29.彼女の救護を-あぁ、それが私への罰なのか-
全47話予定です
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予定通りシュエメイはライラを連れてブエタアレスの基地まで撤退をしてきた。ちょうど時を同じくして艦隊も入港していた。
「彼女の救護を」
艦隊内にはそれなりの施術が出来る医務室がある。流石に腕をくっつけるというのは無理だが、それでも化膿止めくらいは処置できる。そして腕の上腕が腐らずに残ってさえいれば、本国へ帰ったあとに義手を取り付けられる。
帝国の義肢技術はとても高いレベルにある。同盟連合だってそれは同じだが、こと義肢に関しては国全体という意味合いで見た場合、帝国に一日の長がある。
「容体は?」
一緒に付き添って医務室まではいけない。レイドライバーには補給と戦闘への備えが必要なのだ。だから無線で医務課に繋ぐ。
すると、少し全身を強く打ってはいるものの、揺さぶられた程度で左腕以外は安静にしていれば無事だ、という回答が返って来た。
――良かった、命だけは助けられた。それにしても私は一体どうしてしまったのだろう。ライラが被弾していくうちに段々と恍惚感に侵され、それに酔ってしまった。私は何て最低な人間なのだろう。
自問するが自答は出てこない。おそらくそれはしばらく出てこないだろうというのは自分でも分かる。
自分は頭の回転は良い方だ、という自覚がある。要領もそれなりにいい方だ。そんな自分が自分に対して質問しているのに答えが出ない、かつこの質問は誰にも相談は出来ないという事実。それを鑑みればしばらくは[悶々として]いなければならない。
――あぁ、それが私への罰なのか。いや、それだけでは足りない。でも、今は彼女にしてあげられることは何もない。
事実、シュエメイはレイドライバーから離れるわけにはいかないのだ。同盟連合がいつ襲って来ないとも限らないこんな状況下でコックピットから降りるという選択肢は、無い。
「例のものはいつ届くんですか?」
今度は空母のブリッジへと繋ぐ。今回の指揮官は空母乗船の艦長だからだ。かの人物ならこれから先のスケジュールも知っているだろうし、レイドライバーのパイロットが聞けば教えてくれる。
現に、
「あと一日かかるそうだ」
と返って来る。
――それまでこの地に留まれれば勝機が見えてくる。
それは上の人間には伝わっているようで、
「あと一日、多分大丈夫だろうが耐えてくれ。そうすればここでのレイドライバーの立場は逆転する。そこで相手との交渉が出来るという訳だ」
艦隊はイージス艦がいる分こちら側の優勢、レイドライバーの数で言えば二対一、航空部隊はほぼイーブン、いや最新鋭機が健在なだけこちらが優位、となれば同盟連合も[何かしか]考えなければならない状況になる。
[ここまで状況を作ってから相手と話をしようと思う]
クロイツェルは確かにそう言った。
――となれば私たちはこのままここに駐留軍となるのだろう。もしかしたら戦線を拡大、なんていうのも視野に入っているのかも。
それはそうだ、レイドライバーが二体いるのだからこれを遊ばせておくのはもったいないと考えるのが自然だ。
しかし。
シュエメイは考えた。旧アルゼンチンの北半分を帝国が貰い受ける代わりに他には手出ししない、と約束をかわせばどうなるか。交渉権はこちらの戦力が有利な分、上に出られる。当然ながら、向こうは飲まざるを得ない状況が生まれるだろう。そうなるとレイドライバーを二体ここに駐屯させておくのはもったいない気もするが。
――どの道、交渉が実際に始まってみないと分からない、か。
少なくともシュエメイは、しばらくシャワーを浴びられないだろうと考えていた。
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