15.自分は処される覚悟は出来ていた-よくやったな-
全47話予定です
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「さてと、お互いに上官と連絡を取ろうじゃあないか。貴殿もそうするといい」
シュエメイは正直、自分は処される覚悟は出来ていた。被弾した味方を助ける、それも敵の同意を得てである。本来ならこんな事は決してしてはならないのだ。
「こちらシュエメイ准尉であります。本部、応答を願います」
「よくやったな」
衛星回線のほんの少しのラグのあと、第一声がそんな言葉だ。
――えっ? しかもこの声は……。
声の主は、
「確かにレイドライバー一体を失ったのは痛い損失だ。しかし、それを言うならヨーロッパ戦線では二体失った。だが今回はどうだ? 一対一のイーブン。敵もパイロットは救出したようだが、こちらも片腕だけで済んだ。正直ライラくんの事は絶望視していたからな。これはこれで良しとしようじゃあないか」
いくら寝ているとはいえライラがいる空間でそんな話をするその声の主は、クロイツェル参謀だ。
――――――――
クロイツェルは歯に衣を着せない。そして、常に先を見る未来志向主義者である。現に、過去の戦闘でレイドライバーに被害が出た際、隊長のクラウディアが[私への懲罰ですが]と尋ねた際も、
「懲罰? クビにでもなりたいのかね? 何、隊長だから責任を取ると? 何の為にそんな無駄な事をする? それで失った機体が戻って来るのか? それとも他に優秀な人材がいるのかね?」
そう、クロイツェルはそういう人物なのだ。無駄な事はせず、あくまでも未来志向な、次に何をすればいいかを考える、そう言う人物なのだ。ミスは自分の躰で償うという風習の残る帝国にしてこの人物は珍しい部類に入るだろう。それほどクロイツェルとしいう人物はある意味異質なのだ。
「ですが、それでは部下に示しが……」
「部下に示しが付かないというのであれば、その[恥ずかしさ]をしばらくそのまま抱えていたまえ。そして次回の作戦でより良い成果を持って帰って来てくれたまえよ」
そう繋げた経緯がある。
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シュエメイはそのクロイツェル参謀と今、無線で話をしているのだ。
「それで私はこれからどうすれば……」
とまで出た言葉を、
「きみは生き残りだ。きみ自身もこれで一つ成長しただろうし、ライラくんだって成長した。そして機体は一体現存している。敵だってこれは同じだ。そこで、だ。ブエタアレスまで撤退し、体勢を立て直そうではないか。現在、追加の派兵を行っている最中だ。そちらに着くのはおそらくもう一週間くらいはかかるだろう。数は一体だ、そうすればそこでのレイドライバーは二体に戻る」
と遮るように言う。
――でも、追加派兵の空母群は米州から出た空母群と交戦の予定じゃあ……。
「我々はね、同盟連合が日本にレイドライバーを派兵した事実からいろんなシチュエーションを考えてきたのだよ。そうだな、今回は流石に同盟連動を出し抜けるかな」
シュエメイはますます分からない。船舶は現在、偵察衛星が監視している。当然、商船に艤装してという考え方もありではあるが、それにしても既に戦闘を開始しているから、監視はより厳しいものになっているはず。そしてレイドライバーを空母群に随伴させるにしてもそんな話は聞いていないし、現に米州からの空母群と戦闘になるからそちらにはいけそうにない、という話だった。
では一体どこから輸送してくるのか。
――何処から届くのか、分からない、空でも飛んで来られれば別なのだろうが、ここにはそんな基地もない。第一、航続距離が間に合わない。ん? 空はダメ、海上もダメ、陸は続いていないからダメ。となると……まさか。
「潜水、艦?」
思わず思考が漏れる。
そんなシュエメイに、
「おぉ! 良く分かったな、正解だ。我々はレイドライバーの増産に踏み切ったのはきみも知っている通りだ。そして十二体という数を確保した。ヨーロッパで二体喪失、そして南米で一体喪失した。しかし残りはきみを入れず八体だ。そこから一体を既に南米に向かわせている。ここの守りは七体で十分だろう。敵もまさか追加のレイドライバーが来るとは思っていないだろうからな」
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