第4話 出逢い
ヒューマニスト王国が滅亡してから早一週間。
隣国エーレブルーから騎士団が調査に来ていた。
「ここがかつてのヒューマニスト...
本当にクーデターなのか?」
そう溢したのは副団長キルであった。
「いや、魔族の仕業。しかも幹部レベルの力があ
るだろう。」
キルは横で左目を光らせていた団長を見た。
「ザック殿もそう思われますか。」
「ああ、なにせ俺の特異[大詮索] の反応が魔族のものと一致している。したがっ て、我々の驚異となりうる化け物がいることを
意味する。」
辺りは邪悪な雰囲気に包まれた。どの兵も彼の発言を真に受け怖じ気づいたのだろう。
その後、人間族の国々は国境警備を強化した。特異審査が促され、魔物の討伐姿勢がより一層強まった
森に潜伏して早一週間。
滅ぼした国に人の気配を感じる。そしてその気配が徐々に近づいてくるのを感じた。数にして10人。
特異[大詮索]が1人、[氷]が1人あと8人は特異なし。というかなぜそんなことが分かるんだ?
いや、今は前のことに集中だ。孤児院の書物で学んだ深淵魔法。当たれば一発で葬りされる。その代わり代償も必要だ。
「後で人間の命をくれてやる。穿て魔蛇」
轟音が辺りに響き渡る。草木は揺れ、辺りは黒がかった霧が覆う。森に向かって馬を走らせていた騎士団はその異変を察していた。
「様子がおかしい。[大詮索]の反応も鈍い」
「言ったでしょう、今向かってるのは魔物の森ですよ?結界がなければ入るのは危険ですって。」
「しかし、国を滅ぼした根元がこの先にいるのは確かなのだ。」
「そんなこと言われてもねぇ、そいつの背格好とかは?」
「それが15歳くらいの少年なのだ。」
「ははっ、ザック殿冗談がきついですぞ。上位魔族がそんな若いなんてあるわけが...」
うわぁぁぁぁぁ!!後ろで叫び声が聞こえた。
「なんだ?何が、、っ」
霧の奥にいる禍々しい気配。魔蛇。深淵の召喚魔法により産み出された禁忌の古代魔法。霧の領域を発生させ、対象者の視界を制限することで攻撃の命中率を上げる。後ろの兵士が死んだのはそのためか。
「まずいですよ。時間を稼ぎますので早くテレポートの準備を」
「その必要はない。なにせ俺がいるからな。強制執行[デストラクション]」
その瞬間、魔蛇は真っ二つにされた。
「さすがザック殿、素晴らしい太刀さばきでごさいます。」
「テレポートがなんとか言ってなかったか?」
「ええっと、そんなことはないですよ、はい」
「出てこい、[大詮索]のことは分かってるんだろ
う?」
恐怖が掻き立てる。魔蛇がやられた。出なきゃ、殺される...
「...」
「こんなやつが魔蛇を召喚したんですかい?」
「ああ、間違いない。そして、ヒューマニスト王国
が滅んだのもこいつが原因だ。」
「つまり、我々の驚異の存在。葬らなくては。」
「待て待て。貴様名前を何と言う。 」
「...ルーセル」
「そうか、ならルーセル。2つの選択肢をやろう。1つ、ここで死ぬ。2つ、俺を師匠として扱い、この世界でビジョンを作ることだ。」