら行軍する。
考え事をする、こんな時は第二世代化した機体は便利だ。サブプロセッサーに[ちょっと操縦代わって]と言えばレイドライバーの行動を、無線連絡を含めて一切合切すべて任せられるのだから。
…………
その最たる例は、旧マレーシア戦のクリスそのものである。彼女は操縦が出来ず、それをゼロスリーに任せて、自身はコックピット内で[痙攣]し続けていたのだから。
…………
「さて、どのポイントが良いのか」
地形データを精査しながら一路進む。その点、トリシャはそういう地形把握能力は他の人間よりは向いていると言えるだろう。何といっても彼女はスナイパーなのだから。
そして一か所ポイントを見つける。そこはちょうど両脇を崖がせり出していて、相手の位置がはっきりと見える、少し高台にあった。だが、どこを探しても他に遮蔽になるところは無かったのだ。
――流石は市街地、山岳地帯といっても遮蔽は取れない、か。
市街地は平地、周りも平地が続く。だからこそ、先ほどのポイントが気になるのだ。
「レベッカ准尉、これ、どう思う?」
とトリシャはレベッカに尋ねる。彼女は[私が意見してよろしいのでしょうか?]と謙遜していた。そして[呼び捨てで構いませんよ少佐殿]と言うので、トリシャも[私もさん付けくらいでいいわよ]と返して、
「やっぱり罠だと思う?」
と再度尋ねる。
レベッカは[うーん]と唸ってから、
「市街地へ向かう通路は、敵も想定していると思います。それに多分、私たちの行動はどこかで見られていると思うのです。ならば、こんなに都合のいい進入路は何か仕掛けてあると見るべきか、と」
と率直な意見を述べる。
――そうよね、ここからなら敵地が見渡せるし、腹ばいになれば遮蔽もとれる。だけど、それを見落とすとは思えない。
「せめて相手が視認できるところまで隠れて出られれば」
とは言うものの、この街は四方をしばらく平地が広がっている。その中でのたった一か所の遮蔽の取れる場所。これはレベッカでなくとも何かトラップが仕掛けてある、もしくはそれに準ずる何かが仕掛けてあると見ていいだろう。
しかも相手は市街地から少しだけ出て待っている。それは彼女らなりの市民への配慮なのかそれとも[遮蔽なんていらない、やってやるから出てこい]という意思の表れなのか。
――少し危険でもやはり正面突破が一番なんでしょうね。でもそうなれば……。
先ほどの思考が頭をよぎったので身震いする。自分はこんなはずでは、とトリシャが思っていても現に彼女はそんな風になってしまったのだ。これはカズの狙いなのか、それとも副二次的に起きた心境の変化なのか。
しかし、このまま持久戦をする訳にはいかない。レイドライバーを倒せるのはレイドライバーだけ、それが現代の、少なくとも帝国と同盟連合に限って言ってもここ最近で確立した戦闘のセオリーというやつなのだ。
「レベッカ。今一度聞くけど、どんな戦いになっても大丈夫?」
――な訳がないのだけど、それでも聞いてしまうのは、自分が逃げたいからかしら。
そんなトリシャの質問に、
「もちろん、貴方について行きますよ、トリシャさん」
レベッカは、トリシャの言った言葉の真意を分かってか分からずか、そんな風に言って返してくる。
「じゃあ、ちょっと危険だけど正面突破と行きましょうか」
――どの道、あの場所は通れそうにない。だとしたら正面から行くのが一番セオリーだわ。
トリシャは、なるべく犠牲が出ないように、と願いながら前進を始めた。
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