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Back world  作者: ST
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第2話 捨て子

それから後の事は覚えていない。目が覚めると見知らぬ人間がこちらを見ている。


「........!」


知らない男が何か言っている。言語が違うのか、海外圏に生まれ変わったのか。というか生まれ変わりなんてあるんだな。


そこからは早かった。日本語を吸収できたようにある程度は話せるようになった。そして、最初に見た男は父親であるということも。しかし、母親がいない。なんでだ?


父親は昼の間いなくなり、夜になると帰ってきた。子供のままでは行けない離れた距離に町のようなものが見える。出稼ぎなのか?とりあえず養ってはくれている。様子を見るしかできない。


いわゆる少年期が訪れた。父親には外は危険だから出ては駄目と言われた。そんなことは気にせず出ようとしてもなぜか出れない。外と中に境界がある感触。父親以外に会えない環境に疑問を感じた俺は今日の晩、彼を問いただすことにした。


「父さん、なぜ外に出てはいけないの?」


彼は穏やかな口調で答えた。

「前にも行っただろう、外は危険だ。」


「でも外って凄く綺麗だよ。もっと色んなとこに行きたい。こんなに大きくなったんだしさ。」 


「...。」

彼は沈黙した。急に息子がこんなこと言い出したら無理もないが。


トントン...ドアの叩く音がした。

今更ながらに思ったが客人は来たことはない。


「や、やめろ..来るなぁ..」

突然、父親が初めて恐れおののく姿を見て俺も恐怖心を覚えた。扉の向こう側に何がいる?境界があるはずじゃ。


ギギギ...ドアを誰かがこじ開けている。

「中にいるなら返事くらいしなさいな。」

禍々しい声。背筋が凍る。夜の静けさがより一層不気味さを掻き立てる。


バタン...ドアが壊れた。そこには不気味な風貌の悪魔がいた。人間界ではありえない黒色の翼、青ざめた肌、鋭利な爪。どれもがファンタジー世界を彷彿とさせる悪魔。


「子供。魔王様に献上するのに丁度いい。」


なんだ?魔王?本当にファンタジー世界なのかここは。としたら、魔法とかもあるってことじゃ。家に出れなかったのはそれも関係してるんじゃ。情報不足が過ぎる。


「なかなかに感のいいガキじゃねーか。」

っ!?いつの間に俺の横に...グフォ

強い衝撃が身体中を駆け巡る。蹴りを入れられた。意識が遠のく。意識がなくなる直前、父親の顔が見えた。頭から出血し青ざめた顔。あの悪魔に殺されてしまったのだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「それでなんの傷もなく記憶もなく家があった場所に寝てたのかい?」

「はい、、」

傭兵は俺を不信がっていた。

悪魔に気絶させられた後、目が覚めると家もなく父の姿もない。まるでこれまで経験したことを振り出しに戻された気分だ。そんな時、たまたま近くを通りかかった傭兵に助けてもらった。


「親はどうした?」


言葉に詰まる。なんといえばいいのだ。

「親に捨てられたんです。」


「じゃあ、孤児院だな。これを持ってきな。手形だ。」


渡されたのは小さな手形。これを持ってけば保護してもらえるという。お礼を言って国に入る。昔は小さな村だったのにこんなに大きくなっている。つまり、かなり長い間気絶していたことになるのか。


開けられた門の奥は閑散とした町並みがあった。人もまばら、ところどころに傭兵が歩いている。変な感じがしたが、とりあえず孤児院へと向かう。


少し苔を帯びている古臭い孤児院を見つけるのはそう難しくはなかった。中に入ると女が出てきた。

「今頃、孤児なんて珍しいわね。」

その女の名前はメリス。国直属の孤児管理者だそうだ。俺は事情を説明し、ここで住まわせてくれと頼んだ。メリスはそれを了承し、名前を聞いてきた。名付けられた記憶はないので旧名を使おうとしたが、日本人感が否めない。とりあえず、ゲームネームで。

「ルーセルといいます。」


孤児院は書物の宝庫だった。拙い知識ではあったが、分かった情報は多かった。


そんな月日を重ねるうちに15歳となる。孤児は俺一人しかいなく、外に出てもメリットがなかったので、とにかく本を読み漁り知識を得た。魔法、特異、種族、言語、この世界の地形…。やはり、ここはいわゆる"異世界"という奴でそこに転生を果たしたのが妥当か。


また、メリスは食事をしながら様々なこと教えてくれた。とても有益だったのは次の2つ

1つ目はこの国のこと。国名はヒューマニスト国。人間至上主義の国であり、他種族を嫌っているらしい。また、それに歯向かう意見の弾圧もあり、ある意味で国王の独裁統一といった感じ。閑散とした町並みもそれなら説明が通る。

2つ目は、今後について。この世界では慣例(日本でいう義務教育的なの)で、魔法学校に15歳から進学できる。また、孤児院に残って働いても構わないとも言われた。俺は魔法学校という名前に引かれたわけか、そちらを選択した。まぁ、色々厳しい条件があるらしいが、挑戦はしてみるものだ。


入学試験は今から3週間後。メリスは特異を見てもらうといって、俺を連れ出した。外に出たのは久しぶりだったが、閑散な町並みはありのまま残っていた。


やってきたのは道具屋。薬草、装備品、武器などところせましと並んでいる。ちょっと埃っぽいのも雰囲気を掻き立てる。


「やぁ、メリスさん。いつもご贔屓を。おや?孤児院の子ですかい?」

「えぇ、特異を見に来てもらいましたの。」

「あぁ、なるほど。うちの家内は少し出掛けていましてね。どうです?お茶でも。」


かなり親しい間柄らしい。彼の名はロックといい,この店の店主である。彼の奥さんはキャメルといい、特異[暗示]を用いて相手の特異を見れるらしい。


そういえば、特異についての説明を忘れていた。特異というのは人間族だけが持つスキルのようなもので、一人一人異なる。また、基本1人1つしかない。例を挙げるとするならメリスの特異は[不老]。これは死ぬことはあっても老いることはない。また、魔法の操作も少しやりやすいらしい。特異名は漢字での熟語だと規定されおり、それが長いほどまたは意味が強いものほど評価は高い。


特異はおおむね15歳で発現するため、見に来たわけである。時間を潰しているとキャメルさんが帰ってきた。事情を聞いたあと、慌てふためきながら準備に取り掛かっていた。責任感が強すぎるのかな。


水晶を間に通し、向かい合って座った。

「それではよろしくお願いいたします。」

水晶が光り、文字が浮かび上がる。[暗示]は媒体を通せば他者にも見ることができると後から教えてもらった。


「、、、」

この場にいた全員が驚きを隠せなかった。なぜか。浮かび上がった特異は2つあったからである。




























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