22.過去の話その4-二人は付き合ってるの?-
全47話予定です
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「そうですが、でも[殺処分]ではないんですね、よかった……」
そうクリスは言って一呼吸あいたあと、
「それでも、それでも私を傍に置いてくださいますか? 使ってくださいますか?」
その声は少しだけ上気しているように聞こえる。
「もちろんだとも。きみを捨てたり他の者に好きにはさせないよ、きみは既にオレだけのものだ」
「大丈夫。だけど、次のサブプロセッサーとはリンクしないといけないんだ。近親者ではない女性とのリンク、分かるかい?」
カズは次の話題に持っていく。
「と、言いますと?」
「近親者ではない他人とのリンクは、今の技術では出来ないんだ。だけど、他人でなくなればそれは可能になる。その為の技術、それは」
――私たちは一体、どうなるというの。
「そんな事が?」
驚きを隠せないクリスがそう言う。
「ああ、ワンワンにも使用されている技術だ。それにワンツーになる機体にも。どうかな、ここまで来たんだけど、もしきみが辛いようならクス……」
トリシャがチラッと目を開けるとそこまで言ったカズの唇をクリスが奪っていた。むさぼるようにするそのキスは彼女にとっては少々羨ましい光景だった。
現に、
「気を遣っていただいてありがとうございます。でも、私はあの時決めたんです[貴方様と一緒なら地獄にだって堕ちよう]と。どこまででも連れて行ってくださいまし、ご主人様、どこまでもついてまいります」
彼女は本当の意味で[こちら側]の人間なのだろう。
――話すなら、今かもしれない。
「その話、私も混ぜてくれる?」
「!?」
二人とも声にならない。トリシャはまだ麻酔で眠っていたのではないか? そんな心の声が聞こえてきそうである。
だが、クリスより一瞬早く現実に戻ったカズが、
「どこから聞いていた?」
と冷静に聞くと、
「初めから……御免なさい、ちゃんと言えばよかったかしら」
トリシャはすまなそうにしていた。それはそうだ、こんな話、まず前段階から話をしないと大概の人は拒否反応が出て当然なのだから。
「あんたたち、そういう関係だったのね。ミーティングってのは……あえて聞かないわ」
遅れて我に戻ったクリスが再び顔を真っ赤にする。
「ああ、きみの想像通りだ。クリスはオレのものだ」
――そうか、カズはクリスにもう……。
「二人は付き合ってるの?」
突っ込んだ話をする。
「いや、付き合ってはいないし[そういう行為]をした事もない」
おそらく本当なのだろう、カズがそう話す。
「そうか、じゃあ私にもチャンスはあるんだ」
トリシャはボソッとそう呟くと[ん?]と言ったカズに、
「それって主従関係って事でいいのかしら?」
そう問い返す。
「そうだ、もっと言えばクリスはオレの所有物だ。だから」
「だからクリスは前向きになれたのね。あの市街地戦から気にはなっていたんだけど。あんたがクリスの心を救ったのね」
――そうか、この関係の中に入れてもらえれば私も救われる。カズという存在を理由にすることが出来る。
「さっきも言ったじゃない、私も混ぜてくれないかしら、って」
二人して疑問符が取れないその二人に、
「こんな話になったら話すしかないわね。私はカズの事が好き、よ。夜のオカズにしちゃうくらいね」
トリシャはそう言って少し恥じらった。
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