30.大丈夫でしょうか-彼女の生命維持を最優先に願えますか?-
全47話予定です
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トリシャたちはリオ・ガジェコスタ基地まで撤退してきた。そこでは艦隊が応急修理中である。同盟連合も空母クラスになればかなりの医療資源がある。トリシャはとりあえず、いざとなったらゼロツーに機体は任せてレベッカを医務室まで運んでいった。
「大丈夫でしょうか」
そう尋ねると、
「だいぶ体を強く打っているので、安静が必要でしょう。見たところ骨にヒビが何か所かあります。内出血もしていたようだ、これはしばらく安静が必要ですね」
一通りの診察をした医師はトリシャにそう伝えた。
「それで、足は」
とのトリシャの問いに、
「これはここでは何ともできませんし、貴女方はパイロットだ、という事はそちらの施設で本格的な治療をされるべきです。今も、私たちが出来るのは応急措置、それだけです」
と実際のところをズバリと言われてしまう。
トリシャたちレイドライバーのパイロットは、それ自体が機密事項のカタマリなのだ。現に首のところのスイッチャーも全く聞かれなかったし、どんな状況で両足を失ったのかも聞かれなかった。ただ、化膿しないように手当てをし、レントゲンを撮って骨や内出血がないかを確認し、出血は止まったという事実確認だけで止まっている。
「今のところ、生命にどうのという危機がある訳ではないですが、早めにそちらの医療機関で治療をされたほうがいい」
――それは分かっているけど。
トリシャがそう思う理由。それはカズとの話の続きである。
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「今回、確かにレベッカ准尉は助けられた。だが、話によると身体を強く打っている、そうだね? それから両足を損傷している。これはこっちに運んでみないと何とも出来ないな。だけど知っての通り、まだ戦闘は継続中だ。立て直して作戦を継続するかどうかを現在協議しているんだよ。敵だって立て直しに必至だろう。そんなところに航空機を飛ばすというのは、ちょっとリスクがありすぎるのは、分かる?」
そうカズに言われた。
トリシャだってそのくらいは分かる。援軍と勘違いされるのを恐れているのだ。状況分析は当然カズのいる場所でも行っているはず。その結果があまり芳しくないのも事実。
現に我が艦隊はイージス艦を失っている。これをこのまま艦隊戦をすれば明らかに不利だ。敵の空母だって、こちらと同様飛行甲板の損傷だ、それくらいはいずれ直してくるだろう。そしてレイドライバーは一対一のイーブン。戦闘機も数では先遣隊の上陸部隊がいた分、向こうの方が上だ。肝心の三五FDIも使えない状況にある。
となれば自ずから停戦の打診をしないといけなくなるが、それは事実上、旧アルゼンチンの半分を占領されるのと同義だ。ではいっそ攻め込んでみたいが、それには前述の通り戦力が足りない。おそらくそんなこんなを話しているのだろう。
「だから、レベッカ准尉の事は一旦、そちらの空母内で診てもらってくれるかい?」
そう締めくくられたという経緯がある。
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「とりあえず、彼女の生命維持を最優先に願えますか?」
トリシャはそう尋ねて[もちろんです]という返事をもらって、ひとまずはその場をあとにする。
まだやる事が残っているのだ。
全47話予定です




