23.こうして現在のカズとの関係が出来たのである-カズに報告をしに連絡を取って来た-
全47話予定です
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そのあと自分の過去を語ってから、
「どうしてほしい?」
とのカズの問いに、
「だから、私も混ぜてほしいって言ったじゃない」
「えっ?」
真っ先に反応したのは、クリスだった。
「私は大尉、いえご主人様のものです。ご主人様の命令なら何でもしますが、私からどうか、どうかご主人様をとらないでくださいまし、お願いします」
そう言うとクリスはまだ添え木をしているというのに地面に正座をして頭を下げる。
「クリス、あんた何か勘違いしてない? 私は[混ぜて]って言ったのよ」
[えっ?]というクリスに、
――今の私なら、ちゃんと言えるはず。確かにお父さん、お母さんは大切な存在だ、でもそれ以上のモノが見つかったの。
「今の私に家族は要らない。要るのは私を導いてくれる存在、つまり貴方よ、カズ」
今までこわばっていたトリシャの顔が緩む。
こんな愛らしい表情をするなんて、今までのトリシャからすれば考えられない。
「トリシャは、やっぱり笑顔が似合うよ」
そう言ってカズは笑った。
「整理しよう。トリシャは結局[こちら側]の人間になるという事でいいんだね」
「ええ、その通りよ」
そう即答した記憶がある。
「で、オレとの関係はどうする? どこまでが望みだ?」
実際、これはとても重要な事である。
それに対して、
「私も貴方の主従関係に混ぜてもらえるかしら、と言ったら?」
クリスの方をチラリと見ると不安そうな顔をしている。自分だけのご主人様が取られるのではないか、おそらくそう思っているのだろう。
「それは、オレの事をご主人様、と呼ぶことになるが」
カズはいたってまじめだ。
「ええ、それで構わないわ。何なら、命令してくれてもよくてよ」
ベットに横になったままそう言った記憶がある。
――――――――
こうして現在のカズとの関係が出来たのである。
そしてクリス同様、トリシャも折を見て[ミーティング]をされるようになった。初めはトリシャが持っているプライドというものがやはり邪魔をしたのだが、それも回を重ねる事によって徐々に消えて行った。今では、二人きりの時はそれは従順な下僕と化している。カズの言った、どんな格好もするし、何なら自分からカズの靴をなめる事だってある。
あのトリシャがここまで変わってしまった。それはひとえにカズという存在がとても大きいという事なのだろう。
クリスもカズに依存しているのは良く分かる。トリシャが[こちら側]に付いた時からそれは開示されていた。クリスに言わせたのである。[自分はご主人様のモノでどんな命令でも聞く]と。
そして今ではトリシャも定期的にその文言を言わされている。いや、自分から言っていると言ったほうが正しいだろう。トリシャは今まで保って来た自分というものをカズに預けたのである。自分という重荷をカズに預ける事で、自分というその縛りから、孤独から解放されたのだ。
今ではすっかりとカズに染められている。それにしたって自分から進んでした事だ。それほどカズという存在が前々から気になっていたのだろう。クリス同様、優しい男性というものは初めてだったのだ。
カズのその優しさは何処から来るものなのか、それはトリシャには分からない。彼女か知っている限り少なくともレイリア、トリシャ、クリスの三人にはとても優しい。それを言えばマリアーナにだってエレンやレベッカにだってきっと優しいのだろう。
裏がある、その有無にかかわらずトリシャにしてみればそれが嬉しいし、カズという人物に惹かれていくきっかけになったのは事実である。
そのトリシャが、カズに報告をしに連絡を取って来たのである。
全47話予定です