25.その……罰なのですが-――!!-
全47話予定です
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一連の処理が終わると、敵は北へと撤退していく。トリシャもそれは同様だ、なんといってもこちらとしてもケガ人を、サブプロセッサーを抱えている。このままにしておくわけにはいかない。
「でも良かった、内情を知る整備クルーが一人いてくれたから」
――逆にいなかったとしたら、ゼロシックスは諦めないといけなかったわ。
それは撃ち合いになると予想しての配慮だったのかも知れない。サブプロセッサーの存在は一般の整備士には、噂にこそなってはいるもののまだ実際に知られてはいないし、教えてもいない。そんな中で、もしレイドライバーの秘密に関する事項に触れる場面が出てきたら? そんな考えがカズにはあったのかも知れない。
クリスの時は正直[余裕でしょ]とばかりに、そこまで知っている整備クルーは連れて行かなかった。だが、実際はゼロフォーは大破し、そのまま輸送機で帰還という結果を招いた。これにはカズも考えさせられるのがあったのだろう。
そして今回の作戦、これにはカズは撃ち合いになっても相手を仕留めよと命令を出した。当然ゼロシックスは犠牲になるであろうと想像していただろう。だが、ゼロツーも被害が出かねない作戦であったのは事実だ。それを現場で直せる人間が必要になる。
必然的に秘密を知っている人間を、となるのである。これには研究所の男性整備クルーが同伴していた。彼ならすべての機密に触れられる。少なくともトリシャに開示されたのはそういう話だ。
ヤマニを出すという案もあったのだろうが、彼はアルカテイル基地の整備主任だ、それはカズの立場と同様、かの地から離れるのはやはりマズいとなったのだ、と推測できる。
「助けて頂いて、本当にありがとうございます。その……罰なのですが」
――!!
トリシャはレベッカの言葉に驚いた。確かに彼女のいるこのコックピット内でカズと話をしたし、カズの側にだって人はいただろう。そこでレベッカにそんな話をされて、トリシャは自分のした通信内容に冷静になって向き合ったのだ。
とても人がいる場所で話す内容ではない。カズにしても[人払いはしてあるから]とは言っていなかった。
それはカズにとってどんな意味をなしていたのか。それも[ミーティング]の一環として行ったのかも知れない。カズはトリシャと[ミーティング]する際は、必ず彼女のプライドを削るような行為をさせる。それはそんなポーズであったり、それこそ靴をなめさせるような行為であったりとさまざまである。初めはトリシャも抵抗していたが、いつしかそれを受け入れ、自分から進んでするようになった。それ程に彼女は変わったのである。
そのトリシャがレベッカの一言で現実に戻って来た。
――あぁ、私は何て恥ずかしい事をしたんだろう。
分かっていたとはいえ、今更ながらに自分のした会話内容に恥ずかしがる。
だが、一人で悶え続ける訳にもいかないので、
「軽蔑した? いいわよ罵ってくれて」
そう答える。
だがレベッカは、
「いえ、軽蔑なんてとんでもないです。あの状況で助けて頂けるなんて。それに私だってマスターには逆らえません。貴方のマスターがあの方なのですね」
それ程、レイドライバー同士の撃ち合いは過酷なものだった。それは、敵味方関係に関係なくである。帝国側だって自分の僚機を盾にしたのだから。おそらくそれはあらかじめ指示された事なのだろうと推測が付く。何故なら自分たちがそうだからだ。
レベッカは一期生ではない、三期生なのだ。その[調律]は、受けていないトリシャには推し量れるものではない。当然、常人では行えないような事もマスターの命令があればやるように仕向けられているのだ。たとえそれが自分の恥を晒すような事であってもマスターの命令は絶対だ、躊躇なくやらねばならない。
そのレベッカがトリシャに対して、助けてくれてありがとう、と言っているのである。
「私は、貴方を……」
とまで出た言葉が詰まる。それを、
「先にも言いましたが、私に出来る事をした、それだけの事です。貴方が気に病む事は無いんです。それは初めからプランとして組み込まれていた、それを貴方は実行しただけ、ただそれだけなんです。それに、損傷は足だけで済んだなんて奇跡です。私はあの時、死を覚悟しましたから」
――私が彼女の立場なら同じ事が言えるだろうか。
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