23/39
[歌詞] 梟木の狒々
『梟木の狒々』
彼は文明の死角に放置される
彼は浮世に供されし贄
彼の黒変した皮膚は膨張する
彼の剥き出しの歯は黄色い
彼の血液は一本の黒い川となる
彼は拒絶される
彼は目的刑論の文脈で議論される
彼は善も悪も為さない
彼を断罪した正義は現在消息不明
彼に憐憫は向けられない
彼の人権は毀損される
彼は逃げられない
彼は実在する
彼の眼は見開かれたままだ
彼は天泣に濡れる
彼は奪われる
彼の胴部は幽世の土壇に据えられる
彼は蠅の子たちに信仰される
彼は恐怖の概念
彼は貶められる
彼は無力
彼は苦悶する
彼は迎えを待つ
彼の疎らな毛髪は湿り気を帯びる
彼は瘴気を放つ
彼は孤独
彼は永遠に腐敗する
彼は意味を持たない
彼は鴉に啄まれる
彼の霊魂は行き場なく留まる
彼は故郷に忘却される
彼の無声慟哭は形而上で反響する
彼の断面を見た者はいない
彼は野犬の歯に噛み砕かれる
彼の捨札は朽ち果てており判読不能
彼は観察する
彼は真夜中に我々の夢を訪ねる
彼は死に続ける
彼とは即ち私である




