10.それより、いいのか?-御免なさい、御免、なさい……-
全47話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「それより、いいのか? 確かにレベッカ准尉の事は心配だけど、マスターの意思ではない気がすんだが」
トリシャの腕時計からそんな声がする。ゼロツーがそれを心配しているのだ。
「カズは生き残れ、とも言っていたわ。それにクリスだってマリアーナを見捨てなかった。まして私はレベッカの陰に隠れて撃っていただけ。そんな私に出来るのがあるとすれば、相手の提案を飲む事くらいよ」
トリシャはハッチを開けたままゼロシックスに近づいていく。そこには正面から撃ち合いになったゼロシックスが膝から崩れていた。正面に回ると、
――これは……ひどい。
見るも無残な姿になっていた。そこらかしこに弾痕があり、装甲がひしゃげている。とりあえずハッチを開けようとしたが開かないのでレイドライバーの力を使って無理やり開ける。
と、そこには血を流してぐったりしているレベッカの姿がある。
「レベッカ! 聞こえる?」
トリシャがそう声をかけると、
「……トリ、シャ、さん? 良かっ、た、無事だった、んですね」
レベッカは口から血を流しながら途切れ途切れにそう答える。
――あぁ、私がやってしまったんだ。
「御免なさい、御免、なさい……」
思わずトリシャの頬を涙が伝う。
レベッカはそんなトリシャの頬に手を当てて、
「何故、謝るのです、か? 私は、出来る事をした、それだけの、事です。貴方が、気に病む事は、無い、んです。初めから、気が付いていた、事なんです」
――えっ、この作戦の事を知っていたの? でも誰にも漏らしたりはしていない、とすれば状況だけを見てそう思ったの?
トリシャの顔に戸惑いと疑問の表情が出ていたのだろう、
「私は新人、です。そして、貴方はベテラン。損耗は、最小限に抑えなければ、ならない。ここで、二体失うわけには、いかないのは、明らかです。であれば、替えの利く、新人が、その役を、負えばいい、そう、思ったんです」
レベッカの見た目はどうか。コックピットが変形していたので恐らく押されたのであろう。となれば内出血が考えられる。他の所見としては、
「ゼロシックス……」
レベッカは両足が足首から先が無くなっていた。ただ幸いなのは、出血が思ったほどなかったという点か。おそらく爆発によって患部が焼かれたのだろう。そしてゼロシックスである。そう、両脚のある部分と言えば、ちょうどサブプロセッサーが格納されている場所だ。そこが変形している。もしその部位に、ここに被弾してはレイドライバーの機能をほとんど消失しているといっていい。
――サブプロセッサーはダメか……。
そうは思ったが、辛うじて損傷を免れたサブディスプレイを操作してバイタルモニターを出す。するとどうだろう、バイタルがあるではないか。
「サブプロセッサーは生きてるけど変形が著しいの。ゼロツー、何とかならない?」
と腕時計に聞くと、
「サブプロセッサーの固定方法はパイロットのお尻の下に来るように出来てる。だからパイロットをどかして上からアクセスすれば取り出せるんじゃあねーかな」
と返って来た。
――上手くいけば二人とも助けられるかも。
トリシャの中で少しだけ希望が湧いた。
まずレベッカからだ。リンク状態は既に切られている。だから息も途切れ途切れになっていたのだろう。もしかしたらゼロシックスが気を回して切ったのかも知れない。両足首から先が無くなっているので、トリシャが抱えるようにコックピットから降ろしてゼロツーの機体に連れて行く。
ゼロツーは先の改修でコアユニットを取り外した関係でスペースが出来ている。元々コックピットはそれなりのスペースが確保されているが、装甲を足したり改修の際に色々な装備を施したが、それでもコックピット容積はさらに増した形になっている。人一人を乗せるには十分なスペースがあるし、そのようにも作られている。ちょうどコックピットの裏にあたるところにある緊急用の座席を出して座らせてベルトで固定する。
「もう少し待っててね」
と声をかけてまたゼロシックスの元へと向かう。
全47話予定です




