表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/47

26.もしも今回の立場が逆でトリシャが新人だったら-では今のトリシャなら?-

全47話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 もしも今回の立場が逆でトリシャが新人だったら、その作戦に気が付いた時、彼女は何と言っただろうか。今までのトリシャなら、もしかしたら噛みついていたかもしれない。もしくは[ハイハイ、やられればいいんでしょ]くらいは言うかも知れない。


 では今のトリシャなら?


 その答えは既にトリシャの中に持っている。カズが命令したなら、今の彼女なら笑って自分の頭に銃口を向けられる。そんなトリシャが[僚機の盾になれ]と命じてくれれば迷わずそうするだろう。


 もちろんトリシャの辿って来た道はレベッカとは違う。トリシャは一期生、レベッカは三期生なのだから。トリシャの時には記憶操作術など無かった。それは口にするなと言われているから口にしないだけで、当然、彼女は両親の名前は現在でも憶えている。


 一方のレベッカは、自分の名前こそ言えるものの、両親の名前は既に記憶にない。まぁ、元々が孤児なのでそこまでする必要は、と言われそうだが、研究所は、軍部はそれを良しとしなかったのだ。


 ――――――――


 記憶の消去術は、それが確立してからというもの軍は[出来るだけの情報を消すように]と指令を出してきた。もちろん、それはカズも分かっている。鹵獲される危険性は限りなくゼロに近いのは事実である。そして敵将校と話す機会もほぼ皆無なのも事実である。それでも記憶を消す理由。それは念には念を入れて、というやつである。


 パイロットになった時点で人権は剥奪されて政府所有になる、というのは前述したとおりである。そんなパイロットに余分な情報は要らないとばかりに消去を命じたのだ。


 そしてサブプロセッサー。彼女たちは人間としてすら扱われず、部品の一部として番号が与えられ、本人は機体のコードネームで呼ばれる。


 こちらの方は、もっと時間をかけて記憶を消去している。パイロットの場合は家族知人に限定しているので半年という時間を、サブプロセッサーの場合は半年プラス教練の二年半の計三年という時間をかけて[プレーン]な状態にしていくのだ。自分の名前、家族、知人、友人、同期生……それらすべての固有名詞を消去し、代わりに[自分はモノ扱いされるべきで、既にヒトではない]と教えられ[マスターの命令は常に絶対]という重要な部分を再度その躰に教え込むのである。そしてその躰さえも取り上げて、ただの[考えるモノ]にされてしまうのである。


 ――――――――


「貴方、強いのね。それが一期生との違い、と言われればそれまでなんでしょうが」


 トリシャはそう言う。


「強くはないですよ。私は、いえ、私たちは命令には逆らえない。そればどんな命令であっても遂行する、それが使命なのです。今回も、貴方のお役に立てたでしょうか?」


 ――ん? ちょっと声のトーンが違うような。


 言葉の後半からトーンが変わるのをトリシャは聞き逃さなかった。


「あのっ、そのっ」


 レベッカはトリシャに何か言おうとしているのだが言葉が出てこない。だが、トリシャにはそれが[禁止事項]にあたるから出てこないものだと思った。


 だから、


「無理に言わなくてもいいわ、禁止事項なんでしょ?」


 と言ったそのトリシャに、


「あの、す、少しだけ、私の事を抱いてもらえませんか?」


 余程緊張しているのか、声が上ずる。


「こんな私で良ければ」


 トリシャはそう言って操縦をゼロツーに任せて後ろの席へと向かう。


 そこには顔を赤らめているレベッカの姿があった。


 ――私が貴方にした事はこんな程度では済まされない。でも、それでも。


 ケガに障らないように軽くギュッと抱きしめる。


 トリシャはレイリアやクリスたちに比べてどちらかと言えば小柄だ。詳しく見てはいないから何とも言えないがレベッカも小柄な方だ、と認識している。そのレベッカが今は一層小さく見えるのは、トリシャが精神的に大きくなったから、なのかもしれない。


全47話予定です


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ