39.きみが生き残る人間だから話したのだ-それは、私は選ばれた、と言っていいの?-
全47話予定です
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――確かに、それなら合点がいく話が多い。ヨーロッパが主戦場にしたくなくてもレイドライバーを派兵した意味。わざわざ全滅しそうなところに軍を派兵だなんて。確かに、私たちは新人だ、どんな機体をあてがわれても文句は言えない。でも死地だと分かっているところに派兵だなんて。
「だから言っただろう? [きみが生き残る人間だから話したのだ]と。そしてきみは実際に生き残った。絶望視していたパイロットをも救出してな。だから満点と、言ったんだ。と、ここまで来ればきみの機体に何がしてあるかは分かるな。現在、原潜をもう一隻そちらに向かわせている。まもなく到着する予定だ」
クラウディアは確かにそう言ったのである。
「それはつまり、この機体には格納性を考慮してあるという話ですか?」
確認の為の質問。
それに対して、
「そう、まだきみには言っていなかったが、その機体は分解せずに両肩が前方に動く仕組みになっている。ある程度歩いて行って、格納部にまで近づいたらそのまま乗り込める。格納には少しコツがいるが、そのデータは生体コンピューターに入っている。つまりはオートでやってくれるから心配はいらない。きみはただ、コンピューターに指示を出せばいいんだ」
――それは、私は選ばれた、と言っていいの?
確かに嬉しい事ではある。死地に向かわせられるような真似はされないと言っているようなものだ。
それは生まれが関係しているのか。それとも何か別の判断基準があるのか、それはシュエメイには分からない。唯一分かっているのはライラは移民の出だから今回の作戦では弾避けになる可能性があった、という話である。だが、シュエメイから見てもライラという人物は決して劣っているようには見えない。機転もきくし、頭の回転もいい。そう考えれば自分と同格か、もしかしたらそれ以上か。
――やはり生まれなのか……いや、レイドライバー隊は実力主義をとっているからそれは無いだろう。とすれば[たまたま]だったのかも知れない。
実際、それ以上シュエメイが頭をひねってみても回答は得られないだろう。それをクラウディアに尋ねる勇気は流石に無い。
であれば[選ばれた]という事実にだけ満足していよう、そうシュエメイは思うのである。
そんな事を考えていると、
「きみには経験を積んで我々と同格、もしかしたらそれ以上になってもらいたい。参謀もそれを望んでいらっしゃる。そうだ、きみにはまだ紹介していなかったな」
クラウディアはそう言って無線を繋ぐ。
ザザッというノイズが一瞬混じったあと、
「先ほどは名乗りが遅れてすまない、改めて自己紹介といこう。私はイリーナ、イリーナ・グリゴリエヴナ・コズロフ中尉だ。きみの事は隊長から伺っている。優秀な人物だ、と。まぁ、それを言えばレイドライバー隊の隊員は皆が優秀なのだが」
相手はそう名乗って来た。確かに[デモンストレーションをやるから]とだけ言われて郊外まで機体を進ませてせんだって破壊した敵車両に交互にマシンガンを撃ってからは、待機とだけ言われてブエタアレス近郊にあるこの基地でずっと待機していたのだから。
――イリーナ中尉と言えば以前に敵に捕まったという話を聞く。それも関係しているのか、それとも何か別の意味合いがあるのか。
シュエメイは先ほどから思考が止まらない。
実際、自分がどの位置にポジショニングしているか、というのはとても重要な話だ。自分の第一優先事項は生き残って、そして母親に仕送りをする事である。決して死地に赴くのが目標などではない。
そうは言うものの話を合わせない訳にもいかず、自己紹介をして[これからは互いに無線通信を行おう]と言われた。
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