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[詩] 運転見合わせ
『運転見合わせ』
気怠い月曜の朝
いつまでも来ない電車を待っていた
無機質なアナウンスは「運転再開見込みは立っておりません」を繰り返す
苛立ちにまかせて駅員を怒鳴りつける馬鹿から目を背けるように
ぼんやりとスマホの画面を眺めれば 暗いニュースばかりのタイムラインが流れた
やることも無いせいで 余計なことばかり考えてしまう
無為に経過する時間へのささやかな抵抗として 頭の中で時計の針を巻き戻す
かつて 友はこう言った
「社会が人に生きる希望を与えないのなら、国家は我々に自殺する権利を与えるべきだ」
それを聞いて
「お前は他人の許しがなければ自分の命すら自由に出来ないんだな」
なんて思ったりもしたが
その弱さがお前を此岸に繋ぐとするのならば
俺はお前が死ぬことを絶対に許可しない
線路に身を投げ出すことが
自らを虐げた社会への報復であるとするならば
その構成員たる俺たちこそ 罰せられるべき加害者なんだろう
だが現実に与えられた罰の重さは
一つの命と釣り合うものとはとても言えない
そうやってまた 余計なことばかりを……
ホームに充満していく他人の鬱憤に肩を押されながら
黄色い点字ブロックの内側にかろうじて踏みとどまる
気怠い月曜の朝
いつまでも来ない電車を待っていた




